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後藤勝 スポーツナビ

FC東京の実体(2/3)
05シーズン版FC東京

2005年06月02日

FC東京・長澤徹コーチ
FC東京・長澤徹コーチ【 スポーツナビ 】


■自分のミスは自分で取り返す、というルール


 どんなチームでも、よい習慣と雰囲気を作り、クラブの気風とすることを心掛けているはずだ。FC東京でも、ひたむきな気風を絶やさないためのルールのようなものがある。そのあたりについて、長澤コーチに語ってもらった。

「原さんの哲学は、尻込みしてプレーするのでなければ、攻撃も守備も特に問題ない。一番怒るのもそういうところで、思い切ってやってダメなら責任とれっていう単純なルールがあるから。ウチ自体が、昔からそういうサッカーをやっていた。入ってきた選手は一番最初にそれを必ずやる。自分のミスは自分で取り返すっていう単純なことなんですけど、これがなかなか難しい。
 それを自分の無意識に植え付けている者と、言われて動く者と動かない者と、いろいろいるんですけど、そこの調律が合わないとウチの仲間に入れないので、若い選手はやりますね。やるっていっても別に(コーチが)怒るわけじゃないんですけど。2対2とか3対3のペナボックスのゲームをやって、サボったらやられるシチュエーションだけ常に与えて、僕らは見ている。そして穴をあけると、先輩に怒られる(笑)。(自分としては)はい、どうぞ怒られ続けてください、という感じで。でも、続けていればね」

 続けていれば、いつかはそのルールを体に染み込ませることができる。そのルールに則って動く肉体が、FC東京らしさを奏でる。

「倉さん(倉又寿雄ヘッドコーチ)もよくやるんですが、来るボールを見て、止めて、周りを見て、蹴るっていう作業を続けるんです。悪い選手って、リズムよくできないでしょう? サッカー好きだったら分かると思うんですけど、ボールを見過ぎちゃってヘッドダウンしたり、早く目を放しちゃってコントロールミスしたり、自分の味方を見過ぎちゃって読まれたり。その辺を整えるために『お前、今、見過ぎだよ』と言うと、今度は周囲を見なくなってしまったりする。そのバランスを取るために、各ポジションでやっている。倉さんは真ん中(中盤)の選手をつかまえて、2人でずっと蹴ったりする。パーツだけのトレーニングじゃなくて、パフォーマンス全体のバランスを取るために蹴らせているんです。
 馬場憂太、梶山陽平を最初にあずかったときに、ある方から『2人は絶対に伸びない』と言われました。要は守備をしないから、なんでしょうね。多分。僕らは彼らとは3年、4年の付き合いだけど、彼らの美意識を『守備ってかっこいいじゃん』というように時間をかけて変えていく。すると、追ってくれるようになる。ベッカムの(守備をやっている)ビデオを集めて見せ、『かっこいいだろう』『はい!』、そういう作業になってくる。それができるのが、コーチが選手とずっと一緒にいられるクラブワークのよさです。原さんもたまにそういう話をして『おお、ボールを追っかけるようになったじゃないか。いいぞ』とタイミングよく声をかけてくれる。まだまだですけど、そういう目に見えない部分を変えていくのが、クラブワークの仕事だなと分かってきたのが、ここ3、4年ですね」

 価値観が変わった代表例は、ルーカスだ。長澤が「アマラオが乗り移ってきましたよね」と言うくらい守備に走り回り、ハイボールに競るようになった。原監督の要求もあったが、守備で貢献することがチームにいい影響を与えるんだということが、身に染みて分かったのだろう。

「自分で言うのもなんですが、僕はこの選手が伸びるとか、そういうことは一切分からないです。それは欠損した能力で(笑)。三田光が仙台でやっている、福田健二がメキシコでやっていることは、誰にも想像できなかったと思うし、僕も分からなかった。古橋達弥(現在セレッソ大阪。本田技研時代に指導した)もそうだし」


■タイトルを取るためのFC東京の戦略


選手たちの未来を育てる長澤コーチ 選手たちの未来を育てる長澤コーチ【 スポーツナビ 】
 長澤は、プレーヤーを元気づけ、迷っている者にはヒントを提供し、彼らが自らが伸びていこうとする手助けをする。将来、伸びるかどうかが分からなくとも、どこが伸びたかは分かる。守備陣の故障が相次ぎ、出場機会を得た迫井深也については「レベルは上がってます。前はインターセプトしかなかったけれども、ボールを奪えるようになった」という。

「スタメンでなくとも、出場したり、移籍できたりというタイミングは必ずある。そういう(いざという時のために努力を絶やさない)ことを、三浦文丈、それに伊藤哲也、下平隆宏が残していってくれた。お陰で前田も尾亦も元気です。そうしたチームのDNAが、ここ4、5年で継承されるようになりました」

 長澤によれば、新人の鈴木健児は全体トレーニング終了後に、基本的な1対1を「2万回」やっている。無意識に反応できる部分と、意識してコントロールする部分のバランスが取れるようになるまで、反復していく。朝起きて反射的に歯磨きをするだけでなく、汚れを感じたときに意識的に磨くようにすれば、いつでも歯は清潔なはずだ。

「戦術がうまくかみ合っているときはいいけれども、それがうまくいかないとき、数的不利でも守れてしまう今野(泰幸)のような選手の方が、価値の出る時代がやってきている。サッカーではビビリがあるとダメだから。公式に当てはまらない時に『どうするんだ!? 分からない』と、自滅だけはしないようにしないといけないんですが、それ(ビビリ)を取り除くにはトレーニングしかないんですよね。試合は少ないですし。でも口うるさく言わなければ、1対1の練習も、止めろっていうまで止めないですからね。いくつもの哲学は押しつけません。そこまで、何人かの指導者の方に教わっていて、(それを含めた彼らの)サッカー人生を否定することになるから。そうではなくて、お前の取り方でボールを取ってみろ、と」

 長澤がそれに気付いたのは、「規格外」のマルセロ・マトスだった。いまやコリンチャンスの中盤に君臨するマルセロも、FC東京在籍当時のトレーニングでは1対1で一回もボールを取れず、泣いて帰ったことがあった。けれどもゲームの1対1はものすごく強かった。トレーニングで教えられるのとは違う、本人なりの取り方があったのだ。だから押しつけを取り外せば、若手はいつまでも1対1のトレーニングをやっている。
 長澤は言う。
「倒れても追っていく、グラウンドに寝るのはかっこ悪いという美徳は、あのときマルセロたちが残してくれたんだと思います」

 もし「FC東京らしさ」「東京イズム」というものがあるとすれば、それは6連敗目を喫したJリーグ第10節、鹿島アントラーズ戦の後半36分に見ることができるだろう。ゴールライン付近で屈強な大岩剛を背負い、何度も倒れ込みながら、決してボールを明け渡さなかった、あの時の今野の姿勢。圧力をかける大岩、守る今野、双方がフェアに体をぶつけ、そしてあともう少しで6連敗が確定する、残り10分という精神的にも肉体的にも追い込まれた状況で、決してあきらめず、責任をまっとうしようとした行為は、確実にその場に居合わせた者の心を打った。
 クラブ・サッカーの価値はそこにある。代表チームはワールドカップ予選を通過することが「勝利」だが、クラブチームは勝つだけでなく、ある価値や思想を体現しながら存続することが「勝利」だ。
 小平グラウンドで培われた哲学が、公式戦のピッチで表現できていることは今野が証明した。今野だけでなく、ほかのメンバーもやる気を失ってはいない。連敗で降格圏内に沈む苦境に立ち向かう若者に、FC東京らしい佇まいは見てとれる。

<続く>

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