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2003/5/30 制作
第1回  1/1




◇ 「パンダ」はどこからやってきた?

 紛らわしい題で申し訳ないが、別にパンダ(正しくはジャイアントパンダ。以下、パンダとあるのは全てジャイアントパンダのこと)の祖先を生物学的に遡ろうというわけではない。パンダと言えば中国の代表的な動物として思い浮かべるのであるが、この動物、中国語(普通話)では「熊猫[ xiong2 mao1 ]」と呼ばれている。(ただし、正しくは「猫熊」だという説があるようだ。『しにか』2001年5月号の「少年少女山海画報」を参照。)
  「シュンマオ?」
 一体なぜ、それが日本では「パンダ」などという奇怪な呼び名になるのだろう?

 まずは日本でパンダフィーバーを巻き起こした、あの上野動物園へ行ってみよう。
 なるほど、正式には恩賜上野動物園なのか。それにしても「上野動物園」では、Googleの検索でトップに出てこないのが若干不思議だが、気にせず入ってパンダの説明(正確には「東京都の動物園&水族館」のページで、上野動物園HPの上位にあたるようだ。)を見てみる。
 「豆知識」の中の「飼育係からのこぼれ話」を読むと

「1972年9月、当時の田中角栄首相が中華人民共和国を訪問し、周恩来(シュウオンライ)首相との首脳会談により、日中国交正常化の道が開かれました。これを記念し中国人民から日本国民に、2頭のジャイアントパンダ「カンカン(オス)」と「ランラン(メス)」が贈られることになり、その年の10月28日に待望の初来日がかないました。」

とある。
 しかし、なぜ「パンダ」と呼ぶのかは分からない。こういう場合、信頼性の高いこうした公式HPから情報が得られれば、一番楽なのだが、上手くいかなければ地道に検索するしかない。

 では Google で、まずは「パンダ」を検索してみる。もちろん、これでは約247,000件もヒットしてしまう。次は「パンダ 語源」で調べてみよう。これで約1,190件になる。
 上位の表示を見ると、これでもう、後はそれぞれのページに飛んでいっても良さそうであるが、黒の太字でハイライトになっている箇所をよく見ると、あることに気付く。それは目的の記述がありそうなページのものに「パンダの語源」という語が頻出しており、逆にそうでないところは関係のなさそうな情報が載っている、ということである。そこで、ここはあえてさらに絞り込んでみる。
 「パンダの語源」で検索した。これで約15件。これなら全部確認しても、少しも苦にならない。
 トップに出てきたのはこちら。パンダの生態について書かれており、和名が「シロクログマ」だとある。さらにその語源として、

「パンダの語源は、ネガリヤーボンヤ(ネパール語)といい、「竹を食べるもの」という意味だそうです。」

とある。実際、他にヒットしたものを見ても、カタカナ表記に揺れはあるものの、おおむねこの説に拠っている。
 それでは今度は、新たに得た言葉を使って、裏付けをとってみよう。「ネガリヤーボンヤ」で4件ヒットする。その中で、「パンダミニ知識」では、現在のネパールでは「ジャイアントパンダ」と呼んでいるらしく、ネパールの一部の方言なのかもしれないと推測している。
 また4件しかヒットしないのは、カタカナ表記に揺れがあるためなので、あれこれ試してみる必要がある。そして、例えば「ポンヤ」で検索して逐一確認したところ、「みくだり日記」というところに

「ところでジャイアントパンダは千八百六十九年、フランスのダヴィド神父によって紹介されヨーロッパに一大センセ-ションを巻き起こした。その後の千八百七十年、フランスのエドヴァールがアライグマ科に分類された。」

とあって、ダヴィド神父やらエドヴァールやら、新たに語源に関係のありそうな固有名詞が出てきた。これらの言葉を使えば、さらに詳しく調べられそうであるが、ひとまず今回はここで置いておこう。(当然、この2人の名前だけでは、同じ名前の人が大量に出てくる可能性があるので、「パンダ」などとのアンド検索を試みたほうが良いだろう。)

 さて、ここで少し前に戻る。実は、先の「パンダの語源」でヒットした15件の中で、別の説を採るものがあった。懐かしの上海 其之壱の中に紹介されているものである。

はじめて、この動物を見た人が、土地の人に聞いた。
「あれは、何という動物ですか?」
「えっ。あの、胖的(パン・ダ=太った)ですか?」
「あぁ、パンダね」という訳で、パンダと呼ばれるようになった、とのことである。
本当だとすると、語源はやはり中国語ということになる。

 何と、こちらの説を採ると、中国語起源だということになる。
 このエピソード、岩波新書の栞などで紹介されている「犬=カメヤ」話を思い出させるが、実際のところどちらが正しいかは、今回の調査だけからは不明である。ネット上での多数派は、ネパール語起源説のようだが……

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