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翼型 airfoil, wing sectionと翼wing
1. 翼型 airfoil, wing section
(1)前縁 leading edge
(2)前縁半径 leading edge radius
(3)翼厚 wing thickness
(4)キャンバー camber
(5)翼弦線 chord line
(6)翼型中心線 mean line
(7)翼弦長 chord length
(8)後縁 trailing edge
(9)空力中心 aerodynamic center
(10)空力平均翼弦 MAC:mean aerodynamic chord
(11)可変キャンバー variable camber
(12)層流 laminar flow
(13)層流剥離 laminar separation
(14)境界層 boundary layer
2. 翼型の種類
(1)層流翼型 laminar airfoil
(2)遷音速翼型 transonic airfoil
(3)ピーキー翼型 peaky airfoil
(4)スーパークリティカル翼型,超臨界翼型 supercritical airfoil
(5)可変キャンバー翼型 variable camber airfoil
3. 翼 wing
(1)翼幅 wing span
(2)翼面積 wing area
(3)アスペクト比,縦横比 aspect ratio
(4)テーパー翼 tapered wing
(5)テーパー比 taper ratio
(6)後退角 sweptback angle
(7)前進角 sweptforward angle
(8)ボーテックス・ジェネレーター vortex generator
(9)ストレーク strake
4. 主翼平面形の種類
(1)後退翼 sweptback wing
(2)前進翼 forward swept wing
(3)三角翼 delta wing
(4)二重三角翼 double delta wing
(5)可変翼 variable(geometry)wing
(6)斜め翼 oblique wing, slew wing
(7)X翼 X wing
(8)結合翼 joined wing
(9)無尾翼機 tailless wing
(10)先尾翼機 canard wing
1.翼型(airfoil, wing section)
 翼の断面の形。主翼の翼型はできるだけ小さい抵抗で大きな揚力が得られるように工夫されている。また,飛行機の性能は,この翼型の特性によって大きく左右されるので,構造・強度も考慮した上で機体の設計目的に最も適した翼型が選ばれる。一般的に前縁半径,翼厚比あるいはキャンバーを大きくするほど,最大揚力係数は増加するが,同時に抵抗も増大するので,現代の民間ジェット機のような高速機では,それらがともに小さい翼型を採用している。このため低速飛行時には機体を支えるための揚力が不足し,それを補うために高揚力装置が用いられる。
図1-1-3 翼型の各部の名称
図1-1-4 翼型の変遷
(1) 前縁(leading edge)
 翼型の最前端。
(2) 前縁半径(leading edge radius)
 前縁の丸みと一致する円の半径。一般に,前縁半径を大きくするほど失速迎え角が増加するとともに,最大揚力係数も増加するが,同時に抵抗も増加する。
(3) 翼厚(wing thickness)
 翼弦線と直角方向に測定した翼型の上面と下面との距離をいう。翼厚は翼弦方向に変化するが,その最大値を最大翼厚と呼び,これを翼弦長で割ってパーセント表示した値を翼厚比(wing thickness ratio)という。たとえば,最大翼厚が1mで翼弦長が10mの翼型の場合,翼厚比は10%と表示する。
(4) キャンバー(camber)
 翼型中心線と翼弦線との距離。したがって,翼型の上面と下面の形状が対称である翼型,つまり対称翼においては,キャンバーは0になる。一般的にキャンバーを大きくするほど失速迎え角が増加するとともに,得られる最大揚力係数も増加するが,同時に抵抗も増大するので,現代民間ジェット輸送機のような高速機においてはキャンバーの小さい翼型を用いることが多い。
(5) 翼弦線(chord line)
 翼型の中心線の前端と後端,すなわち前縁と後縁を結んだ直線であり,翼型の基準となる線である。翼弦線を単に翼弦(コード)と呼ぶ場合もある。
(6) 翼型中心線(mean line)
 翼型の上面と下面との中点を順々に結んで得られる曲線。キャンバー・ラインともいう。
(7) 翼弦長(chord length)
 翼型の前縁と後縁とを結ぶ直線の長さである。一般的に,翼弦長を変えても形状が相似形である限り,翼型の特性は変化しないので,たとえば空力中心の位置を表示する場合など,翼弦長を100%とし,前縁からその点までの距離を翼弦長のパーセントで表示するのが便利である。たとえば空力中心が前縁から翼弦長の1/4に相当する位置にあるとすれば,空力中心は25%コードにあるという表現をする。
(8) 後縁(trailing edge)
 翼型の最後端。
(9) 空力中心(aerodynamic center)
 翼型に気流が当たると揚力Lが発生するので,図1-1-5のように,翼型上の任意の点を考えると,そこにはあるモーメントMが生じることになる。
 ところが揚力の作用点は,図1-1-6のように,揚力係数が小さくなる(つまり迎え角が小さくなる)につれて後方に移動するので,適当な点Aを,揚力Lによって生じるA点まわりのモーメントが迎え角の大小にかかわらず一定であるような点に,選んでやることができる。この点を空力中心と呼び,ふつうの翼型では25%コード,つまり前縁から翼弦長の約25%に相当する長さだけ後方に離れた位置付近にある。
図1-1-5 翼型に生ずるモーメント
図1-1-6 翼型に生ずるモーメント
(10) 空力平均翼弦(MAC:mean aerodynamic chord)
 実際に翼が発生させる揚力は翼幅方向に変化するが,翼全体を通じてある代表的な翼弦を想定し,この翼弦の位置に揚力がすべて作用すると仮想すれば,翼の特性を計算する場合便利となる。この仮想上の翼弦を空力平均翼弦と呼び,翼幅方向の位置および翼弦長は,図1-1-7 空力平均翼弦(MAC)のように求めることができる。
 おもな旅客機の主翼の空力平均翼弦長は,
737-400 134.46in(約3.42m)
747-400 327.78in(約8.33m)
777 278.52in(約7.07m)
エアバスA310 214.2in(約5.44m)
ダグラスMD-11 295.78in(約7.51m)
図1-1-7 空力平均翼弦(MAC)
(11) 可変キャンバー(variable camber)
 飛行中,翼型のキャンバー(中心線のそり具合)を変えられるようにしたもの。高速飛行時の小さい抵抗と低速飛行時の大きな揚力とを一つの翼で得られるようにすることが目的で,翼の前後縁部に付けられたフラップがこれに相当する。舵面もこれと同じ働きをもつ。→フラップ
(12) 層流(laminar flow)
 流体の微小部分が互いに入り混じることなく,規則正しく層状をなし,すべり合いながら流れる状態をいう。実際の流れにおいてはなかなか層流にはなりにくい。
(13) 層流剥離(laminar separation)
 境界層が乱流にならず,まだ層流を保っている部分において,物体の表面から離れてしまう(剥離する)現象。
(14) 境界層(boundary layer)
 流体が物体の表面に沿って流れる場合,実在の流体には粘性があるため,物体の表面に接しているところでは流速はゼロになり,物体の表面から離れるにしたがって流速は変化して,ある距離を離れたところで流体の速度と等しくなる。物体の表面にごく近く,その流体の速度が変化している薄い層を境界層という。1904年,ドイツの物理学者プラントルによって発見された。
2.翼型の種類
図1-1-8 翼平面形のいろいろ
(1) 層流翼型(laminar airfoil)
 流れから物体が受ける抵抗は,圧力抗力と摩擦抗力から成るが,翼は薄いので抵抗のほとんどは摩擦抗力になる。摩擦抗力は境界層の速度勾配に比例するが,速度勾配の大きい乱流境界層は摩擦抗力が大きい。したがって,翼の表面の境界層の層流の部分を広くするほど,翼の抗力は小さくなる。この考え方から迎え角が小さい場合,層流境界層は翼上下面の最小圧力点まで保たれるので,この点をなるべく後方に下げてやれば境界層はほとんど層流に保たれ摩擦抵抗が小さくできる。こうした考え方で設計された翼形を層流翼型といっている。したがって,最大翼厚の位置が翼弦の40〜50%付近にあるのが特徴で,最大揚力係数は小さくなり,失速特性が悪くなる傾向がある。(→層流翼型
(2) 遷音速翼型(transonic airfoil)
 翼の衝撃波の発生を遅らせるには,翼型を薄くするか後退角を大きくすればよいが,どちらも構造重量が増し最大揚力が減る原因となる。
 1950年代に英国のRAE(国立航空研究所)で「最大速度がマッハ1を超えても,衝撃波の発生がゆるやかであればよい」との考えから,翼の上面の超音速領域の加速を抑えるため,上面を平らにし,衝撃波を弱め抗力の増加をゆるやかにする特殊な翼型を研究した。
 この考えは後にピーキー翼型,リア・ローディング翼型,スーパークリティカル翼型へ発展していく。これらを総称して遷音速翼型という。そして1960年代以降の遷音速旅客機やビジネス機に応用されるようになった。
 この翼型は,同じ飛行速度では,従来よりも翼厚を大きく,後退角は小さくすることができる。また重量を増さずに,縦横比を大きくし誘導抗力を減らせるため,低燃費にも役立っている。
図1-1-9 1980年代の新しい翼の設計
(3) ピーキー翼型(peaky airfoil)
 音速に近い高速機で,衝撃波の発生による気流の剥離や抗力の増大の影響を小さくするため,翼面の前縁部に部分的な超音速流による圧力分布のピークをつくり,造波抗力を減らすような「ピーキー圧力分布翼型」が,英国で1962年に考えられた。これをピーキー翼型という。
 低燃費だけでなく,また主翼後退角が小さくできることから操縦性・安定性の向上も期待できる,などの利点がある。現在エアバスA300B型で実用化されている。
図1-1-10 ピーキー翼の圧力分布
(4) スーパークリティカル翼型,超臨界翼型(supercritical airfoil)
 ピーキー翼型からさらに進んで,衝撃波の発生する位置が翼面の後縁部にくるようにして超音速領域を拡げ,抗力をゆるやかにし,飛行速度を音速に近づける翼型が生まれた。
 1965年に米国NASAで考案され,1971〜72年に主要各国へ特許の出願があった。しかしほぼ同時期に英・独・蘭・日本でも同様の研究が行われており,論議を呼んだ。
 この翼型は,従来と同じ翼厚比のままでも巡航マッハ数を15%程度増やせる。また巡航マッハ数の方を従来と同じにとれば,抗力を増さないで翼厚比を増すことができるので,構造重量を減らせる利点がある。現在DC-10,L-1011,C-5Aなどに使われている。
(5) 可変キャンバー翼型(variable camber airfoil)
 広義には,パイロットの判断で,翼の前縁部と後縁部のフラップを機械的に操作して折り曲げていた従来型の翼も含む。
 狭義には,最近の研究で,用法適応翼(mission adaptive wing)の別名があるように,航空機が飛行時の状態(離陸−巡航−着陸)に応じて最小の抗力と最低の燃料消費で飛べるように,自動的に翼のキャンバーを変えられる翼。
 現在NASAで研究中のもののなかには,さらにコンピューター連動によって翼全般にわたり,飛行状態に応じて自動的に柔軟に翼型を変えていこうという画期的なものも含まれている。
3.翼(wing)
 重航空機(空気より重い航空機)が空気中で自己の重量を支えるために必要とする空気力学的な力(揚力)を生じさせるもの。一般に,物体が流体の中を動くときはその動きを止めようとする力(抵抗)が働くが,翼は,その動きと直角の方向に抵抗よりもはるかに大きな力(揚力)が生じるように工夫されている。
 翼はその機能により,(1)重航空機が飛行のために必要とする揚力を得るための翼=主翼と,(2)飛行中の重航空機の釣り合いや操縦および安定を受け持つための翼=尾翼とに分けられる。また主翼枚数(単葉・複葉),形(長方形翼,テーパー翼,楕円翼,直線翼,後退翼,VG翼),動かない翼面で揚力を生じさせる固定翼と,機体にほぼ垂直に回転軸を置き,そのまわりを回転させて揚力を得る回転翼,などに分けることができる。
(1) 翼幅(wing span)
 主翼を水平面に投影したときの両翼端の距離。
(2) 翼面積(wing area)
 翼の面積でフィレット部は含めない。胴体と交差した部分については翼の前縁と後縁とを延長し,胴体中心線と交わった点までを翼として面積に加算するのがふつうである。この面積は翼の断面形あるいは平面形とともに,飛行機の性能を左右する非常に重要な要素の一つである。
 おもな旅客機の翼面積は,
737-400 980ft2(約91m2
747-400 5,500ft2(約511m2
777 4,607ft2(約428m2
エアバスA310 2,357ft2(約219m2
ダグラスMD-11 4,020ft2(約399m2
(3) アスペクト比,縦横比(aspect ratio)
 翼の細長さを示す値で,翼幅を翼弦長の平均値で割った値。したがってグライダーの翼のように細長い翼では,アスペクト比は大きくなる。この値は,翼弦長が一定の翼,すなわち矩形翼のような翼では,翼幅を翼弦長で割って求められるが,一般の翼では翼弦長が翼幅方向に変化するので,下式を用いて求めている。
アスペクト比=(翼幅)2/翼面積
 翼の空力的特性は,主に翼の断面形とアスペクト比によって変化し,アスペクト比を大きくするほど誘導抗力が小さくなり,したがって揚抗比が増加するとともに,迎え角の変化による揚力係数の変化も増加する。さらにアスペクト比を大きくすることによって翼弦長が小さくなり,したがって風圧中心の絶対的な移動量が小さくなる。以上のことは,性能・安定上は有利に作用するが,逆に翼が細長くなることによって強度・構造的には不利になる。
 飛行機の設計に当たっては,これらの相反する条件をにらみ合わせて,アスペクト比が決定される。輸送機のように,一般的に航続性能が重視される場合は,アスペクト比を大きくするのがふつうである。
 なお,おもな旅客機の主翼のアスペクト比は,
737-400 9.17
747-400 6.96
777 8.69
エアバスA310 8.80
ダグラスMD-11 6.70
(4) テーパー翼(tapered wing)
 胴体への取り付け部から翼端に向かって,翼弦長および翼厚が,ともに小さくなっている翼のこと。揚力などの力によって翼を曲げようとするモーメントが強く作用する翼の付け根方向に幅広く,厚くなっているので,構造重量を軽くすることができる。逆にいえば,同じ重量で翼を作った場合,翼厚比を小さくすることができ,したがって最大速度を向上,あるいは燃料消費量を減少させることができる。また,翼の付け根側で翼厚が大きいことは,脚の収納,あるいは燃料の搭載に有利である。
(5) テーパー比(taper ratio)
 翼の付け根から翼端に向かって細くなっているテーパー翼の先細りの度合い。テーパー比は,次のようにして求められる。
テーパー比=翼端での翼弦長/機体中心線での翼弦長
図1-1-11 テーパー比(先細比)
(6) 後退角 sweptback angle
 翼の平面形を見たとき,翼端が翼の付け根から後方へ下がっている場合,翼の基準線(25%翼弦線)と,機体の前後軸(機軸)に直角に立てた線とのなす角をいう。ふつう遷音速機で35°前後,マッハ1.4で45°,マッハ2で60°程度で,A310は28°,747は37.5°,コンコルドは75°である。新しい777では同速度域でも32°と少ない後退角となっている。
(7) 前進角(sweptforward angle)
 翼の平面形を見たとき,翼端が翼の付け根より前方へ出ている場合,翼の基準線と機体の前後軸(機軸)とのなす角をいう。前進翼の空気力学的効果は,後退翼と同じと考えてよい。
(8) ボーテックス・ジェネレーター(vortex generator)
 境界層の剥離を防止するため,翼や胴体など機体の表面に気流に適当な角度をもって,並べて取り付けられた小片。うず発生片ともいう。空気抵抗は小さいが剥離しやすい層流境界層を,空気抵抗はやや大きくなるが剥離しにくい乱流境界層に変換させるもので,小片の端に生じたうずが,この働きをもっている。
(9) ストレーク(strake)
 超音速機の主翼付け根の前部から胴体側面に沿って機首の方に伸びた張り出し部分。超音速飛行中には揚力を生じ,また主翼の空力中心の後退による頭下げモーメントを打ち消す作用がある。また大きな迎え角をとると,ここから渦流が発生して主翼上面を流れ,失速を遅らせる。
 ストレークはDC-10や767のエンジン・ナセル上部にもみられるが,この場合は着陸形態でナセル付近の翼上面に向けてボーテックスを発生させ,最大揚力係数を増し失速速度を低下させる。
4.主翼平面形の種類
(1) 後退翼(sweptback wing)
 音速に近いかそれ以上の高速機では,翼に発生する空気の圧縮性の影響,つまり衝撃波の害を遅らせるため,翼に後退角を付けている。後退翼では,高速時に空気抵抗が小さくてすむが,低速時には揚力が小さくなる。
後退翼機(T-1)
後退翼とウィングレット(カナディア・チャレンジャー)
(2) 前進翼(forward swept wing)
 翼の平面形の基準線(通常25%翼弦線)が,機軸に対して前進している翼。従来は,翼端失速より翼根失速が現れるが,高速時には翼の上反りによる翼端失速も招きやすいとされていた。しかし近い将来,複合材料の進歩により空力弾性的テーラリング(→空力弾性的テーラリング)が図られ,また能動制御技術(→能動制御の新技術)が進歩すれば,前進翼は高速機動を要求される機種にはとくに有望な翼平面形と見られている。
前進翼機(グラマンX-29実験機)
(3) 三角翼(delta wing)
 後退翼機の後退角が60°以上になると,翼のねじれに対処する面からは構造上の不利さがある。これを補うために翼端と胴体を桁で連結した設計が三角翼である。
 三角翼は後退翼に比べて音速付近の空力中心の移動が少なく,超音速飛行時の抵抗が少ない。また翼面積が大きくとれるので,翼面荷重が小さく,(大型機では)翼内に燃料搭載の余裕もできるので長距離飛行には有利である。
 短所としては,低速飛行時には大きな迎え角をとらないと必要な揚力が得られないため,離着陸時の前方視界が悪くなることである。
三角翼機(アブロ・バルカン)
(4) 二重三角翼(double delta wing)
 三角翼の欠点を減らす方法として,翼前縁に2段の後退角を持った二重三角翼が考えられる。内側の大きな後退角部分は超音速飛行時に揚力を発生するが,亜音速以下ではほとんど揚力を出していない。また低速で迎え角が大きくなるにつれて揚力が発生し,機首上げの力が働くことにより機首引き起こしのための操舵による揚力損失が少なくてすむ。
 一方,翼前縁部の後退角が変わる部分から発生する渦流によって,主翼周辺の空気の流れは活性状態が続き,大きな迎え角まで失速が起きない。
 これが最初に使われたのはスウェーデンのドラケン戦闘機であるが,以後たくさんの超音速機に使われている。
 さらに二重三角翼全体を曲線にした翼をオージー翼(ogee wing,反曲線翼)といい,英仏共同開発のコンコルド超音速旅客機に使われている。
ダブルデルタ翼機(サーブ・ドラケン)
オージー翼(コンコルド超音速旅客機)
(5) 可変翼(variable(geometry)wing)
 広義には,翼面積・キャンバー・取り付け角・後退角など翼の幾何学的形状を飛行中に変えられるようにした翼のこと。
 狭義には,低速時から高速時まで,飛行速度に応じて任意に後退角度を変えられる翼のことで,最近ではこの意味に使われる。
 後退翼機は高速飛行時の抗力を減少するのに有利であるが,一面,最大揚力係数が小さくなるから着陸速度を大きくしなければならず,また翼端失速への対応策が必要である。これらの解の一つが可変翼で,低速時には直線翼,高速巡航時には後退翼,超音速時には三角翼の特性を一つの機種で実現できる。
 すでにF-14(米),トーネード(英独伊3国)などの超音速機で実用化されている。
可変後退翼機(グラマンF-14トムキャット)
可変翼(パナビア・トーネード戦闘攻撃機)
(6) 斜め翼(oblique wing, slew wing)
 可変翼の一種,ふつうの可変翼は,左右両翼を独立に対称の角度で変えるのに対して,斜め翼は,左右一体の直線翼を機体中心部のピボットで回転させる。回転中に重心や揚力中心が動かず,回転部の機構と重量が軽易にできるという利点がある。
 NASAが考案し実験機の飛行にも成功した。次世代超音速機への可能性が研究されている。
図1-1-12 NASA AD-1 斜め翼研究翼
(7) X翼(X wing)
 十字型の回転翼を水平飛行中は固定し,固定翼として利用するもので,ヘリコプターの(垂直昇降+ホバリング)能力と,ジェット機の(高速飛行)能力を兼備しようという計画。1983年にNASA,DARPA(国防省高等研究計画局),シコルスキー社が研究を始めた。S-72X1研究機は,1987年に初飛行したが,その後予算がカットされ,試作機はエドワーズ基地に保管された。
 ローターブレードの前縁と後縁にスロットがあり,ここから圧縮空気を噴出すると,コアンダ効果による循環流が起こり,ブレードに揚力が生じることを利用している。
 ヘリコプターモードのときは,回転中のブレード後縁から圧縮空気を噴射し,飛行機形態のときは,固定されたブレードの前縁と後縁から噴射する。ヘリコプターから飛行機へ形態の変わる遷移飛行(transition)のときは,ローターブレードの回転速度につれて,後縁のみ,後縁+前縁というように噴出する空気量を微妙に調節する。
 X翼機は,高性能コンピューターによるブレード循環流制御システム,フライバイワイヤ操縦システム,複合材料という三種の革新技術が揃った今日,初めて実現の可能性が見えてきた。
X翼(NASA/シコルスキー研究機)
(8) 結合翼(joined wing)
 後退角と上反角を持つ前翼と,前進角と下反角を持つ後翼とを,翼の先端部で結合した形態の翼。このため機体を前方から見ても上面から見ても,2枚の主翼は菱形に結合されて見える。
 主翼をトラス構造にできるため強度が強くなり,そのぶんだけ構造重量が軽くなる,また抵抗が減って燃料効率が改善できる,と期待されている。
 この形態は1974年にグライダーで試みられて以来,米国で数種類研究されている。NASAはJW-1,JW-2,JW-3研究機の開発契約を結んだが,まだ飛行していない。
結合翼(高高度無人観測機)
(9) 無尾翼機(tailless wing)
 水平尾翼を持たず,主翼のみで縦の釣り合いと安定を保つ形式の飛行機。縦の釣り合いや安定は翼に後退角と捩り下げとを与えることによって得ており,操縦は翼の後縁に取り付けたエレボンによって行う。垂直尾翼のあるものと,持たないものとがある。
(10) 先尾翼機(canard wing)
 揚力を発生する主翼を胴体の後ろ側に取り付け,縦の釣り合いや操縦のための小翼を胴体の前方に取り付けた形式の飛行機。ライト兄弟の飛行機もこの形式であった。
先尾翼と三角翼(ダッソー・ラファール)
ストレークと主翼前縁フラップ(MD・F/A-18戦闘機)
先尾翼とウィングレット(ビーチクラフト・スターシップ型汎用機の85%スケールの実験機)

 
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