声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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清水マリの声優道

声優という仕事の創世記から活躍され、長年にわたり『鉄腕アトム』のアトム役という国民的キャラクターを演じてきた清水さん。その功績を認められて、東京国際アニメフェアにて第2回特別功労賞を受賞し、「声優の母」とも呼ばれています。そんな清水さんが語る当時の貴重なエピソードや、声優を目指す人へのアドバイスは見逃せません。

プロフィール

清水マリ●しみずまり……6月7日生まれ。ぷろだくしょんバオバブ所属。主な出演作は『鉄腕アトム』(アトム)、『妖怪人間ベム』(ベロ)、『ジェッターマルス』(マルス)、『宝島』(ジム・ホーキンズ)ほか。
清水マリ 公式ホームページ

ぷろだくしょんバオバブ

音響芸術専門学校

②不思議なご縁でさまざまな素晴らしい作品に巡り会えた

 

子供が産まれて舞台女優から声優に転身

清水マリ

 アトム役を演じていたときはまだ劇団に所属していたので、アフレコの日に地方公演にでかけてしまっていたこともありました。それで、ディレクターがデンスケと呼ばれた大きな録音機器を抱えて、公演場所まで収録のために追いかけてきてくれたこともありました。今でいう抜き録りの走りですね。
私がアトムを演じていたのは4年間なんですけど、最初は2年間という契約だったんです。私はすでに結婚していたので「2年間子供は作らないでください」といわれたんですが、2年目に入ってから子供ができてしまいました。

「収録が全部終わってから産むからいいわ」といっていたら、放送が延長になってしまい、結局8本だけ穴を開けて代役を立てていただきました。ところが、その放送を見た子供達から「アトムの声が違う」とテレビ局に問い合わせの電話がかかってきたそうです。まだそのころは「女の人が男の子役を演じている」というのを大きな声ではいえない時代だったので、ディレクターも困っていました。

  私としては『鉄腕アトム』の放送が終了したら、また劇団を中心に活動していこうと思っていたんですが、劇団の活動はかなり長時間拘束されるし、とても子供の面倒を見ながら続けていけるものではありませんでした。それで劇団を辞めて、大山のぶ代さんに誘われるままに事務所に入ったんですが、子供が産まれてなければ未だに舞台女優をしていたかもしれませんね。

 

今でも月に20回は発声練習をする

 

  

 

 

清水マリ

 その後、最初はモノクロ版だった『鉄腕アトム』がカラー版でリメイクされることになったんですが、そのときも手塚さんの「アトムはあの声じゃなければダメだ」という鶴の一声で、また私が演じさせていただけることになりました。アトム役をきっかけにアニメの男の子役ばかり演じさせていただくようになりましたが、『妖怪人間ベム』のベロ役は難しかったですね。アトムがわりと自分の素の声に近い感じで演じてしまったので、ベロを演じるときにはもう少しいろいろ作り込んだんですが、大きな声を出すとベロじゃなくてアトムになっちゃうんです。ほかには『宝島』のジム・ホーキンス役も印象に残っていますね。それまで演じたアトムやベロは人間ではなかったので、「初めて人間の男の子役だ」と喜んだ覚えがあります。でも、私の声は決して男の子のように低いわけじゃないんです。洋画で男の子役を演じたこともありましたが、ほとんどは女の子の役でした。もしかしたら手塚さんがアトムの声として求めていたのが、普通の男の子の声ではなくて、もっと金属的で中性的な声だったから、私が演じることができたのかもしれません。そういう不思議なご縁が続いて、さまざまな素晴らしい作品に巡り会えたのは、本当に幸せなことだなと思いますね。

 東京国際アニメフェアで特別功労賞をいただけるという連絡があったときには、一度にたくさんの人が受賞するものだと思ったんです。それが今回は私ひとりだと知って、最初はもっと素晴らしい先輩方がたくさんいらっしゃるのに、私などが受賞しておこがましいのではないかと思いました。結局、固辞することもないかと思って頂戴いたしましたが、特別功労賞は私ひとりの力で受賞したのではなく、『鉄腕アトム』というアニメ作品全体に対して贈られた賞だと思っています。
この歳まで元気でやってこられたことについて「健康の秘訣は?」ときかれることもあるんですが、自分では特に何かしているわけではないです。強いてあげるなら、発声練習でしょうか。私は現在、養成所で教えているほかに、公民館でお母様方がやっていらっしゃるような朗読教室で教えたりしているんです。そのどこでも最初に発声練習をするんですが、生徒さんが発声をしているときについ自分も混ざってしまって、合計すると月に20回くらい発声練習をしている計算になりますね。そうして常に声を出せる状態にしているから、この年齢でも声のお仕事ができるのかもしれません。ただ、怠け者だから自分ひとりで発声練習をしようとは思わないんですよ(笑)。だから、教室などでみなさんと一緒に楽しく発声練習できるのはいいですね。また、最近は寝る前に10分くらい軽く体操をする程度ですが、若いころは体を動かすのが大好きで、いろいろなスポーツにも挑戦しました。そういう経験があるからこそ、今でも元気でいられるのかもしれません。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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