道内
知床のヒグマ、サケは栄養源のわずか5% 京大院生ら、骨のコラーゲン分析
(07/20 14:31、07/20 16:46 更新)
川に遡上したサケを捕らえ食べるヒグマ=2013年11月、オホーツク管内斜里町
知床のヒグマの栄養源のうち、サケはわずか5%にすぎない―。京都大生態学研究センターの松林順さん(大学院博士課程3年)らの研究で、意外な実態が明らかになった。河川改修などの環境変化でサケの遡上(そじょう)が減ったことが原因となっている可能性があり、生態系への影響も懸念される。
サケはヒグマの主要な食料と一般に受け止められているが、捕獲されたクマの胃の内容物調査などから、実際はあまり食べていないという見方があった。松林さんらは、ヒグマが生きている間、何をどんな割合で食べたかを、「安定同位体分析」という手法を使って調べた。
道が知床半島で捕獲したヒグマ190頭の大腿(だいたい)骨からタンパク質の一種・コラーゲンを抽出し、炭素と窒素の同位体の存在比率を測定。これをクマの食料となるサケや他の動植物それぞれと比較することで、栄養源となった割合を個体ごとに推定した。
この結果、フキやセリなどの草本が32%、ヤマブドウやサルナシ(コクワ)などの果実が29%、エゾシカやアリなどの陸上動物が15%、畑作物のトウモロコシが12%だったのに対し、サケは5%にとどまった。北米沿岸部のヒグマの個体群は、サケが30%以上を占めるのに比べて、極端に少ない。
一方、同じ知床の中で比較すると、あまり開発されていない世界遺産地域ではその他の地域に比べて倍近くサケを食べていることも分かった。(編集委員 橘井潤)<北海道新聞7月20日朝刊掲載>
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