アメリカの工業都市、デトロイトが生んだ二大ロックンロール・モンスター、ストゥージズとMC5。
彼らがいなければパンクもグランジも生まれなかった、というのは言い過ぎかもしれないけれど、彼らに影響を受けたボビー・ギレスピーやカート・コバーン、ジャック・ホワイトなど、数多くのアーティストは、思春期に欲求不満でノイローゼになっていたに違いない。
そんな彼らの名盤の数々が紙ジャケで再発!とくれば、ロック・ファンには素通りできないわけで、ここでまとめて紹介しておこう。
まずはイギー・ポップ率いるストゥージズから。
69年にリリースされたファースト・アルバム『イギー・ポップ&ストゥージズ』は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュースを担当。混沌としたサイケデリック臭が強いサウンドのなかから、イギーのロウなシャウトが立ち上がる。
セカンド『ファン・ハウス』(70)では、バンド・サウンドはソリッドさを増して楽曲も粒ぞろい。まさにバンドの代表作であり、ロック史に残る名盤だ。紙ジャケ化にあたってはUSオリジナルのWジャケ仕様になり、スタジオで寝転がるメンバーの勇姿が拝める。
そして、『ファン・ハウス』と双璧をなすロック名盤が、MC5のデビュー作にしていきなりのライヴ盤『キック・アウト・ザ・ジャムズ』(69)。顔面を直撃するギター・ノイズと、一瞬の緩みもないハイテンションな演奏は壮絶なまでのカッコ良さだ。今回の紙ジャケで一番凝っているのが本作で、アルバム全体を覆う特殊オビを再現。さらにUS初回盤(激レア)のWジャケ仕様で、ジャケを開くとバンドの初代マネージャーであり、ホワイト・パンサー党党首ジョン・シンクレアのライナーノーツが掲載されている(訳付き)。「彼らの全生命はこの音楽に捧げられている」という文章には激しく同意。
MC5は続く『バック・イン・ザ・USA』で、タイトなロックンロールへと変化する。デビュー作の混沌に変わって、歯切れのいいギターが全面に出た本作は、デビュー作と並んでガレージ・ファンに愛される一枚だ。
そして、初のセルフ・プロデュースになったサード『ハイ・タイム』(71)では、よりバラエティに溢れたサウンドを聴かせるものの、セールスが奮わず残念ながら本作で解散。紙ジャケに際してはUSオリジナルのWジャケになっていて、アホな写真がレイアウトされたデザインも楽しい。ちなみに、MC5の3作の音源が09年リマスターなのにも注目したいところ。
60年代当時、デトロイトではロックや若者文化への締め付けが全米で一、二を争うほど厳しかったらしい。その反動から生まれたストゥージズとMC5は反抗の叫びそのもの。プレイする時には、両親や嫁に怒られてもめいっぱいラウドに聴くべし!
<文 / 村尾泰郎>
【MC5】