BSデジタル10年<スポンサー編> 広告媒体の価値が増大
企業イメージ向上効果も
2000年の開局以降、キー局系民放各局は長い間、赤字に苦しんできた。それが07年度になって5局すべてが単年度黒字を達成した。「そのころからシニア層を中心に視聴者が増えてきたことで、広告媒体としての価値が増してきた実感がある」。BSデジタル放送にCMを出し続ける東芝の桐山輝夫・広告部長が話す。
それを裏付けるように、BSデジタル放送の視聴状況を“接触率”として調べる「BSパワー調査」では、05年の調査開始以来、夜の時間帯を中心に接触率が上昇してきた。背景にデジタルテレビの好調な売れ行きやプロ野球中継数の増加があると考えられる。
今では全世帯の2〜3割が実際にBSデジタル放送を視聴していると言われるが、8000万台の受信機普及数に比べると、まだまだ、十分に見られているとは言い難い。さらなる成長の可能性を秘めているのだ。
「日本は地上波キー局が強すぎる。多チャンネルの方が楽しいし、放送事業者が競争し、活性化するはず」と桐山部長。東芝の広告費全体は減少しているが、地上波よりも割安で全国に情報を届けられるとあって、BS向けの広告費は逆に増えている。
そんな中、08年から同社が1社提供しているのがBS日テレ「小さな村の物語 イタリア」だ。生まれ故郷でゆったりと暮らすイタリアの人々の飾らない日常にカメラを向ける。「日本人にはない人生を歩む姿が素晴らしい。エコを大切にする企業イメージにも合致する」と言う。
「地上波並みの正確な視聴率は把握したいが、優れた番組ならば提供する。これが原則だ」と桐山部長。BSらしい個性的な番組を求めている。
視聴率を追求する地上波は、分刻みで視聴者をテレビにくぎ付けにしようと腐心する。そこに抵抗を感じるスポンサーは少なくない。08年から主要スポンサーとしてBS朝日「世界の船旅」を提供するセコムの安田稔・コーポレート広報部長は「地上波の構成は常に視聴者を満腹にさせようとする。番組全体で旅を疑似体験するには、BSの方がふさわしい」と考えている。
同番組は、旅の中でも豪華客船でのクルーズに焦点を絞った高級感漂う紀行もの。「ゆとりある生活を応援する企業であることが伝わり、企業イメージが高まるはず」と広告効果を強調する。
CM収入とは別に、BS各局が開局当初から収入源としているのが、ショッピング番組だ。番組枠ごと通販会社に販売する仕組みで、全局で日中や深夜の時間帯が利用されている。通販に興味のない視聴者には無縁だが、販売実績があるから続いているのも事実だ。
年間1000億円以上の売り上げを誇る「ショップチャンネル」は、07年にBSに進出。30代以上の女性に照準を合わせ、BS朝日やBSフジなどで生放送を行っている。
ショップチャンネルの野田和弥・メディア営業部長は「05年ごろまでは本当に見られているか心配だったが、韓流ドラマが相次いで始まったことで媒体として興味を持った」と明かす。他の媒体に比べ、新規の顧客比率が高いのが特徴で、視聴者層を反映してか、購入単価が高いのもBSならではという。
各局ともショッピング番組を1日の放送時間の3分の1程度にまで抑え、通常番組を増やそうとしているが、制作費が不足しているのも事実。通販会社側も手応えを感じている今、現在の編成比率は容易には変わりそうにない。
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