2005年11月号/ながいのりあき先生
今月は、あさだみほ先生からのご紹介で、ながいのりあき先生を訪問しました。
サッカーブームのきっかけとなった『がんばれ!キッカーズ』、そして人間の生き様を巧みに描いた『男たちの好日』など、児童漫画から青年漫画まで幅広く手がけ、現在ホーム社、『その時歴史が動いた』にて健筆を奮っています。
気になるマンガや作家
▼ご出身は…?
島根県です。大学に合格したのを機に上京しました。▼子どものころから漫画が好きだったのですか?
よく「週刊少年ジャンプ」を読んでいました。好きな先生は、ちばてつや、ちばあきお両先生です。感動しましたよ。でも漫画家の道に進むなんて思ってもいませんでしたね。。▼漫画を描き始めたのはいつですか?
興味本位では描いていましたが、とても人に見せられたもんじゃないですよ。だから大学では、スポーツ部に入ろうとしたんですが、どういうわけか、漫画研究会に入ってしまったんです。もともと漫画は好きだったので、何作か描くと友達が「プロになったほうがいいよ!」と言ってくれたんですが、卒業後は一般会社に就職をしました。。▼いつからプロの道へ?
漫研の後輩が漫画誌に載ったんですよ。それを見て「僕も描きたい」って思い立ち、すぐに3年勤めた会社を辞めたんです。何の保証もないのに何か心がかき立てられたんですね。生活も苦しかったんですが、何回も出版社に持ち込んで、やっと27歳のときに小学館の「藤子不二雄賞」を受賞したんです。うれしかったですね。やっと少しだけ光が見えました。後戻りができなくて、必死に描いた時期です。▼デビュー後は順調でしたか?
そんな甘いもんじゃありませんでした。当時はギャグ漫画を描いていましたが、編集者には「向かないんじゃないか」って言われてね…。あせりましたよ。そんなときに当時『ゲームセンターあらし』のすがやみつる先生が、僕の受賞作を見ていたらしく、「アシスタントをしてみないか」と声をかけてくれたんです。僕も児童漫画の描き方に行き詰っていたときでしたから、何かつかめるんじゃないかと思って行くことにしました。▼成果はいかがでしたか?
アシスタント軍団がすごくて圧倒されました。『ゼロヨンQ太』を描いた池田淳一先生とかもアシスタントでいましたからね…。自分の未熟さを感じさせられました。絵が下手だったんで「やっぱプロ漫画は絵だなー」って思ったんだけど、すがや先生からは「そうじゃない。ストーリーの問題だ」って教え込まれたんです。本当に勉強になりました。今でも、その当時に叩き込まれたことが随分と活きています。すがや先生は僕にとっては今でも師匠です。▼『がんばれ!キッカーズ』の連載が始まったのはいつからですか?
『あらし』が終って1か月後くらいに「コロコロ」編集部で、当時の人気漫画『キャプテン翼』(高橋陽一・作)のような「サッカーものをやろう」ということになって、なぜか僕が描くことになったんです。でもサッカーなんかルールも良く知らなかったんで、正直困りました。とにかくどのように話を作ったらいいか、わからないんですよ。悩んだ挙句に僕がお手本にしたのは、高校時代に好きだった、ちばあきお先生の『キャプテン』だったんです。「負けて当たり前、負けても何かをつかむ、スーパープレーはいらない」、そんな内容のサッカー漫画を作ろうと思ったんです。おかげ様で反応がよく、30歳前で初めての連載で「小学館漫画賞」を受賞し、初めての単行本、アニメ化…一気に波が来たって感じです。4年半くらい続きましたかね。▼その後、青年誌に連載することになりますが、きっかけは?
仕事がまったくないときがあったんです。おまけに大病になったりしたので、不安が一気にきたんです。妻子もいるし何とかしなきゃと、あせりました。けど最終的に「僕には漫画しかない。なんでも描いてやる!」って決めたんです。それからですよ。仕事もないのにがむしゃらに絵コンテを描き始めたんです。出版社に持っていったら反応がよくて、また少しずつ仕事が入ってくるようになりました。そんなときタイミングよく創刊された青年誌「コミックバンチ」と縁があり、編集部企画の『男たちの好日』の連載となったんです。気合入りましたね。読者の反応が少しずつ良くなって「よし、いけるぞ!」って思いました。▼漫画家としての方針・スタイルが決まった感じですか?
そうかもしれません。連載が終った後にファンから「続けてくれ」って、「連載再開の要望書」がたくさん届いて、それ読んでたら、泣けちゃいました。ここまで僕を支えてくれたのはファンのおかげなんです。「自分の描き方は間違っていなかった」ってすごく勇気づけられました。…漫画を描くのには自信と、「このキャラはこう考え、読者もそう思うだろう」みたいなバランス感覚が必要だと思うんです。僕は自分の中にそれがないと漫画は描けないと思っていますし、それを大切にしています。届いた要望書は僕の宝です。今でも落ち込んだときに読んで自分を叱咤激励して描いています。ファンに与えてもらった自信はファンに返さなくていけませんからね…。▼読者年齢層が幅広いですね?
別に抵抗なく楽しく描いています。特に歴史物が好きですから、人物は興味深いし、いろいろ教わることがあります。今後もジャンルを問わず描いて行きたいです。暇なときは絵コンテをたくさん描いていますよ。出版社から依頼されたときにすぐに出せるようにしたいんです。とにかく1日1日が貴重ですから、今後もアタック精神は忘れません。▼漫画家を目指している方々にメッセージをお願いします。
とにかく、がんばってください。自信を持って!▼次の先生を紹介してください。
三浦みつる先生を紹介します。