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【大人の遠足】悪の組織のアジト? 古代遺跡と戦争遺跡が「同居」する謎の吉見百穴 埼玉

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【大人の遠足】
悪の組織のアジト? 古代遺跡と戦争遺跡が「同居」する謎の吉見百穴 埼玉

 山肌に大砲の弾をこれでもかと撃ち込んだような奇妙な光景が眼前に広がる。穴の数は219個、埼玉県吉見町の「吉見百穴(ひゃくあな)」だ。古墳時代の墓穴群だが、これほど高い位置まで重層的に形成されたものは珍しいと、全国から年間5万人が訪れる。一方、ここには先の大戦末期にトンネルが掘られ軍需工場となっていたという驚くべき歴史もある。古代遺跡と戦争遺跡が同居する不思議な空間をそっと歩いてみた。

 縦横に広がる軍需工場跡のトンネルは、幅4~5メートル、高さ2~3メートル。天井には古い電球がつるされ、頼りなくともっている。約40メートル奥まで進んだところで金網が張られ、立ち入り禁止。金網の向こうは暗闇で、何が出てきてもおかしくなさそうだ。

 こんなイメージがぴったりなのか、実は吉見百穴は仮面ライダーなどの特撮番組で、悪の組織のアジトのシーンに引っ張りだこだ。特撮ファンの私にとって、前から訪れてみたい「聖地」でもあった。

 外へ出て、墓穴群をのぞいてみた。大きさは棺おけ程度のものから、しゃがめば大人が2、3人は入れるものまである。形はさまざまだ。

 町教育委員会によると、吉見百穴の科学的な考証が初めて行われたのは明治20(1887)年、現在の東京大学の人類学者、坪井正五郎博士による発掘。人骨のほか、まが玉などの宝飾品、土器類が続々と出土した。

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