【北米総局】英紙ガーディアンなど欧米の一部メディアは28日、民間の内部告発サイト「ウィキリークス」が入手した米国の外交文書の中で、世界の米大使館が各国首脳を「酷評」した中身も暴露した。
同紙などによると、モスクワの米大使館は08年、ロシアの首脳の力関係について映画のヒーローと相棒の関係に例え、「(主人公)バットマンがプーチン首相。メドベージェフ大統領は相棒ロビンの役割を演じている」と評した。また、北朝鮮の金正日総書記も外交筋から「肉のたるんだ老人。脳卒中の結果、精神的にも肉体的にもトラウマを負った」と評された。
イタリアのベルルスコーニ首相は「無能で空っぽ。現代欧州のリーダーとしての影響力なし。連日のパーティー通いで休息も取っていない」とこき下ろされている。イランのアフマディネジャド大統領は「まるでヒトラーだ」と独裁者呼ばわりされた。
米国との関係改善を進めるリビアのカダフィ大佐も「官能的なウクライナ人看護師とロマンチックな関係にある。彼女の同行なしでは旅行もできない」と素行を暴露された。看護師は38歳のブロンド女性という。対テロ戦争でオバマ政権と協力するアフガニスタンのカルザイ大統領は「極度に弱い男。事実に耳を傾けようとせず、とっぴな話に動揺する」「すぐに陰謀説を信じてしまう」と報告されている。
このほか、メルケル独首相を「リスクを避け、創造性に乏しい」、サルコジ仏大統領を「怒りっぽい権威主義者」、ネタニヤフ・イスラエル首相を「約束を決して守らない」と酷評するなど、主要同盟国との関係悪化が懸念される表現も目に付いた。
米紙ニューヨーク・タイムズが報じた「中国共産党政治局の指示」によるとされる今年1月の米インターネット最大手グーグルに対するサイバー攻撃については、政府工作員、民間の安全対策の専門家、中国政府に募集されたネットの無法集団の連携活動の一環だったという。彼らは02年以降、米政府や米同盟国、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世、米企業のコンピューターシステムに侵入していたとされる。
また、英紙ガーディアンによると、米国務省は国連幹部や各国首脳らの指紋や虹彩情報など生体情報のほか、パソコンのパスワードなどを入手するよう秘密指示を行っていた。
ニューヨーク・タイムズによると、米政府は核兵器への流用を恐れ、07年以降、パキスタンの実験炉から高濃縮ウランを除去しようとしてきたが、これまでのところ実現していない。パキスタンは米専門家の訪問を拒否した。
また、昨年12月の公電は、米軍がイラク戦争時の前線拠点としてきたカタールは「(対テロ対策において)域内で最悪」で、カタールの安全対策当局は「米国との連携がわかって報復を挑発することを恐れ、テロリスト対策に及び腰になっている」としている。
このほか09年4月29、30日、麻生太郎首相(当時)が訪中し、温家宝首相と会談した際、梅田邦夫公使(同)が温首相についての印象を「疲れ切り、プレッシャーを感じている」と伝えていた。
毎日新聞 2010年11月29日 12時51分(最終更新 11月29日 16時26分)