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不思議な「錯覚」アート展覧会 東京
11月17日 17時36分

不思議な「錯覚」アート展覧会 東京
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人の目の錯覚についての最新の研究成果によって作られた不思議なアート作品の展覧会が、東京で開かれています。

この展覧会は、人の目の錯覚について研究している明治大学の杉原厚吉特任教授が企画したもので、東京・中野の会場には、杉原さんの研究グループが制作したおよそ70点の作品が展示されています。
このうち、坂道の十字路を立体的に作った作品は、道にボールを置くと坂を上っていくように見えます。この作品では、ものを片方の目で見ると、奥行きが正しくつかめなくなることが応用されています。
また、大学院生の小野隼さんらの作品は、止まっているカメやコウモリの模様が動いているように見えます。しま模様の前を別の模様が通ったときに起きる「フットステップ錯視」という錯覚が利用されていて、ことし5月にアメリカで開かれた、錯覚を利用した作品の国際コンテストで最優秀賞に選ばれました。
小野さんは「より多くの人に『錯覚』を身近なものだと感じてほしい。『錯覚』は日常生活に潜んでいるので、おもしろさをさらに知ってもらいたい」と話していました。
会場を訪れた人たちは、作品を見る場所を変えたり、実際に触ったりして、予想外の錯覚が起きるたびに驚いていました。訪れた女性は「作品はどれも不思議で、興味深かったです。ここの作品のように、世の中にも実物とは違うように見えていることが、たくさんあるのでしょうか」と話していました。
展覧会を企画した杉原特任教授は「種明かしをしたあとでも、もう一度見るとやはり錯覚が起きてしまうという不思議さを楽しんでもらいたい」と話していました。
この展覧会は今月22日まで、東京・中野の「明治大学中野キャンパス」で開かれています。午前10時から午後5時までで、入場は無料です。

「錯覚」の利用は身の周りにも

私たちの身の周りでは、錯覚がさまざまな形で利用されています。
今からおよそ800年前に作られた鎌倉市の鶴岡八幡宮の長さ500メートルほどの参道は、先に進むほど徐々に細くなっています。入り口の「二の鳥居」付近で、およそ4メートルある道幅は、出口の「三の鳥居」付近ではおよそ3メートルほどしかありません。その結果、参道は実際よりも長く見え、錯覚により、奥にある本殿を厳かに見せようとして設計されたとも考えられています。
錯覚は、現代のテーマパークにも取り入れられています。
東京ディズニーランドで、古いアメリカの町並みを再現している「ワールドバザール」。道幅は奥に行くほど狭く、鶴岡八幡宮と同じように町並みがより長く見えます。さらに、その奥にあるシンデレラ城にも、別の錯覚が取り入れられています。シンデレラ城の壁面は石を積んで作られていますが、その一つ一つの石が、高いところほど小さくしてあるのです。これにより、高さおよそ50メートルのシンデレラ城がより高く見えるということです。

最近では、錯覚を利用した商品開発も始まっています。
東京・港区の、布地などの製造を行う会社は錯覚を利用し、「脚がきれいに見える」という女性用のズボンを開発しました。このズボンは、足先ほど模様を細かくしてあります。これにより、脚が細く、長く見えるということで、およそ半年間かけて模様の大きさやパターンなどを研究したということです。この会社では、しま模様の幅などを変えることで、スタイルをよく見せるワンピースも開発したということです。
開発にあたった「セーレン」企画開発部の国枝寛之課長は「錯覚を利用したズボンは、30代から50代の、体型が気になる方々から、大きな反響をいただきました。これからもどうすれば女性が美しく見えるかを考え、人の錯覚を利用した商品開発を続けたい」と話していました。

人の錯覚を防ぐことで、道路の渋滞を緩和しようという取り組みも始まっています。
明治大学の友枝明保特任講師らの研究グループは、錯覚で上り下りを取り違える通称「オバケ坂」が、渋滞の一因になっていると考え、研究を進めています。
「オバケ坂」は、急な上り坂の前にある緩やかな上りなどで起きる錯覚で、トンネルなど風景が単調な場所で起きやすいことが知られています。ドライバーが下り坂と勘違いし、アクセルを緩めるとスピードが落ち、渋滞が生み出されます。
このため、研究グループは、各地の高速道路を調べ、錯覚が起きる道路の壁に、坂道を正しく認識するための模様をつけることで、渋滞を解消しようとしています。
友枝特任講師は「『錯覚する』と知っていても、どうしても起きてしまうのが錯覚なので、錯覚そのものが起きないようにすることが重要だ。少しでも渋滞緩和につながればうれしい」と話していました。

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