2016年11月4日放送 午後10時00分~NHK-FM
- 第169話
- 第170話
番外編『教えて!サヨナラの意味』
原案:秋元真夏、樋口日奈、伊藤純奈
脚本:北阪昌人
★参考:吉井、エイジ
出演
秋元真夏、樋口日奈、伊藤純奈、山寺宏一
あらすじ
幼なじみの秋元夏夫と一緒に乃木坂高校に通う樋口日奈。他の生徒から「夫婦」と揶揄されていることを気にする秋元に対し、樋口は意に介さず高校生活を送っていた。
そんなある日、担任の先生から秋元のフランス留学が告げられる。突然の出来事にただただ驚く樋口。事前に知らされていた秋元と同じクラシック音楽部に所属する伊藤は、留学する秋元にフランスに行ってもメールを送ってくれるように頼む。一方、樋口は…。
人物相関図
物語が読める ♪
樋口:私の名前は、樋口日奈、乃木坂高校の三年生。私の隣を歩いているのは、同じ高校に通う秋元夏夫くん。
秋元:樋口、おまえ、もっと離れて歩けよ。
樋口:どうして?
秋元:どうしてってさ、いろいろ言うやついるからさ。
樋口:はははは、バッカじゃないの? あたしと秋元がウワサになるわけないじゃん。ずっと幼なじみだし。
秋元:幼なじみとか、関係ねえんだよ。
樋口:関係ないって?
秋元:いいから、離れろって。
同級生:ヒューヒュー! 夫婦で通学ごくろうさま! あはははは。
秋元:ほらみろ。オレら夫婦とか言われてんだぞ。
樋口:バッカみたい。
伊藤:秋元くん、おはよう!
秋元:お、おう、おはよう。
樋口:いきなり目の前に現れたのは、隣のクラスの伊藤純奈。秋元と同じクラシック音楽部だ。
伊藤:ねえねえ秋元くん、今度またヴァイオリン、聴かせてよぉ。純奈、秋元くんのヴァイオリンがまた聴きたいの。秋元:あんなへったくそでいいならいつでもいいぜ。
伊藤:ほんと? 純奈、うれしい!
秋元:って、いきなり腕組むなよ。
伊藤:だってうれしいんだもん!
樋口:なんだろう・・・秋元が他の女子と仲良くしていると胸が、ちくっと痛い。これはなに? これって・・・。まさか・・・恋?
ナレーション:ここは、乃木坂高校の教室。担任の寺山先生が、ホームルームの時間に話しています。
担任:はい、みんな、ええ、ここで残念というか、さみしいお知らせがあります。ええ、秋元夏夫が、フランスに留学することになり、急なんですが、今週で、お別れ、サヨナラってことになってしまいます。
樋口:ええ? 聞いてないんですけど、マジ?
担任:じゃあ、秋元、挨拶して。
秋元:はい。ええ、乃木坂で学んだことは、オレの、いやボクの財産だと思っています。これからも、乃木坂でつちかった精神を守って、頑張りたいと思います。
担任:いいね、いいこと言ったね、秋元、グッジョブ! はい、ということで、秋元は今週限りなんで、言いたいこと、伝えたいメッセージがあったら、直接、本人に伝えるように。
樋口:なに、それ、なんで? なんで言ってくれなかったの?
ナレーション:その日の帰り、樋口が秋元に、つめよろうと近づくと、
伊藤:ねえねえ秋元くん、フランスに行っても、メールちょうだいね!
ナレーション:伊藤純奈が、ベタベタしている現場を目にして・・・。
樋口:なに? 純奈には、ちゃんと伝えてたの? 留学すること・・・。なんか、さみしいよ、秋元、あたし、さみしいよ・・・。
伊藤:ねえねえ、最後に聴かせてよ、ヴァイオリン! 純奈のために!
樋口:秋元、ねえ、あたしたちの関係って、そんな薄っぺらいもんだったの?
ナレーション:そして、いよいよ明日、秋元が旅立ってしまう前日の夜・・・。樋口は、思い切ってメールしました。
樋口:「ねえ、秋元、もしよかったら、近くの公園に来て。あたし、ずっと、待ってる」
ナレーション:深夜の公園。ぽつんとひとつだけ、街灯がついています。ひとりブランコに座っているのは、樋口日奈。
樋口:来ないかなあ・・・あたし、嫌われちゃったかな。
ナレーション:そこにひとつの影が近づいてきます。
秋元:うっす。
樋口:秋元、
秋元:なに泣いてんの?
樋口:泣いてない。
ナレーション:秋元夏夫は、隣のブランコに腰かけました。
樋口:秋元・・・。
秋元:うん?
樋口:なんで、なんで言ってくれなかったの? フランスに行くって。
秋元:え? それはさ、
樋口:それは?
秋元:なんかさ、言いづらくて。
樋口:どうして?
秋元:それは・・・。
樋口:あたしなんか、どうでもいいから?
秋元:え?
樋口:どうせ、ただの幼なじみだから?
秋元:逆だよ、
樋口:逆?
秋元:大切だから、離れたくないから、言い出せなかった。
樋口:・・・バカ。
秋元:え?
樋口:秋元のバカ!
秋元:なんだよ、それ。
ナレーション:樋口はブランコを降りて、走り出しました。
秋元:おいおい、なんだよ、樋口、わけわかんねえよ!
ナレーション:それを追いかける秋元。二人は、公園を抜け出し、深夜の路地を走り、シャッターが閉まった商店街を駆け抜けました。
秋元:おい、待てよ、樋口!っていうか、足、はええよ!
ナレーション:ひとっこひとりいない商店街のはずれで、ようやく、秋元が樋口に追いつきました。
秋元:ったく、わっけわかんねえよ、おまえ。
樋口:バカ!
秋元:痛いよ、なぐるな。
樋口:バカバカ! 秋元のバカ!
秋元:だから叩くなって。
ナレーション:秋元が、樋口を抱きしめると・・・。
樋口:・・・バカ・・・。
秋元:向こうからさ、メールするし、
樋口:でも、サヨナラなんでしょ?
秋元:一回はな、
樋口:一回?
秋元:一回はサヨナラしたほうがいいんだよ、オレたち。
樋口:え?
秋元:離れてわかることもあるよ、きっと。
樋口:純奈のことが好きなんじゃないの?
秋元:え? なんだよそれ。
樋口:だって・・・。
秋元:オレは・・・オレは・・・。
樋口:なに?
秋元:今、わかってるのは、樋口が大事だってことだ。大切な存在だってことだ。
樋口:秋元・・・。
秋元:あるんだよ、きっと、サヨナラにも、意味が。
樋口:あったかかった。秋元の腕は、あったかかった。あたしは思った。このあたたかさを、それだけを、信じてみよう・・・。
秋元:オレ、必ず、帰ってくるから。