2003年/平成15年 美術界年史indexへ

2003年/平成15年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

1月

・「大日蓮展」開催 立教開宗750年を記念して、日蓮諸宗の寺院に伝わる美術品等によって構成された展覧会が、1月15日より東京国立博物館で開催された。内容は、「第一章 日蓮聖人とその門弟」、「第二章 法華経の美術」、「第三章 外護者と信者」、「第四章 法華文化の精粋」の4部によって構成され、160件余の美術品等が出品され、これまであまり顧みられなかったこの宗門にまつわる中世から近世にわたる美術、文化を総合的に検証する展覧となった。(会期、2月23日まで。)

      

2月

・「ダンス! 20世紀初頭の美術と舞踏」展開催 バレエ・リュス、ノイエ・タンツなど、海外から紹介された新しい舞踏は、同時に新しい視覚的な身体イメージとして美術の分野にも少なからず影響を与えた。これを検証しようとする展覧会が、2月9日より栃木県立美術館で開催された。舞踏と美術の関係を顧みた企画としてユニークなものであり、内容は、「① 1910-20年代の美術家と舞踏」、「② 村山知義とニディー・インペコーフェン」、「③ 『シトゥルム木版画展覧会』と斉藤佳三の舞台美術」、「④ 久米民十郎と伊藤道郎の『鷹の井戸』」、「⑤石井漠と写真家たち」、「⑥ 1930年代-高田せい子と崔承喜」の6部によって構成され、油彩、水彩、素描、版画、写真等253点が出品されていた。(会期、3月23日まで。)

・第10回VOCA賞受賞者決定 具象、抽象の区別なく、絵画、平面表現に取り組む40歳以下の作家を対象とした「VOCA展2003」(同展実行委員会、財団法人日本美術協会、上野の森美術館主催)の最高賞であるVOCA賞は、津上みゆきの「View,Sep―Nov,02」に決定した。奨励賞には、岩城直美、大谷有花、小野博、中ザワヒデキが選ばれた。なお展覧会は、3月14日から30日まで上野の森美術館で開催された。

・文化庁予算決まる 平成15年度の文化庁予算は、前年度比1.9%増の133,300万円にすることが決まった。新規事業では、「文化交流使の派遣」、「ITによる国内外への発信」、「文化ボランティア活動推進事業」などが盛り込まれた。

      

3月

・芸術選奨受賞者決定 芸術の分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、3月7日文化庁より発表された。美術関係では、彫刻家若林奮(67)(展覧会「若林奮展」)、美術史家榊原悟(54)(著作「美の架け橋-異国に遣わされた屏風たち」)が文部科学大臣賞、また建築家遠藤秀平(43)(建築「筑紫の丘斎場」)が文部科学大臣新人賞を受賞した。贈呈式は、3月13日に東京都内のホテルで行われた。

・ 国宝の答申 文化審議会(高階秀爾会長)は、3月20日、藤原定家自選歌集「拾遺愚草」上中下、自筆本(冷泉家時雨亭文庫)を国宝にするよう、遠山敦子文部科学大臣に答申した。また、葛飾北斎筆「紙本墨画日新除魔図」(坂本安子)、鏑木清方筆「三遊亭円朝像」(東京国立近代美術館)、藤島武二筆「天平の面影」(石橋財団石橋美術館)、関根正二筆「信仰の悲しみ」(大原美術館)、小出楢重筆「Nの家族」(大原美術館)など、45件を重要文化財に指定するように答申した。あわせて近代建造物の保護を目的とした登録有形文化財(建造物)として、157件を登録するように求めた。

・第75回アカデミー賞長編アニメ部門賞受賞 宮崎駿監督のアニメーション映画「千と千尋の神隠し」が、長編アニメ部門賞を受賞したことが、3月23日に発表された。

・出光美術館(大阪)閉館 大阪市中央区にある出光美術館が、運営の母体である出光興産のリストラ策の一環から、3月23日をもって閉館した。同美術館は、大阪心斎橋の出光興産ビルの13階に設けられた施設で、平成元年11月に開館、これまでに72回の展覧会を開催してきた。

・第10回日本文化芸術振興賞受賞者決定 日本の伝統文化や現代芸術の分野での優秀な人材の顕彰と育成を目的にした同賞(財団法人日本文化芸術財団主催)の第10回の受賞者が決定した。同賞の日本現代芸術振興賞には、荒川修作(67)とマドリン・ギンズ(62)、奨励賞には和紙デザイナー堀木エリ子(41)が選ばれた。3月24日、授賞式が元赤坂の明治記念館で行なわれた。

・「西本願寺」展開催 浄土真宗の宗祖親鸞の木造を安置した西本願寺御影堂の修復工事事業を記念した展覧会が、3月25日より東京国立博物館で開催された。内容は、「一 飛雲閣と諸殿の障壁画」、「二 親鸞聖人の肖像と筆跡」、「三 親鸞聖人の生涯と信仰」、「四 本願寺の草創と歴史」、「五 東国の真宗文化」、「六 名筆と唐物」、「七 本願寺本三十六人家集」、「八 慕帰絵」、「九 御影堂の修復」の9部からなり、国宝「親鸞聖人影像(鏡御影)」、「本願寺本三十六人家集」を含む、同寺所蔵の文化財120件余を、一同に東京において紹介する初めての機会となった。(会期、5月5日まで。)

・青木繁と近代日本のロマンティシズム展開催 青木繁の芸術を今日的な視点から回顧しようとした展覧会が、3月25日より東京国立近代美術館で開催された。内容は、「Ⅰ.神話的渾沌から」、「Ⅱ.海のフォークロア」、「Ⅲ.生命礼賛」、「Ⅳ.恋愛あるいは永遠の女性」、「Ⅴ.古代の発見」、「Ⅵ.望郷あるいは晩帰」の6章からなり、青木繁の芸術が投げかけた問題を共有するかとおもわれる、万鉄五郎、村上華岳など近代日本の作家19人の作品もあわせて展示され、近代日本の底流を問い直そうとする意欲的な試みとなった。(会期、5月11日まで。以後、石橋財団石橋美術館に巡回。)

・日本芸術院賞受賞者決定 日本芸術院(犬丸直院長)は、3月28日、芸術の分野で顕著な功績のあった人に贈る平成14年度の日本芸術院賞受賞者を決定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には、日本画家岩倉寿(66)(日展出品作「南の窓」に対して)、洋画家塗師祥一郎(70)(日展出品作「春を待つ山間」に対して)、彫刻家澄川喜一(71)(新制作展出品作「そりのあるかたち2002」に対して)、工芸家大角勲(62)(日展出品作「天地守道(生)」に対して)、書家井茂圭洞(66)(日展出品作「清流」に対して)、建築家栗生明(55)(平等院宝物館の建築設計に対して)が選ばれた。授賞式は、6月2日に東京・上野の日本芸術院会館で行なわれた。

      

4月

・「空海と高野山」展開催 弘法大師空海が、入唐留学して1,200年を記念して、金剛峯寺をはじめ高野山内の諸寺の文化財を展示する展覧会が、京都国立博物館で4月15日より開催された。内容は、「第一章 空海と高野山の歴史」、「第二章 空海の思想と密教のかたち」、「第三章 信仰の重なりとその美術」、「第四章 山の正倉院」、「第五章 近世の高野山」の5部から構成されていた。出品されたのは国宝21件、重要文化財103件を中心とする160件であり、真言密教の霊場高野山の古代から近世美術までの全容を紹介する機会となった。(会期は、5月25日まで、以後愛知県美術館、東京国立博物館、和歌山県立博物館を巡回。)

・第28回木村伊兵衛賞受賞者決定 故木村伊兵衛の業績を記念して朝日新聞社が、昭和50年に創設した同賞は、オノデラユキ写真集『カメラキメラ』(水声社)、佐内正史写真集『MAP』(佐内正史事務所)の2氏に決定した。授賞式は、4月17日に行い、受賞作品展を4月15日よりミノルタフォトスペース新宿で開催した。

・建造物の重要文化財指定の答申 文化審議会(高階秀爾会長)は、3月18日、「東京駅丸ノ内本屋」(東京都千代田区)など8件の建造物を重要文化財に指定するように遠山敦子文部科学大臣に答申した。これにより、建造物の重要文化財は、2,238件・3,806棟(国宝を含む)となった。

・第40回記念朝日陶芸展開催 陶芸の公募展である同展覧会が、4月19日より目黒区美術館で開催された。659点の応募から入賞10点と入選99点が選ばれ、グランプリには泉田之也(36)「溝」、40回記念賞には金正逸(37)「かなたへと向かっていくかたち-Ⅱ」が選ばれた。(会期、6月15日まで。以後、陶芸メッセ・益子を巡回。)

・第22回土門拳賞受賞者決定 昨年一年間に作品を発表したプロ、アマを問わない写真家を対象とする同賞(毎日新聞社主催)の第22回の受賞者に、『写真記録パレスチナ』(日本図書センター)を出版した広河隆一(60)が決定した。同賞受賞作品展が、銀座ニコンサロンで4月28日から5月17日まで開催された。

・春の褒章受章者 政府は春の褒章の受章者810人を4月28日付けで発表した。美術関係の紫綬褒章受章者は、絵本作家佐野洋子(64)、版画家野田哲也(63)、漆芸作家山口松太(63)。

      

5月

・史跡・名勝の指定と登録有形文化財 文化審議会(高階秀爾会長)は、5月16日、12件の史跡、名勝の指定と、「十和田ホテル本館」(秋田県小坂町)など148件の建造物を登録有形文化財とするよう、遠山敦子文部科学大臣に答申した。

      

6月

・「鎌倉-禅の源流」展開催 建長寺創建750年を記念して、同寺をはじめ鎌倉を中心とした禅宗文化を紹介する展覧会が、6月3日より東京国立博物館で開催された。内容は、「第一章 鎌倉武士と禅」、「第二章 中国との往来」、「第三章 鎌倉ゆかりの絵画」、「第四章 中国風文化の隆盛」の4部からなり、茶道、能、生花などの芸術に洗練されていった京都の禅文化とは異なり、禅宗の源流の地である鎌倉の寺院内で継承されてきた文化財150件余が展覧された。(会期、7月13日まで。)

・「地平線の夢-昭和10年代の幻想絵画」 地平線をキーワードとして、時代の閉塞感を背景に理想郷への憧憬を表現した作品によって構成された展覧会が、6月3日より東京国立近代美術館で開催された。内容は、「第1章 物語る絵画」、「第2章 古代への憧憬」、「第3章 大陸の蜃気楼」、「第4章 画学生たちの心象風景」の4部からなり、79点が出品され、これまで同時代の「幻想絵画」をシュルレアリスムの影響のみで語ろうとしていたことに対して、異なった切り口をみせ、新鮮な印象をあたえた展示となった。(会期、7月21日まで。)

・人間国宝指定 文化審議会(高階秀爾会長)は6月20日、10人を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するように遠山敦子文部科学大臣に答申した。「工芸技術の部」では、無名異焼の五代伊藤赤水(61、本名伊藤窯一)、献上博多織の小川規三郎(66)、木工芸の村山明(59)、竹工芸の五代早川尚古斎(71、本名早川修平)が選ばれた。これにより、現在の人間国宝は、116人となった。

第33回中原悌二郎賞受賞者決定 彫刻家中原悌二郎を記念した同賞(北海道旭川市主催)の受賞者に、舟越桂(52)「水の山」が決定した。また優秀賞には、青木野枝(44)「玉鋼-Ⅲ」、多和圭三(51)「沼」が選ばれた。授賞式は、10月4日に同市内で行なわれた。

      

7月

・新潟県立万代島美術館開館 7月12日、新潟県新潟市に同美術館が開館した。信濃川河口に建設された31階建ての複合ビル「万代島ビル」の5階に、展示室1,400平方メートルの施設として設けられた。新潟県立近代美術館(長岡市)の分館として、収蔵品を共有しながら、おもに1945年以降の作品を企画展示していくことになった。開館記念展は、国内作家11人の作品によって構成された「絵画の現在」が開催された。(会期、8月17日まで。)

・「もうひとつの明治美術」展開催 明治期の洋画の再検討を促す試みの展覧会が、7月19日より静岡県立美術館で開催された。副題に「明治美術会から太平洋画会へ」とあるように、これまで黒田清輝が指導する東京美術学校西洋画科とは異なる明治洋画の系譜をたどろうとするもので、内容は「第1章 明治洋画の胎動」、「第2章 明治美術会の創立」、「第3章 太平洋画会の創立と展開」、「第4章 水彩画の時代」、「第5章 日本近代彫刻と太平洋画会」の5部からなり、資料を含め250点余が出品されていた。(会期、8月24日まで。以後、府中市美術館、長野県信濃美術館、岡山県立美術館を巡回。)

第2回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003開催 新潟県十日町市を中心とする6市町村で、7月20日より同展が開催された。今回は、152人の作家が選出され、公募の5人を加えた157人が出品した。「人間は自然に内包される」という基本理念のもと、地域と自然と人間の調和を目指した作品が数多く出品された。(会期、9月7日まで。)

      

8月

・第11回本郷新賞受賞者決定 過去2年間に公共空間・建築に設置された彫刻から選ぶ第11回の同賞(財団法人札幌彫刻美術館主催)が、土屋公雄(48)「時の知層」(大阪府和泉市・和泉シティプラザのエントランス広場に設置)に決定した。8月29日に同美術館で贈呈式が行なわれ、30日より受賞記念「土屋公雄彫刻展」が、10月13日まで同美術館で開催された。

      

9月

・「円山応挙 <写生画>創造への挑戦」展開催 円山応挙の芸術を初期作品から晩年の作品まで網羅した展覧会が、9月13日より大阪市立美術館で開催された。内容は、「実の写生」、「気の写生」、「虚の写生」、「虚実一体空間」、「伝統描法による作品・からくりのある絵・資料」の5部からなり、国宝「雪松図」、重要文化財14件を含む120件が出品され、円山応挙の「写生」の意味と表現を今日的な視点から再検討する展覧となった。(会期、10月26日まで、以後福島県立美術館、江戸東京博物館を巡回。)

・登録有形文化財の答申 文化審議会(高階秀爾会長)は、9月19日、明治村北里研究所本館(大正4年建築、愛知県犬山市)をはじめとする建造物134件を登録有形文化財にするよう、遠山敦子文部科学大臣に答申した。これにより建造物の登録有形文化財は、累計3,729件となった。

・ 第21回平櫛田中賞受賞者決定 彫刻家平櫛田中の百寿を記念して、国内の彫刻界の振興を目的に設立された同賞(岡山県井原市主催)の第21回の受賞者に、籔内佐斗司(50)が決定した。9月25日、東京で授賞式が行なわれ、9月24日から30日まで日本橋高島屋で受賞記念展が開催された。

      

10月

・「肉体のシュルレアリスム 舞踏家土方巽抄」展開催 現代舞踏のなかでユニークな位置を占め、舞踏界のみならず同時代の美術家、写真家、文学者等に刺激を与えつづけた土方巽(1928~1986)の残したドキュメントを展示した展覧会が、10月11日より川崎市岡本太郎美術館で開催された。会場では、土方と関連した美術作品とともに、写真、自筆原稿、舞踏譜、舞台美術、ポスター、資料等が展示され、あわせて当時の映像とともに、舞踏の公開レッスンやパフォーマンスが上演され、「舞踏」創造の跡を検証しようと試みられた。(会期、平成16年1月12日まで。)

・ 神奈川県立近代美術館・葉山館開館 10月11日、神奈川県立近代美術館の本館となる葉山館が開館した。施設は、地上2階、地下2階、延床面積は7,111平方メートル、4室ある展示室の総面積は1,297平方メートル。鎌倉館にはなかった図書室、講堂、ミュージアムショップ、レストラン等が設けられた。民間の資金、経営ノウハウを活用することを目的に、国内の美術館としては初めてPFI(プライヴェート・ファイナンス・イニシアチブ)方式がとられ、施設の建設、維持管理、運営など事業に民間会社があたった。開館記念展は、収蔵品170点で構成された「もうひとつの現代」展が開催された。(会期、平成16年1月25日まで。)。

・「浮世絵 大武者絵展」開催 浮世絵版画における近世初期から明治期までの武者絵に焦点をあて、その展開をたどろうとする展覧会が、10月11日から町田市立国際版画美術館にて開催された。内容は、「第一部 浮世絵武者絵の流れ」、「第二部 太閤記の世界」の2部構成で、特に第一部では、元禄時代の墨摺り浮世絵から明治期までの武者絵360余点によって回顧しており、初めての試みとして注目された。また第二部でも江戸時代には禁制であった「太閤記」を主題にしながら、その表現の変容を80余点の作品によってたどろうとする意欲的な試みであった。(会期、11月24日まで。)なお、同年4月8日から、「武者絵 江戸の英雄大図鑑」展が渋谷区立松濤美術館で開催され、同展は、義経、弁慶、曽我兄弟等を題材にした武者絵、錦絵、絵馬、凧絵などによって構成され、同じテーマながら前記展覧会とは異なった試みをしていた。(会期、5月18日まで。)

・建造物の重要文化財指定 文化審議会(高階秀爾会長)は、10月17日、旧日光田母沢御用邸(栃木県日光市)をはじめ14件を重要文化財に指定するよう河村建夫文部科学大臣に答申した。これにより、国宝を含む建造物の重要文化財は2,250件(3,844棟)となった。

森美術館開館 東京都港区の複合総合施設六本木ヒルズ内に、同美術館が、10月18日に開館した。美術館は、53階建ての高層ビルの52、53階に設けられ、総床面積7,284平方メートル、ギャラリー総面積2,875平方メートル。開館記念展として、「ハピネス:アートにみる幸福への鍵」展を開催した。(会期、平成16年1月18日まで。)

・第13回吉田秀和賞受賞者決定 芸術の評論を対象にした第13回の同賞(吉田秀和芸術振興基金主催)の受賞者が、10月21日に岡田温司『モランディとその時代』(人文書院)に決定した。授賞式は、11月22日、水戸市の水戸芸術館で行なわれた。

・第15回世界文化賞 世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(総裁、常陸宮殿下、日本美術協会主催)の第15回授賞式が、10月23日、東京、元赤坂の明治記念館で行なわれた。美術関係の受賞者は、絵画部門ではブリジット・ライリー(72、イギリス)、彫刻部門ではマリオ・メルツ(78、イタリア)、建築部門ではレム・コールハーツ(58、オランダ)が選ばれた。

・第15回国華賞受賞者決定 日本及び東洋の美術をテーマにした研究論文を対象に創設された同賞(同賞顕彰基金主催)受賞者が公表された。國華賞には、安藤佳香『仏教荘厳の研究-グプタ式唐草の東伝-』(中央公論美術出版)が、同奨励賞には、猪熊兼樹「春日大社蔵『沃懸地螺鈿毛抜形太刀』の意匠に関する考察」(『仏教芸術』266号、平成15年1月)が選ばれた。贈呈式が、10月23日に朝日新聞社東京本社で開催された。

・文化勲章、文化功労者決定 政府は、10月28日、平成15年度の文化勲章受章者5人と文化功労者15人を発表した。美術関係では、日本画家加山又造(76)が文化勲章を受章。また、建築家安藤忠雄(62)、写真家田沼武能(74)が文化功労者に選ばれた。

      

11月

・秋の褒章受章者 政府は、11月2日付けで秋の褒章受章者846人と5団体を発表した。美術関係では、紫綬褒章に、版画家中林忠良(66)、劇画家さいとう・たかを(67、本名斎藤隆夫)、写真家富山治夫(68)、木工芸作家中川清司(61)、美術家荒川修作(67)美術史家若桑みどり(67)が選ばれた。

・第25回サントリー学芸賞受賞者決定 サントリー文化財団主催の同賞の受賞者が、11月6日に発表された。「芸術・文学部門」では、飯島洋一(多摩美術大学助教授)『現代建築・アウシュヴィッツ以後』(青土社)、宮崎法子(実践女子大学教授)『花鳥・山水画を読み解く-中国絵画の意味』(角川書店)が選出された。贈呈式は、12月10日、東京・丸の内の東京会館で行なわれた。

・「大見世物」展開催 江戸時代後期から明治初期にかけて、浅草をはじめとする庶民の盛り場において、興行としておこなわれた見世物を見なおそうとするユニークな展覧会が、11月1日からたばこと塩の博物館で開催された。内容は、「浅草と両国-見世物の空間」、「籠細工」、「生人形」、「菊細工」、「細工見世物の世界」、「軽業・曲芸」、「動物見世物」等、刷り物だけではなく、一部その再現をしながら展示し、260余点によって幅広く当時の庶民文化を検証する試みとなった。(会期、12月14日まで。)

・登録有形文化財の答申 文化審議会(高階秀爾会長)は、11月21日、明治村帝国ホテル中央玄関(愛知県犬山市)をはじめとする170件の建造物を登録有形文化財に新たに登録するよう、河村健夫文部科学大臣に答申した。これにより登録累計は、3,899件となった。

・第24回ジャポニスム学会賞受賞者決定 ジャポニスム学会(高階秀爾会長)は、第24回の同会賞を美術史家松村恵理『壁紙のジャポニスム』(思文閣出版)に決定した。授賞式は、11月22日、東京・恵比寿の東京都写真美術館で行なわれた。

・第9回重森弘淹写真評論賞受賞者決定 国内で唯一の写真評論賞で、写真評論家重森弘淹の業績を称えて設立された同賞(重森弘淹顕彰会)の第9回の受賞者に、今橋映子『<パリ写真>の世紀』(白水社)が決定した。授賞式は、11月23日、東京綜合写真専門学校で行なわれた。

      

12月

・日本芸術院新会員決定 日本芸術院(犬丸直院長)は、12月1日、新会員9人を発表した。第一部(美術)では、洋画家塗師祥一郎(71)、陶芸家今井政之(72)。現在の定員120人に対して、今回の補充により会員数は112人となった。

・日本学士院新会員決定 日本学士院(長倉三郎院長)は、12月12日、会員の補充選挙を行ない新会員6人を選定したことを発表した。会員は学術上優れた業績を上げた研究者が選ばれ、第一部人文科学では、狩野派障屏画の独創的研究による成果を上げた美術史家武田恒夫(78)が選出された。今回の補充で、会員は139人(定員150人)となった。

・第15回倫雅美術奨励賞受賞者決定 新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(同基金主催)の第15回目の受章者が決定した。「美術評論部門」では、小沢節子『「原爆の図」描かれた<記憶>、語られた<絵>』(岩波書店)、「美術史研究部門」では木村理恵子(栃木県立美術館)「ダンス!20世紀初頭の美術と舞踏」展の企画及びカタログ内の論文が対象となった。授賞式は、12月1日、東京・赤坂プリンスホテルで行なわれた。

      

美術界年史indexへ