厚労省分割:「解体」で不信解消…首相、政権公約に

2009年5月20日 22時41分 更新:5月21日 0時45分

 麻生太郎首相は、厚生労働省の分割案を検討するよう与謝野馨財務・金融・経済財政担当相に指示した。次期衆院選に向け、「生活重視」の姿勢を示すばかりでなく、年金記録漏れ問題など不祥事が相次いだ同省の解体をマニフェスト(政権公約)に盛り込むことで、同省へ根深い不信を抱く国民に留飲を下げさせる狙いもある。公明党も20日、分割案を検討するチームを党内に設置することを決めた。

 医療、年金、介護に労働と、厚労省の業務が過重なのは事実。舛添要一厚労相も「1人の大臣では手に負えない」と分割を主張したことがある。今も新型インフルエンザへの対応でパンク状態だ。ただ、今回の分割論には、選挙を意識した「厚労省バッシング」(厚労省幹部)の思惑も見え隠れしている。

 麻生政権は小泉構造改革路線を転換し、社会保障を強化する意向だが、それは厚労省の予算増、ひいては増税にも結びつく。年金記録漏れ問題の発覚で社会保険庁は解体が決まったものの、厚労省が手つかずのままでは、国民の納得が得られない、というわけだ。

 首相は厚労省を「社会保障省」と「国民生活省」に分ける構想を示している。与党内にも賛同する声は多く、具体案づくりは与謝野氏や河村建夫官房長官、甘利明行政改革担当相に委ねる意向だ。

 ただ、省庁の分割は行革に反するうえ、総務省や国土交通省などの分割論にも波及しかねない。関連法の改正も必要で、決してハードルは低くない。

 厚労省内には、力の弱い省が二つできるだけ、という不安もある。かつて分割を口にした舛添厚労相も、19日の閣議後会見では「1人の大臣でできないというなら、国土交通省も同じだ」と述べ、警戒感を示した。【鈴木直】

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