「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」ご挨拶


 昭和27年(1952年)、カナダの作家、ルーシー・モード・モンゴメリの『アン・オブ・グリン・ゲイブルス(Anne of Green Gables)』は、私たちの祖母・村岡花子によって『赤毛のアン』として、はじめて日本に紹介されました。それ以来、世代を超え多くの方たちに読まれ続けています。

 村岡花子は、『赤毛のアン』シリーズの翻訳だけでなく、童話や随筆など数多くの著書を残しました。また、早くから日本の婦人や子供たちの生活を豊かなものにするために、欧米の家庭小説を日本に紹介しようと努力を続けておりました。昭和2年(1927年)に、単行本としては初めての『王子と乞食』を出版して以来、『スー姉さん』、『リンバロストの乙女』、『少女パレアナ』、『そばかすの少年』等と、次々と訳しました。また、若いころから、英米文学を勉強するかたわら、佐佐木信綱の門下で短歌を詠み、創作も手がけておりました。村岡花子の翻訳『赤毛のアン』シリーズが、多くの読者たちに心からの感動と喜びを与えることができたのは、この蓄積があったからだと思います。

 文筆活動以外にも、NHKの子供向けラジオ番組、「コドモの新聞」の放送(昭和7年~16年)で、憶えていてくださる方々もあると思います。

 平成元年(1989年)に設立の山梨県立文学館には、常設の「村岡花子展示コーナー」が設けられました。また、東京都大田区郷土博物館発行の『馬込文士村』の中で、その文士たちの一人として紹介されております。

 平成3年(1991年)より、花子の長女(私共の母)である故・村岡みどりの提案で、大森の自宅にそのままのかたちで残る村岡花子の書斎を、「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」の場所とし、村岡花子の著作物や蔵書の保存、また同時代の児童書の保存につとめております。はじめての『赤毛のアン』が紹介された当時からの読者の方々には、アンと出会った時の心のふるさとともなるように、また、現在の若い読者の方々には、明治~大正~昭和と、このような理想をもって生き抜いた女性がいたということを知っていただきたいという気持ちから、この記念館の開館の運びとなりました。そして、村岡花子訳の『赤毛のアン』が、今なお、多くの腹心の友によって愛され続けていることへの、私たち家族の感謝のあらわれであることは言うまでもありません。

 日本とカナダの外交関係樹立70周年の折には、村岡花子の『赤毛のアン』をはじめとするルーシー・モード・モンゴメリの作品の翻訳活動が二国間の友好と理解を深めるのに貢献したとして、カナダ政府より、「日加外交関係樹立70周年記念・文化交流促進功労/表彰状」をいただきました。

 2002年で、日本での「アン」誕生50周年となりました。また、昨年2008年で『アン・オブ・グリン・ゲイブルス(Anne of Green Gables)』は出版100周年、日加修好80周年を迎えました。「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」の活動が、これからもささやかながら、日本とカナダの友好の架け橋となれるよう心がけていきたいと思っております。

 
                             村岡美枝・村岡恵理
                      赤毛のアン記念館・村岡花子文庫
        

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