[ライフ]ニュース
【次代への名言】シネマの天使編(25)
2011.3.17 03:11
■「アメリカの日本への首締めは如実に働いていたから、次第に「敵」と思い始めていた事は事実である」(池部良『風が吹いたら』)
《日本から見ればアメリカって奴(やつ)は意地の悪い嫌な国だと思うが、アメリカにしてみれば彼らにもそうせざるを得ない理由はあったろう(中略)だから、この戦争を始める直前に為政者は明確な論理の下に目的を示してくれれば、僕はもっと無心な気持で戦いの庭に出ただろう》
冒頭は、右のように続いている。池部良さんは昭和17(1942)年2月に召集され、4年半後に帰還した。それから約30年後に書かれたエッセーの一節だ。
池部さんは終戦から15年後に書いた別のエッセーで、戦争への批判は《大変あったのである》としながら、こう文章を継いでいる。《ところが、《戦いの庭》なる場所に引き出されてから、その批判はさておいて、もしぼくの力が「日本帝国」を救い、あるいは前進させることができるのなら、微力ではありますが、お役に立たせていただきますと広言し宣言して、戦争がりっぱに遂行されるのを希望したものである》
これこそが、当時の多くの日本人の、偽らざる心情であり、潔さと強さ、そして美しさだった、と思う。
入隊した池部初年兵は中国・山東省に配備された。「お前俳優だってナ、そうかい、そうかい、寿司(すし)食いねエ」と歓待されることもあったが、「顎(あご)も鼻も、腕の骨も折れてるんじゃねえのかな」というほどの“しごき”に遭うことも、あった。(文化部編集委員 関厚夫)
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