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国体までに部分再開…山田線移管

  • 三鉄移管受け入れが決まり、手をつなぐ達増知事(中央)や沿岸市町村長ら(24日、盛岡市で)

 第三セクターの三陸鉄道(三鉄)への移管が24日に決まったJR山田線宮古―釜石駅間は、復旧工事をへて、段階的に運行を再開する見通しだ。運行を担う三鉄は、2016年秋の「希望郷いわて国体」までの部分再開を目指しており、優先して復旧する区間の候補として宮古―豊間根間や釜石―鵜住居間が挙がっている。

 盛岡市内のホテルで開かれた非公開の会議には達増知事、沿岸12市町村の首長(代理含む)、三鉄の望月正彦社長らが参加した。会議は三鉄移管受け入れで一致した。JRからの移管協力金30億円の使い道は議論が進まず、継続協議とされた。運行再開の時期については、山田線55・4キロのうち被災区間は9・4キロで、比較的被害の軽い区間から部分的に運行を再開するという。

 会議後、達増知事は「地域の核となる鉄路復旧が決まった。今日にでも(復旧工事を)スタートしてほしい」と話した。沿線の佐藤信逸・山田町長は「被災地にとって大きな一歩」、碇川豊・大槌町長は「明るい年に向かって希望が湧く」と話した。

 達増知事らは26日、JR東日本の冨田哲郎社長に移管受け入れ決定を報告し、復旧方針について大筋で合意したい考えだ。JRは三鉄への支援策として、車両8両の提供、枕木の65%のコンクリート化、バラスト(砕石)の52%の入れ替えなどを提案している。

 沿線住民からは三鉄移管に歓迎の声が上がった。震災前は大槌駅近くに住んでいた越田征男さん(69)は「町は人口流出が続く。駅ができれば戻る人もいるはず」と期待を込めた。大槌町から釜石市の高校へ進学を希望する中学3年の道又礼奈さん(14)は「通学にバスなら50分くらいだが山田線なら半分ですみそう」と喜ぶ。「JR山田線を早期に復旧させる会」の山田町の代表を務める松本龍児さん(62)は「鉄路復旧という最低限の部分はかなってよかった。山田町は駅の周りに商店街を復興させようとしており、駅を中心にした街並みが機能するようにしたい」と話していた。

◆一時金30億 使途に課題

 JR山田線宮古―釜石駅間は、復旧工事開始のめどがつくまでに震災から4年近くもかかった。赤字路線を回避したいJR東日本と、運行再開を望むが負担を引き受けたくない地元自治体との綱引きが長く続いたためだ。

 震災前、山田線の1日1キロあたりの乗客数は392人(2009年度)で、JR東日本の在来線でも下から3番目。JRは釜石線のSL銀河は「復興の象徴」と宣伝したが、被災地を走る山田線復活には終始冷淡だった。BRT提案を拒否され、JR東が出した三鉄移管案と一時金の30億円への引き上げは、ある意味で「最後通告」でもあった。

 自治体側は、廃線という最悪の事態を回避したいことで一致していたが、移管に最後まで慎重だったのは大槌、山田町だ。大槌町の試算では移管で三鉄への負担金が1000万円程度になる可能性があり、議会では反対意見も出た。山田線と三鉄の運賃には最大2・5倍程度の開きがある。

 県は内々に両町に対し、30億円の配分で配慮する姿勢を示したが、具体的な30億円の使い道は決まっていない。震災と少子高齢化で人口減に悩む沿岸部での利用客確保も大きな課題だ。

 (福元洋平)

2014年12月25日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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