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マンガでゼミナール 分かりやすく、そして面白く伝えることに全力投球している、漫画家ならではの時点で

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男子以上にハングリー  「ライスショルダー」なかいま強さん 09.21

 身長193センチ、体重92キロのヘビー級女子プロボクサー秋野おこめが世界の強豪と死闘を繰り広げる「ライスショルダー」の作者なかいま強さんに、日本の女子ボクシングへのエールを語ってもらった。

男子以上にハングリー  「ライスショルダー」なかいま強さん

「ライスショルダー」単行本の表紙

男子以上にハングリー  「ライスショルダー」なかいま強さん

©なかいま強/講談社

なかいま強さん自画像

男子以上にハングリー  「ライスショルダー」なかいま強さん

©なかいま強/講談社

壮絶なKOシーン

なるほど

 漫画家になったきっかけは中学生のころに読んだ「あしたのジョー」。ジョーを超えるボクシング漫画を描きたいと思っていました。


 連載のために女子ボクシングの取材を始めると、パワーのなさが興行として難しい部分だと気付きました。ボクシングの最大の魅力であるKО(ノックアウト)の試合がほとんどない。面白く見せるにはパワーがほしい。あえてリアリティーを無視して、世界にもほとんどいないヘビー級を舞台に、男子ボクシングよりも壮絶なKОシーンの表現に挑戦しています。

 選手たちの熱さ、ハングリーさは男子以上。「ビッグになりたい!」とか恥ずかしげもなく言っちゃう。男子では描けないようなまっすぐなせりふも書けるので、物語を作るのにぴったりだと思いました。


 プロとアマチュアの違いはあるけど、お笑いタレントのしずちゃん(山崎静代)の登場で、女子ボクシングが注目されたのはいいこと。パンチ力もないし、動きもにぶいけど、一生懸命さが伝わるじゃないですか。彼女たちはパンチ力ではなく、気持ちの強さで決着をつけているんだと感じました。


 何人も世界チャンピオンが出ているけど、みんなアルバイトをしています。好きじゃなきゃやってられない。富や名声のためじゃないんです。

 活性化のためにはスターが必要です。まじめな選手が多いけれど「私はやりたいことをやる」といった、いい意味でわがままな選手たちが集まって、個性のぶつかり合いを見せてほしい。

 周りの人は振り回されて大変だけど、遠巻きで見ているとものすごく楽しい。人がお金を払ってでも見たいのはそういう選手だよね。ちなみに漫画の中の選手はそんな人ばかりです。

 

なかいま強さん略歴

 なかいま・つよし 60年沖縄県生まれ。84年に「わたるがぴゅん!」でデビュー。「うっちゃれ五所瓦」「黄金のラフ~草太のスタンス~」など、数多くのスポーツ漫画を発表。「ライスショルダー」では女性主人公に初挑戦。

 

プロボクサーになるには

 ボクシングの動きをエクササイズに取り入れた「ボクササイズ」では飽き足らない女性たちがジムの門をたたき、1990年代後半になると、日本の女子ボクシングは独自の団体を立ち上げて興行と試合を行うまでになった。


 日本ボクシングコミッション(JBC)は、2008年に女子ボクシングを認可しライセンスの発行を始めた。現役の女子プロボクサーは100人前後。これまでに7人の世界チャンピオンを輩出している。

 プロボクサーになるには新人テストを受けなければならない。受験資格は、各地区のボクシング協会加盟ジムに所属する17~32歳の男女。

 

取材こぼれ話

 沖縄県内の仕事場で、ユーモアを交えながらインタビューに答えてくれたなかいまさん。突如真剣な表情で「(掲載紙)モーニングで、人気・実力作家の方々と並んで『漫画家』と呼ばれるのはなんとも申し訳ないような気持ち」と、驚きの発言をする場面がありました。

 続けて力を込めて「絵やストーリーが特別優れているわけではないけれど、おもしろいキャラクター作りでは、絶対に誰にも負けないつもりだ」と、30年間、一線で戦い続けてきた矜持を語ってくれました。

 主役はもちろん、敵役、脇役から観客席まで、人間的魅力にあふれた「なかいまワールド」を是非体験してみてください!(近藤誠)

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