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電気設備に高調波が及ぼす影響 |
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今回は高調波と電気設備との関係について学ぶ。(編集部)
問 高調波と基本波は,どのような違いがありますか。
答 初歩的なことになりますが,商用周波数としての50Hzおよび60Hzを基本波と称しています。また,高
調波とは基本波の整数倍の周波数とされています。
問 商用周波数で配電されている受電用電圧では,高調波とは別のものといえるのでしょうか。
答 そうですね。一般の交流電源の電圧波形は,基本的に正弦波であるわけです。ところが,工場やビ
ルで使用される各種の機器から発生する高周波が,こうして交流電源に影響を与えることになりま
す。特に近年は電気設備のあれこれに,半導体素子を用いた電子機器や制御装置などが多用され
るようになりましたが,実はこれらが原因となっている場合があります。
問 半導体応用機器の進歩と普及は,目覚ましいものがありますが,こうした悪影響も発生したわけで
すね。具体的にはどのような影響が発生したのでしょうか。
答 これらの半導体装置から発生する高調波によって,配電電圧にひずみが起こり,これによって様々
の影響がもたらされます。
問 影響を与える原因となるものは,どのようなものですか。
答 最も問題となるのは,配電電圧に電圧のひずみをもたらすことです。いわゆる電圧ひずみを増大さ
せて,他の機器へ障害を与えることです。
問 この電圧ひずみが他の機器への障害の原因になるということですが,どのように影響をもたらすの
でしようか。
答 これは筆者自身にも経験があることですが,高調波発生源である自社の機器はもちろん,他の需要
家への設備にも影響を波及させます。他の需要家への波及は特に問題ですが,これについては調
査が難しいですね。
問 こうしたときは, どのようにして原因の追求を行うのでしょうか。
答 いわゆる高調波モニタといわれる測定器をセットしますが,筆者の需要家においては,電力会社が
持ち込んでセットしてくれました。高価なものですから当然のことですが。
問 こうした測定での目的は,高調波の発生の有無を確認することにあると思いますが,その他の目的
としては,どのようなことが挙げられますか。
答 当然,高調波発生源の探知と原因の確認が目的の第一であり,更には高調波の発生量を測定す
ることで,対策を講じることが目的となり
ます。
問 測定方法としては,具体的にはどうしますか。
答 筆者の勤務した需要家の場合は,受電点における電流と電圧の両方をモニタで測定しました
(図-1参照)。
電力会社側の説明によれば,これによって,高調波障害のレベルと方向が確定できる
とのことでした。
図-1 測定方法
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問 結果的にはどうでしたか。
答 機械設備に可変速モータを使用していたた
め,インバータが高調波発生源であることがわ
かりました。
問 では,どうした動機で高調波の有無を調査する
ことになったのですか。
答 なぜ,高調波調査を行うことになったかという
と,高圧受変電設備における力率改善用コン
デンサに連続して2基絶縁破壊を発生する事
故が原因でした。
問 それにしても,よくそこに目をつけましたね。通
常では,コンデンサ自体の故障として認識して
しまいがちですが。
答 実は,これには理由がありまして,近隣の需要
家の力率改善用コンデンサの絶縁破壊事故が
多発したため,電力会社が調査することになっ
たためでした。
問 インバータは,高調波の発生原因になるわけ
ですが,電気設備や機器への影響の最も顕著
な例では,何が問題として挙げられますか。
答 筆者の経験でもそうでしたが,電力用コンデンサ設備への障害が最も多いという統計があるとおり,
注意しなければならないことです。
問 いわゆる力率改善用の高圧コンデンサに影響が多いわけですね。
答 そうです。異音や過熱をもたらすとともに,絶縁破壊に至る事例が多いですね。また,力率改善用コ
ンデンサにとどまらず,付属設備である直列リアクトルヘの障害にまで波及することがあります。
問 直列リアクトルは,コンデンサ投入時の突入電流の抑制を行うことを目的としたものですが,高調波
の影響も受けるのですね。
答 コンデンサ本体の影響ほど比率は高くありませんが,やはり事例があります。
問 系統内に,こうした高調波発生源があると,力率改善用コンデンサへの影響以外にも障害を与える
設備はありますか。
答 負荷設備への影響としては,電動機ではうなりの発生,蛍光灯のちらつきなどもあって,その障害
は幅広く,また,設備の種類も多様性があります。特に,過電流継電器や
配線用遮断器の誤動作 の事例も報告されていて,軽視できない問題を呈しています。
問 こうした高調波発生に対する対策としては,どのような方法がありますか。
答 現在,一般的に行われている対策の一つに,高調波発生機器にフィルタを設けて,高調波が外部
に漏れないような方法が実施されています。
問 この方法での効果としては,どのようなことが挙げられますか。
答 高調波を閉じ込めることで,発生源をもつ需要家から電力系統への流出を防止することができま
す。
問 コンデンサの付属装置である直列リアクトルも,障害を受けることが意外ですが,どのような理由に
よるものですか。
答 本来,直列リアクタンスの使用目的は,高調波電流を抑制することですが,第5高調波に対する耐
量が小さいときに,焼損事故につながります。当然,発生率は電力用コンデンサに比較して少ない
ものです。
問 高調波は,こうした一例でも感じましたが,半導体応用の整流回路をもつ設備やインバータを利用
した汎用機器が,今後ますます増加する現代では,無視できない問題ですね。
答 そうです。配電系統に発生する高調波を抑制し,負荷機器や電力機器への影響を防ぐために,そ
れぞれの発生源への対策をきっちりと確立していかなければなりません。
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