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【復興予算流用問題】被災地に配慮、返還要請決定 参院選を直前に控え 突然の要請に戸惑いも 


復興予算から自治体基金への流れ
 東日本大震災の復興予算が被災地再生と懸け離れた事業に使われた問題で、政府は自治体や公益法人の基金約1千億円の返還要請を決めた。参院選を直前に控え、被災地や世論の反発に配慮した格好だが、配分を受けた自治体からは戸惑いの声も上がる。

 ▽流用発覚

 民主党政権時代の昨秋、復興予算が、反捕鯨団体の調査捕鯨妨害対策や中央官庁の庁舎耐震改修に流用された問題が発覚。その後政府は各省庁の事業をチェックし、35事業の168億円分を「被災地と関連が薄い」として凍結した。ただ、自治体や公益法人に配分した基金は既に国の管理を離れていたため、凍結の対象外となった。

 5月には基金でも全国の森林整備など被災地と関連が薄い事業に使われていたことが明るみに。 復興庁は当初「予算を一方的に引きはがせば、自治体の反発を招く」として、返還請求には及び腰だった。

 一方、財務省は、復興財源として所得税や住民税の臨時増税といった国民負担を求めていることを重視。5月以降、復興予算の使途の精査を本格化させた。

 「しゃくし定規の対応ではまずい。取り戻せるものは取り戻す」(財務省幹部)と返還請求を決断。被災地以外のイベントや原発停止に伴う火力発電の支援などに支出していた実態も次々と明らかになったことで、復興庁サイドも「批判が続けば、復興事業全体への信頼が再び揺らぎかねない」と懸念し、財務省に同調した。

 ▽思惑

 被災地復興は安倍政権の最重要課題の一つ。復興事業を加速させるだけでなく、復興予算の信頼性を高めることが必要だった。

 菅義偉官房長官は2日の記者会見で「復興予算が被災地以外へ向けられたのは遺憾だ。(自治体側に)厳しく対応していきたい」と表明した。

 被災地の自治体は「国は本当に被災地に目を向けているのかという憤りを感じていた。勇気ある決断で、少しはわれわれの気持ちもすっきりする」( 野田武則・岩手県釜石市長)と政府の対応を歓迎した。

 ただ、菅氏は「(流用問題は)民主党政権下で編成された予算で発生した。自公政権ではそういう問題が一切生じないよう予算措置を行っている」とも強調。前政権の失政と印象付け、4日に公示が迫った参院選に「さらなる弾みをつけたい」(政府関係者)との思惑も透けて見える。

 ▽返還余地なく

 基金は自治体や公益法人が複数年度にわたって使用できる仕組み。多くの自治体では中長期の事業計画を立てており、積立金が残っていても返還の余地はほとんどないのが実態だ。

 鳥取県は2012年度、厚生労働省から配分された「緊急雇用創出事業臨時特例基金」のうち約4300万円を、ご当地アイドル「バードプリンセス」の活動費に充てたとして議会から批判を浴びた。

 同基金は鳥取県に総額21億3千万円が配分され、12年度末時点で約4億円が残っているが、県は13年度予算に大半を計上している。

 担当者は「返還できるのはごくわずかだ。予算計上した分まで返すとなれば、既に動き始めている事業を中止しなければならない」と困り顔で話した。

(共同通信)

2013/07/03 11:23

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