(1) |
前縁(leading edge)
翼型の最前端。 |
(2) |
前縁半径(leading edge radius)
前縁の丸みと一致する円の半径。一般に,前縁半径を大きくするほど失速迎え角が増加するとともに,最大揚力係数も増加するが,同時に抵抗も増加する。 |
(3) |
翼厚(wing thickness)
翼弦線と直角方向に測定した翼型の上面と下面との距離をいう。翼厚は翼弦方向に変化するが,その最大値を最大翼厚と呼び,これを翼弦長で割ってパーセント表示した値を翼厚比(wing
thickness ratio)という。たとえば,最大翼厚が1mで翼弦長が10mの翼型の場合,翼厚比は10%と表示する。 |
(4) |
キャンバー(camber)
翼型中心線と翼弦線との距離。したがって,翼型の上面と下面の形状が対称である翼型,つまり対称翼においては,キャンバーは0になる。一般的にキャンバーを大きくするほど失速迎え角が増加するとともに,得られる最大揚力係数も増加するが,同時に抵抗も増大するので,現代民間ジェット輸送機のような高速機においてはキャンバーの小さい翼型を用いることが多い。 |
(5) |
翼弦線(chord line)
翼型の中心線の前端と後端,すなわち前縁と後縁を結んだ直線であり,翼型の基準となる線である。翼弦線を単に翼弦(コード)と呼ぶ場合もある。 |
(6) |
翼型中心線(mean line)
翼型の上面と下面との中点を順々に結んで得られる曲線。キャンバー・ラインともいう。 |
(7) |
翼弦長(chord length)
翼型の前縁と後縁とを結ぶ直線の長さである。一般的に,翼弦長を変えても形状が相似形である限り,翼型の特性は変化しないので,たとえば空力中心の位置を表示する場合など,翼弦長を100%とし,前縁からその点までの距離を翼弦長のパーセントで表示するのが便利である。たとえば空力中心が前縁から翼弦長の1/4に相当する位置にあるとすれば,空力中心は25%コードにあるという表現をする。 |
(8) |
後縁(trailing edge)
翼型の最後端。 |
(9) |
空力中心(aerodynamic center)
翼型に気流が当たると揚力Lが発生するので,図1-1-5のように,翼型上の任意の点を考えると,そこにはあるモーメントMが生じることになる。
ところが揚力の作用点は,図1-1-6のように,揚力係数が小さくなる(つまり迎え角が小さくなる)につれて後方に移動するので,適当な点Aを,揚力Lによって生じるA点まわりのモーメントが迎え角の大小にかかわらず一定であるような点に,選んでやることができる。この点を空力中心と呼び,ふつうの翼型では25%コード,つまり前縁から翼弦長の約25%に相当する長さだけ後方に離れた位置付近にある。
図1-1-5 翼型に生ずるモーメント
図1-1-6 翼型に生ずるモーメント
|
(10) |
空力平均翼弦(MAC:mean aerodynamic chord)
実際に翼が発生させる揚力は翼幅方向に変化するが,翼全体を通じてある代表的な翼弦を想定し,この翼弦の位置に揚力がすべて作用すると仮想すれば,翼の特性を計算する場合便利となる。この仮想上の翼弦を空力平均翼弦と呼び,翼幅方向の位置および翼弦長は,図1-1-7 空力平均翼弦(MAC)のように求めることができる。
おもな旅客機の主翼の空力平均翼弦長は,
737-400 134.46in(約3.42m)
747-400 327.78in(約8.33m)
777 278.52in(約7.07m)
エアバスA310 214.2in(約5.44m)
ダグラスMD-11 295.78in(約7.51m)
図1-1-7 空力平均翼弦(MAC)
|
(11) |
可変キャンバー(variable camber)
飛行中,翼型のキャンバー(中心線のそり具合)を変えられるようにしたもの。高速飛行時の小さい抵抗と低速飛行時の大きな揚力とを一つの翼で得られるようにすることが目的で,翼の前後縁部に付けられたフラップがこれに相当する。舵面もこれと同じ働きをもつ。→フラップ |
(12) |
層流(laminar flow)
流体の微小部分が互いに入り混じることなく,規則正しく層状をなし,すべり合いながら流れる状態をいう。実際の流れにおいてはなかなか層流にはなりにくい。 |
(13) |
層流剥離(laminar separation)
境界層が乱流にならず,まだ層流を保っている部分において,物体の表面から離れてしまう(剥離する)現象。 |
(14) |
境界層(boundary layer)
流体が物体の表面に沿って流れる場合,実在の流体には粘性があるため,物体の表面に接しているところでは流速はゼロになり,物体の表面から離れるにしたがって流速は変化して,ある距離を離れたところで流体の速度と等しくなる。物体の表面にごく近く,その流体の速度が変化している薄い層を境界層という。1904年,ドイツの物理学者プラントルによって発見された。 |