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38歳の現役続行決意 多村の背中押した“まだ、できる”金言とは

今季限りでDeNAを退団した多村
今季限りでDeNAを退団した多村
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 もう一花、咲かせる。今季限りでDeNAを退団した多村仁志外野手(38)が他球団での現役続行を目指し、戦力外通告を受けた翌日から週5日のトレーニングジムで体をいじめ抜いている。「先が見えない状況で不安がないと言えばうそになる。でも支えてくれる家族、ファンのためにもまだ辞められない」。

 今年は数多くの名選手が現役引退を決断した。山本昌、斎藤隆、谷繁、西口、谷、和田、小笠原、高橋尚、井端、高橋由…。同世代の金城も現役生活に別れを告げた。「金ちゃん(金城)はずっと一緒にやってたからね…。なんでこんなにたくさん辞めるんだろう、まだみんなできるだろうと思ったから驚いた」と複雑な表情を浮かべる。

 プロ21年目の今季は4試合出場のみで打率・143、0本塁打。5月3日に登録抹消後は、1軍で出場機会がなかった。イースタンでは若手育成のチーム事情で毎試合2打席限定だったが、打率・319、7本塁打。動体視力の衰えは感じず故障もない。それでも4カ月以上の2軍暮らしは、気持ちがいつ切れてもおかしくない状況だった。

 「この球団を離れる理由はない。ファンも熱いし、地元の横浜で現役生活を終えるつもりだった」と心の葛藤を吐露する。それが、他球団での現役続行。決断を後押ししたのは尊敬する先輩、恩師の言葉だった。

 9月下旬。テレビをつけると、06年の第1回WBCで共にプレーしたイチローの特集に目がくぎ付け。野球評論家の佐野慈紀氏が「もう少し(現役を)やりたかったなあ」とつぶやくと、イチローが「じゃあ、やればいいじゃないですか。何で自分で限界をつくるんですか」と聞き返した。その言葉が強烈に心に残り、自分の気持ちに正直になれた。「そうか、やれると思うんだったらやってもいいんだ」。

 イチローだけではない。DeNAの退団が決まりソフトバンク、侍ジャパンで指導を受けた王貞治ソフトバンク球団会長に電話。「悔いの残らないように頑張れよ」と励まされ、「今までたくさんの金言を頂いた。力がみなぎるよ」と決意が固まった。

 04年に日本人球団初の40本塁打を放つなど通算打率・281、195本塁打。「打席での威圧感が違う。敵になりたくない」とDeNAナインは口をそろえる。昨年まで同僚だった中村紀洋も「いろんな選手を見てきたけど、多村は天才。あの打撃技術は凄い」と一目置くほどだった。

 引き際が近いことは自覚している。でも今ではない。「次の球団が最後になると思う。チャンスがあればどこへでも行く覚悟です」。まだ、できる。(平尾 類)

[ 2015年11月2日 08:00 ]

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