国立駅から一橋大学に向かって延びる、“大学通り”。桜の名所として知られるこの大通りから一本入った場所に、静かなレストランが佇む。こぢんまりとした中庭には木蓮の木が植えられ、緑がいっぱい。細やかなサービスを受けながら、ゆったりとイタリア料理が楽しめる。そんな、国立らしさに満ちた店だ。
『国立 文流』が誕生したのは、1996年のこと。本店は『高田馬場 文流』で、1973年の創業だ。文流には、イタリア料理がまだ珍しかった創業当時から受け継がれている、2つの人気メニューがある。ひとつはピザ生地で作られた「丸パン」で、もうひとつが「海の幸ときのこのスパゲッティ」。ホタテやイカなど海鮮たっぷりで、ソースは塩、トマト、トマトクリームの3種類から選択可。魚介の香りと旨みが十分に引き出されており、シンプルながら飽きのこない一品だ。
伝統的なトスカーナ料理が中心だが、地元の農家から直接取り寄せた地野菜を使ったメニューも登場。ときにはメインディッシュの付け合せとして、ときにはその日だけのスペシャルメニューとして、積極的に利用されている。料理の地域性や固有性を大切にするスローフードの精神を、身近に感じることができるだろう。
毎月第1・3金曜のディナータイムには、カンツォーネも楽しめる。ステージは設けず、ギターを抱えたカンタンテ(歌い手)が各テーブルをまわる、気さくなスタイル。ナポリ民謡やローマ民謡、イタリアンポップスはもちろん、好きな曲のリクエストも受け付けている。さらに、年に数回はシャンソンのライブも実施。コース料理を食べながら上質の音楽に耳を傾ける、特別な夜が用意されている。
ランチタイムには、10種類から選べるパスタにサラダ、ドリンクなどが付いたコストパフォーマンスの高いセット(980円~)を求めて地元のマダムや家族連れが集う。都会から少し離れた場所にあるためか、昼も夜も肩の凝らないリラックスできる雰囲気。ふだん使いの店として、気軽に利用したい。
取材・文/渡辺裕希子 写真/関根則夫
1. 白い壁に囲まれ、絵画が飾られたシンプルな内装。大きな窓からは暖かな日差しが差し込み、穏やかな時間が流れる。
2. イタリア直輸入のワインなど、赤・白それぞれ10種類ずつを用意。ソムリエの資格を持つ店長に、おすすめを聞いてみるのもいいだろう。
3. 花瓶や食器などの小物にも、イタリアの香りが漂う。店名の『文流』は、イタリアと日本の文化交流を願って名づけられた。
4. 天気のいい日には、オープンテラスの席が人気。毎年春になると、モクレンが見事な花を咲かせる。
5. 『海の幸ときのこのスパゲッティ』1300円は、ランチセット(980円~)でも選択可。素朴な『丸パン』(100円)との相性も抜群だ。ワインはグラスで600円~。
リストランテ 国立文流
東京都国立市東1-6-30 パティオマグノリア1F
042-571-5552
11:30~15:00(LO14:30)、17:00~22:00(LO21:30)
無休
ピッツァ1000円~、パスタ800円~、コース4000円~、ボトルワイン2500円~