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明治期


  1. 西洋戸外遊戯法 下村泰大/編
    東京:泰盛館,明治18.3
    84p;19cm

    奥付によれば、編者は埼玉県平民。序文を寺尾寿が書いている。Frederick William Strange著『Outdoor games』(Tokyo : Z. P. Maruya,1883)の抄訳。p.16−19に「フート、ボール(蹴鞠)」 あり。本書は『近代体育文献集成. 第18巻』(日本図書センター,1983)に、『Outdoor games』は『明治期野球名著選集』(ベースボール・マガジン社,1980)に 収録されている。原本の著者Strange(1853-1889)は英国人。東京英語学校、東京大学予備門、高等第一中学校で英語を教授。 筑波大学教授阿部生雄氏が「武田千代三郎の「競技道」の系譜とその性格」 『筑波大学体育科学系紀要』no.25 2002 p.31-48 で言及されている。英国に彼の 伝記サイトがあるが、それによると彼は イートン校も大学にも在籍していない人物のようである。


  2. 戸外遊戯法 一名戸外運動法 坪井玄道、田中盛業/編
    東京:金港堂,明治18.4
    112丁;19cm 和装

    『日本サッカーのあゆみ』(日本蹴球協会/編 講談社、1974)によれば、日本にサッカーを紹介した最初の図書。第17として「フートボール」が8頁(といっても和綴じであるが)にわたって記述されている。 坪井玄道は嘉永5年(1852年)下総生まれ。箕作塾で英学を学び、明治11年政府が体操伝習所に招聘したジョージ・リーランドの通訳となって体操教育に関わることになる。 東京高師教授として体育を担当し、明治33年から35年にかけて最初の体育専攻留学生として洋行している。下記のように、東京高師蹴球部長として、最初のサッカー専門書の 序文を書いている。大正11年(1922年)没。本書は野球史の重要文献でもあり、『明治期野球名著選集』(ベースボール・マガジン社,1980)の一冊として復刻されている。


  3. 簡易戸外遊戯法 岡本岱次郎/編
    東京:集英堂,明治19.6
    44丁;13×19cm  和装

    三十三 蹴鞠


  4. 新撰体操書 水野浩/編
    東京:文学社,明19.6
    4冊;24cm 和装

    巻之1 遊戯之部 第二節 器具遊戯 第七 蹴鞠(一名フートボール)


  5. 簡易遊戯法広瀬伊三郎/編
    土浦町(茨城県):柳旦堂,明19.7
    17丁;16cm  和装

    第九 蹴鞠


  6. 実地体育法 横井琢磨/編
    〔岡山〕:岡山県岡山学校,明19.7
    6冊;22cm 和装

    蹴鞠遊戯


  7. 小学戸外遊戯法 広瀬辰一郎/編
    京都:文新堂,明19.8
    73p;19cm

    第四類 球戯 第一 ふうとぼうる戯(蹴鞠ノ一種)


  8. 普通小学遊戯法 松岡彪/編
    神戸:船井弘文堂,明20.4
    66p;18cm

    第二十一 蹴鞠(一名フートボール)


  9. 戸外遊戯法 丹羽貞次郎,室野義忠/編
    新潟:精華堂,明20.10
    60p 附図38 p;21cm

    第二十一 蹴鞠(フートボール)


  10. 小学遊戯法 花岡朋太郎/編
    大阪:大辻文盛堂,明21.5
    3冊(32,30,30丁);22cm 和装

    巻一 第二類 球遊戯 第十四 蹴鞠


  11. 児童体育遊戯法 東条種家/編
    大阪:朝陽堂,明21.8
    31,5p;16cm

    蹴鞠


  12. 小学生徒戸外遊戯法 有川貞清/著
    京都:正宝堂,明21.9
    152p;18cm

    第五十七 フートボール


  13. 学校児童戸外遊戯法 増田正章/編
    大津:南部弥三郎,明27.1
    63p;19cm

    第四十五 蹴鞠


  14. 新撰遊戯全書 前野関一郎/編
    神戸:熊谷久栄堂,明28.4
    182p;16cm

    第四十五 フートボール 其二


  15. 欧米遊戯術 相田与三郎/訳
    大阪:前川喜兵衛,明30.5
    163p;18cm

    アッソシエーション流競技法


  16. ベースボール・フートボール案内 今井信之/編
    東京:松翠館,明治31.8
    48,14p;16cm

    書名に“football”を含む本邦最初の図書。未見。


  17. 日本新遊戯法 米田源次郎,日岡鶴松/著
    東京:三省堂,明33.6
    265p;23cm

    第二章 男子部遊戯 第十三節 蹴鞠


  18. フートボールと自転車 三井末彦/著
    東京:博文館,明治33.12
    122p;16cm ( 内外遊戯全書; 第15編)

    p.45-68がアッソシエーション流遊戯法。 巻頭および奥付の書名は「蹴鞠と自転車」。表紙の書名は「フートホール自転車」(ホールに濁点がない。多分誤植)。著者は法科大学生とあるが、明治33年前後の『東京帝国大学一覧』に三井末彦は見当たらない。 ラグビーおよびアソシエーションのルール紹介が主。 人員の配置(フォーメーション)はフート・ボール・アソシエーション書記ダブリュアルコック氏によるとあり。ケビテオン(大将)1人、 フォ−ワード(前軍)7人、バック(後軍)4,5人。ゴールを勝負門と訳し、ウイングによるオープン攻撃を軽騎兵にたとえている。 種本は『Football : the rugby union game / C. J. B. Marriott; the association game / C. W. Alcock』( 1894) であろう。Alcockは1870〜1895年FA事務局長、世界最初のサッカー・ジャーナリストでFAルールの標準化、FAカップの創設に貢献。


  19. 実験普通遊戯法 高橋忠次郎/著
    東京:榊原文盛堂,明治34−35
    2冊(上144,下165p);23cm

    第3章フートボール 乙  アツソシエーシヨン式競技法


  20. 新編遊戯教授書 高山源助/著
    東京:成美堂〔ほか〕,明34.4
    100p;22cm

    フート、ボール


  21. 近世遊戯法 尚武会/編
    東京:松栄堂,明34.11
    193p;15cm

    蹴鞠(其二)


  22. 実験遊戯全書 永島小蝶/著
    東京:共盟館,明34.11
    204p;16cm

    秋季ノ部 第二 足球術編(フートボール)


  23. フートボール術 高見沢宗蔵、鳥飼英次郎/著
    東京:尚栄堂,至誠堂,明治35.10
    94p;18cm

    著者の肩書きは日本体育会教師。p.54-77がアッソシエーション式フートボール。 ラグビー式とアッソシエーション式を併記し、「加奈陀フートボールの特色」を巻末に付す。


  24. フートボール 伊東卓夫/著
    東京:美満津商店,明治36.9
    264p;15cm

    表紙および標題紙には美満津商店体操部編とあり。奥付けに著者兼発行者として伊東卓夫。おそらく伊東は美満津商店関係者で、名目上の著者であろう。 第1編がラグビー式、第2編p.120-223がアッソシエーション式フートボールでルールの解説が主。競技法各論があり、守将、後軍、半後軍、前軍別に解説されている。


  25. アッソシエーションフットボール 東京高等師範学校フットボール部/編
    大阪:鐘美堂,明治36.10
    127p;19cm

    本邦最初のサッカー専門書。序文は坪井玄道。東京高師フットボール部は明治29年創設、ア式蹴球部は明治35年創部。既に卒業生が普及させていたらしく、凡例に各地の中学、師範からの求めにこたえたとある。 明記されていないが、著者は中村覚之助。 編纂に際して橋本吾作、上田芳郎の助力を得たとあり。ルールの出拠として
    1)Charles G. B. Marriott and C. W. Slcoock. Foot ball. 1903.
    が、参考図書としてさらに、
    2) C. W. Slcoock. Association foot ball.
    3) John Goodall. Association foot ball.
    4) Foot ball who's who.
    があげられている。4)以外は英国図書館デーベースで確認できず。C. W. SlcoockはAlcockの誤綴か?
    第1章:緒論、第2章:用具、第3章:フィールド、第4章:用語の定義、第5章:演伎者の任務、第6章:レフェリー及びラインスマン、第7章:プレーヤーの数及び配置、第8章:ゲーム中に置けるプレーヤーの注意、第9章:ゲームの規則、第10章:オフサイドに関する諸規則、第11章:ゲームの一例、第12章:ゲーム以外の練習、第13章:フットボールが要する人。第13章はいわゆるスポーツマンシップについて述べている。


  26. 競技運動体育読本 晴光館編輯部/編
    東京:晴光館,明治36.12
    146p;22cm

    第2章 フートボール


  27. 新撰遊戯法 日本体育会/編
    東京:育英舎,明治36
    240p;23cm

    第8 フート、ボール


  28. 各種学校運動会競争遊戯全集 高木菊治郎/編
    東京:学海指針社,明37.3
    218p;16cm

    六十八 フートボールの一 アッソシエーション流


  29. 実験児童遊戯法 一万田豊二/編
    宮崎町(宮崎県):丸屋書店,明41.4
    185p;19cm

    第六十二 フートボール


  30. フットボール 東京高等師範学校校友会蹴球部/編
    東京:大日本図書,明治41.6
    193p;19cm

    表紙の書名は「Foot Ball」。序文を蹴球部長坪井玄道、「鍛練」という題字を校長嘉納治五郎が書いている。編者は蹴球部主事新帯国太郎、落合秀保。 『アッソシエーション・フットボール』が競技の紹介にとどまったのに対して、「その不備の点を十分に補ひたい覚悟で、数年間毎年一二回づつ外人等と競技を重ね、少いながら実際上から 其の真髄と興味を味わひ得たと信じ、茲に前著を全然改訂する必要を生じた。」と自序で述べているように、実戦を通して得た経験を「附録 著者の経験」に紹介している。
    第1編 第1節:緒論 第2節:フットボールの歴史
    第2編 第1節:フィールド 第2節:競技者の人数と位置 第3節:競技者の任務 第4節:レフェリーとラインス・マン 第5節:ゲームに用ふる言葉の意味 第6節:用具
    第3編 第1節:ゲームの規定
    第4編 第1節:ゲームの例 第2節:ゲーム以外の練習 第3節:服装に就いて
    附録 著者の経験 第1節 小引 第2節:ゴール・キーパーに就いて(新帯国太郎) 第3節:フルバックに就いて(重藤省一) 第4節:ハーフ・バックに就いて(落合秀保) 第5節:フォーアワードに就いて 甲 アウトサイド・フォ−アワード(細木志朗) 乙 センター・フォーアワード(落合秀保) 丙 インナー・フォーアワード
    第2編第5節「ゲームに用ふる言葉の意味」にあげられている用語は、ドリブリング、パッシング、ヘッディング、フリー・キック、ペナルティ・キック、ゴール・キック、コーナー・キック、オフ・サイド、アウト・オブ・プレー、ゴール。写真や図が多用されており、説明が具体的。


  31. 学校遊戯ボール遊ビ 東京児童体育研究会/編
    東京:博報堂,明治41.7
    138,23p;16cm

    5 対列フートボール8 フートボール鬼


  32. 小学校運動遊戯 坪井玄道,可児徳/編
    東京:大日本図書,明42.4
    141p;23cm

    第一章 ボールゲームス(用球遊戯) 第八 ハンドフットボール


  33. 実験動作遊戯 児童体育研究会/編
    東京:松華堂,明治42.8
    93p;23cm

    第6 フットボール


  34. 実験ボ−ル遊技三十種 上原鹿之助/編,永井道明,可児徳/閲,矢沢米三郎/訂
    東京:平本健康堂,明43.11
    94p;15cm

    第十三 略式フットボール


大正期


  1. 蹴球規定 アツソシエーション 極東体育協会/編
    東京:極東体育協会,大正6.5

    未見。


  2. フットボール 東京高等師範学校校友会蹴球部/編
    ミカド商会,大正9.11

    未見。『日本サッカ−のあゆみ』による。NACSIS WEBCATにも見当たらない。


  3. フットボール 佐々木等/著
    東京:目黒書店,大正11.6
    146p;19cm (日本体育叢書;第3編)

    下記のディンの著書に本書への言及がある。佐々木等は東京高師体育科第1期生、 日本が初めて参加した国際大会である第3、5回の極東大会に選手として参加。東京高師教授として『学校体操の生理的研究』(小山長助と共著 培風館 大正10年)、 『小学校に於ける遊技競技の実際』(目黒書店 同年)、『遊戯競技の実際』(可児徳と共著 東京宝文館 同年)から『新しい人間形成の体育』(大修館書店 昭和33年)まで 約30冊(復刻を除く)の著書がある。
    序文に「一体運動の種類は頗る多いけれども共同的精神の修養、体力の養成、機敏、果断、等の諸徳を養ふことにおいて、フットボール などは有数の位置を占むるものと信じる。」とある。標題紙に著者の顔写真あり。
    第1章 フットボールの沿革 1.ア式の伝来
    第2章 各位置の任務 1.一組の定員は何人か 2.ゴールキーパー論 3.フルバック論 4.ハーフバック論
    第3章 ティーム・ウォーク 1.ハーフとフォアワード との連絡 2.ハーフとフルバックとの連絡 3.フォアワードの任務
    第4章 術語の意義及び方法 1.ドリブリング 2.パッシング 3.ヘツデング 4.キックオフ 5.フリーキック 6.スローイング 7.オフサイド 8.ゴールキック 9.コーナーキック 10.ペナルティキック
    第5章 ゲーム 1.ゲームの開始及び勝敗の決 2.ボールの止め方 3.キックの方法 4.奪球の方法
    第6章 審判官(レフェリー)及び誤り易き事 1.審判官は如何なる人か 2.ゲームを一時中止する時は 3.レフェリーに触れたボール 4.誤り易いボール
    第7章 練習方法 1.キックの練習 2.フライボールの蹴り方 3.ゴロのボールの蹴り方 4.ボールにカーヴを付け方
    第8章 服装について 1.ユニホーム 2.靴はどんなのがよい
    第9章 用具 1.ネット 2.ボール 3.空気ポンプ 、ヤットコ及、紐通し 4.笛及手袋 5.襷及時計
    第10章 小中学には
    附録 ア式フットボール規定 稿を終るに及んで


  4. フットボール モン・チョー・ディン/著
    東京:平井武,大正12.8
    68p;19cm

    「フットボール」は巻頭の書名。標題紙の書名は「How to play association football」。ディンの肩書きは早稲田高等学院フットボールコーチャー。 『日本サッカーのあゆみ』によれば、綴りはKyaw Din。ビルマ人で東京高等工業学校留学生。大正12年から始まった全国高等学校選手権大会で早稲田高等学院を 連覇に導いた。名コーチの評判高く、「彼の著書を多数買った学校へは、コーチに来てくれる」というデマまで飛んだそうだ。口絵にボールに足をかけた彼自身の全身像と彼が中央に座った第1回選手権優勝の早稲田チームの写真がある。ビルマのモン、エーペー、早稲田の 鈴木(重義)、寿谷、附属中学校の児島(英二)、本田(長康)、春山(泰雄)、真鍋(良一)、訳述した東京高工の高松、および平井武への謝辞がある。
    目次は、総論、蹴球家に対する忠告、攻撃、守備、キャプテン の選択、センター・フォアワード、ライト及びレフトインナー、ライト及びレフトウイング、センターハーフ、ライト及びレフトハーフ、フルバック、ゴールキーパー、 キック、サイドキック(フロントパート)、サイドキック(バックパート)インステップキック、低きドロップ・キック、高きドロップ・キック、ヴォリー・キック、 シューティング、シューティングに際しての注意、ドリブリング、右側タックル、右側スプリット・タックリング(離れたる位置にて)、正面タックル法(第一法)、 正面タックル法(第二法)、側面タックル法 第一法 左側タックル、ヘディング、ヘディング(側面)、ヘディング(前方跳躍せずして)、ゴールキーパーの捕球、 ゴールキーパーの(ボールをバーの上を越えさしむる事)、膝の高さの強きボールの捕球、スライディング法、ボールのストッピング、攻撃に際してのフォワードノ位置、 防禦線、ウイングよりセンターへのパッス、スルーパッス、コーナーキックに於ける競技者の位置、スローイン、フットボール靴、競技場。
    戦術面でもパス・アタックやライン・ディフェンスに関する記述がある。「左右のフォワードの線の開きの角度は 百五十度位を適度とす。パッスの最善の方法は図示の如く所謂ヂグザグに行ふにあり。此の種のパッスは巧みに行はるなれば、もっとも容易に又最も有効なる攻撃法なり。」 「ハーフ及びフルバックを結びたる線は守勢に有る時は常に二つの平行線をなしてゴールラインと四十五度 の角度を保つ様に心掛くべし。」
    エンジニアらしく理路整然とした語り口で、キッキングを力学的に説明したり、ウイングが狭い角度からシュートを撃つことの非を説明するのに三角法を用いたりしている。 分解写真を含む写真多数。
    ディンのコーチ法を竹腰重丸は『サッカー』(旺文社,1956)で以下のように述べている。「大正十一年(一九二二年)の秋、山口高等学校で筆者もはじめて同氏の指導を受けたが、 ペナルティー・エリア線付近からのキックで、十回中に六、七回ぐらいは確実にバーにあてる美技や、ヘッディングの正確さには目を見はったものであるが、それにもまして大きな収穫であったのは、 キックやヘッディングのフォームやタイミングについて、簡単な物理を適用して考えることを教えられ、サッカーは考えることができるスポーツであることを知ったことであった。」
    キック・アンド・ラッシュしかなかった日本にショート・パス戦法を導入したディンの功績を、『日本サッカーのあゆみ』はメキシコ・オリンピック銅メダルをもたらしたクラマー氏に比している。


  5. ア式フットボール ウィリアム・フェーゲン/著
    東京:東京刊行社,大正14.2
    157p (中学生運動叢書)

    『附属中学サッカー部のあゆみ』(1984)によれば、著者は東京生まれのイギリス人で、横浜の外人墓地に墓がある。墓碑の写真では姓名はW(illiam). P. Miller Fegen。 日本語が達者でべらんめえ調で会話していたそうだから最初から日本語で書かれたものであろう。 著者の肩書きは東京日日新聞、大阪毎日新聞記者。
    緒言に「本書は前編と後編に分ち、前編は殊に初心者の便宜上、ア式蹴球の攻撃及び守備に関する概要を 述べたのに過ぎぬに対し、後編には一般の競技者のみならず、審判官にも有益になる様規則を詳しく説明してある。」 とある。 
    前編 第1章 フオーワードの心得 第2章 守備の大要
    後編 第1章 競技者の数 第2章 運動場の面積 第3章 運動場の区画 第4章 球 第5章 試合の時間 第6章 蹴始め(キック・オフ) 第7章 得点の方法 第8章 試合の大要並に細則 第9章 投込み(スロー・イン) 第10章 靴 第11章 ゴールキーパーに関する規則 第12章 隅蹴(コーナー・キック) 第13章 オツフサイド 第14章 反則(ファウル・プレイ) 第15章 自由蹴(フリー・キック) 第16章 処罰蹴(ペナルティ・キック) 第18章 審判員の心得 


  6. ア式フットボール 山田午郎/著
    東京:杉田日進堂,大正14.8
    47p;19cm

    巻頭の書名は「少年用、アッソシエーション蹴球規定」。山田午郎の肩書きは東京蹴球団理事、大日本蹴球協会理事。 青山師範卒で教職についた後、朝日新聞記者。日本初のサッカー・ジャーナリスト。第1回全日本選手権で優勝した東京蹴球団主将。緒言にマニラで開催された第7回極東競技大会に著者がア式蹴球 の監督として出場したこと、6連覇した中華民国では幼時からボールに接していることが述べられており、「香港上海で中華民国少年の練習振りに暗示を与へられたので去る大正十一年に吾等が夏の合宿に 研究討議して編んだルールの解説のようにしてこの技に志す少年諸君の御参考にもならばと思って本書をまとめた」とある。口絵写真は東京蹴球団主催の小学校蹴球大会 優勝校(青山師範附属小、目黒)と試合の模様。杉田日進堂は運道具メーカー。
    1.規定の解説
    2.各位置の任務
    3.練習の方法
    4.試合の方法
    大正10年には全国組織である大日本蹴球協会が設立され、それと前後して国際試合や各種の大会、リーグ戦も行われるようになった。 極東大会には第3回(大正6年 開催地:東京)から参加。 この時の優勝は中華民国 で、 日本は中華民国(5−0)、フィリピン(15−2)に2敗。ちなみに初勝利は昭和2年第8回大会の対フィリピン戦。 関東蹴球大会(主催:東京蹴球団 参加校は中学校と師範学校)開始(大正7年)。全日本選手権開始(大正10年)。 全国高等学校選手権大会開始(大正12年)。関東、関西で大学リーグ戦開始(大正13年)。 全国中学校選手権大会( 主催:東京高等師範学校)開始(大正13年)。大正14年には小学生の大会として、東京蹴球団、豊島サッカークラブ、 埼玉蹴球団主催のものがあった。
    上記のディンの著書が、上級者を対象に戦術面まで記述されているのにに対し、本書は底辺拡大を意図したサッカー入門書である。
    1)サッカー解説書がレベル別に分化していること、
    2)国際交流の経験からジュニア世代育成の重要性も認識されるようになったこと、
    が注目される。


昭和戦前期


  1. フットボール 第6版 佐々木等/著
    東京:目黒書店,昭和2
    19cm (日本体育叢書;第3編)

    未見。大手版元から版を重ねているところをみると、戦前期最も普及したサッカー関係書かもしれない。


  2. ア式蹴球 野津謙,鈴木重義/著
    東京:アルス,昭和3.7
    19cm (アルス運動叢書;第7編)

    野津謙は広島一中、一高、東大卒。第5回極東大会出場。第4代日本蹴球協会会長、AFC副会長、FIFA理事。鈴木重義は東京高師附属中、早稲田大卒。第8回極東大会で国際大会初勝利したときの主将。第9回大会に優勝したときの監督。 ベルリン・オリンピック代表監督。
    ア式蹴球一般(野津謙) 1.競技規定 2.ア式蹴球の歴史及現状 3.練習及戦法に関する一考察
    ア式蹴球実技(鈴木重義) 1.キック 2.ボールのストップ 3.ドリブリング 4.タックリング 5.ヘディング 6.ゴール・キーパー 7.フル・バック 8.ハーフ・バック 9.フォワード 結論
    野津は本文中で「今、フォアワード線を歩兵線、ハーフ・バックを輜重兵線、フル・バックを砲兵線と考ふるならば、ゴール・キーパーは参謀本部に相当する。 又蹴球競技を軍隊の陣形にたとふるならば、ラグビーは密集隊形で、アツソシエーション・フットボールを散兵の陣形と見なす事が出来る。」と述べている。
    ベルリン・オリンピック代表選手堀江忠男の自伝『わが青春のサッカー』によれば、 堀江は中学時代に本書に親しみ、早稲田に進学した理由の一つとして本書の存在をあげている。


  3. アソシエーションフットボール 小池潔/著
    東京:アソシエーションフットボール研究会,昭和4.2
    106p;19cm

    アソシエーションフットボール研究会の住所は発行・印刷者の北橋幸(幸酉印刷製本社)と同じ。おそらく自費出版なのであろう。 序文は千野正人(神戸一中、慶応卒)。著者は成城中学、慶応大学卒。 序文で小池潔を「著者は、慶大ア式蹴球部主将として、多年斯界に重きをなした人で、且亦同部中興の功労者」と紹介している。
    1.フォワード、プレイ
    2.フォーワード、個々ニ就テ
    3.ハーフ、バック
    4.フルバック、プレイ
    5.ゴール、キーピング
    6.オフサイド
    7.ア式フットボール規定
    大学リーグ戦等の実戦をふまえた具体的な記述が主体。既にショート・パス戦術が定着していたようだ。 「最近迄はフォワードは、単身ドリブルして進むものだと思っていた。が、現代のフォワードはセンターフォワードを中心として丁度五本の指の様に不足の処を互に おぎないながら活動する様になった。」


  4. ホッケー・ラグビー・蹴球・籠球・排球 東京朝日新聞社運動部/編
    東京:朝日新聞社,昭和5
    212p;18cm (朝日スポーツ叢書;第1編)

    蹴球はp.115−180。
    蹴球の歴史と沿革:日本の蹴球史、極東選手権大会、クラブ・チームの成立、各学校チームの成立。
    蹴球競技の解説:チームの編成、競技場、審判は主審と線審、競技者の任務、蹴球の基礎となる技術、試合の上に現はれる術語の解釈。


  5. アソシエーション・フットボール 島田晋/著
    東京:往来社,昭和6.9
    376p;20cm

    著者は前慶応義塾体育会ソッカー部主将。口絵写真は1928年アムステルダム・オリンピックに優勝したウルグアイ。 「僕はこの本を殆ど独逸の国際代表ティームコーチ、オットウ・ネルツの著“Fussball”に依って書いた。」、 「この書の技術的部分に関する挿絵は、独逸の雑誌「フスバール」其の他様々の書物の写真から僕が模写した。」とのこと。 図100。Otto Nerzはドイツ・ナショナル・チーム初代監督。
    序論 1.アソシエーションフットボールの歴史 2.アソシエーションフットボールの概念
    技術論 1.概論 2.キック 3.ドリブル 4.ボールのストップ 5.ヘッディング 6.ボールの奪取
    戦術論 1.概論 2.コンビネーション 3.ボール無しの協力 4.策戦に就いてのヒント
    各論 1.プレーヤーの資格 2.フォワード 3.ハーフバック 4.フルバック 5.ゴールキーパー
    参考書目として19冊の洋書と『昭和5年度蹴球規則』がリストされている。


  6. 蹴球のコーチと練習の秘訣 山田午郎/著
    東京:目黒書店,昭和7.10
    236p;19cm

    序文によれば7年間スポーツ担当の新聞記者をしていたらしい。
    第1章 総説 第1節 スポーツと吾等の日常生活 第2節 日本の蹴球略史
    第2章 各論 第1節 競技者 第2節 競技場 第3節 器具 第4節 役員及試合 第5節 一般的基礎技術 第6節 戦法 第7節 競技者の任務各論 第8節 新聞記事等にあらはれた蹴球
    附記
    附録 現行蹴球規則 試合の仮想と解説 主なる用語の解説
    第1章第2節の日本の蹴球略史はかなり詳しく、戦前の日本サッカー史を調べるのに有用。


  7. 蹴球年鑑 昭和7−8年度 大日本蹴球協会/編
    東京:大日本蹴球協会,昭和8
    154p;19cm

    昭和7年度各種大会の記録。付録に「昭和七年度加盟チーム調一覧」、「大日本蹴球協会憲章」。


  8. サッカー 市川忠平/編集
    浜松:浜松一中蹴球団, 昭和9(1934)年11月
    98p;23cm
    (Annual report of H.S.C.) 創刊号

    蹴球界の動向(工藤孝一)2 小学生大会を挙行せよ(市川忠平)4 サッカーと精神力(金川利勝)6 マネイヂメント雑感(原田龍)9 自由位置の占拠について(市川忠平)11 ヨリ高度の段階を目指して(堀江忠男)15 レモンタイム 26 躍進する十年間(座談会) 蹴球妄語(松丸貞一)35 老童奮戦記(XYZ)39 フォワードプレイ(講座)(加茂健)45バック論(講座)(水島茂)51随想 薬学的に視たスポーツマンの栄養(殿岡弥三郎)60 思ひ出断章(佐々忠雄)62 優勝旗を前にして(井指林次郎)62 ユニフォーム進化考(堀江耕造)65 新主将へ(中島秀夫)66 創立当時を回顧して(中村良一)67 無敵チーム合成のカタライザー(早坂長次郎)68 早慶戦漫文(高山喜三郎)70 蹴球部創立当時を想起して(佐藤次郎)72 何やら彼やら(若林成佳)74 創刊号に寄せて(錦織兵三郎)76 思ひ出(田上允)77 大毎招待大会を観る(加茂芳雄)79 浜一中蹴球部戦績とその批判 81 会務報告


  9. 誕生十年 吉木利光/編
    東京:東京府立第五中学校紫友会蹴球部,昭和10
    286p;23cm

    東京府立五中(現東京都立小石川高校)のサッカー部は大正13年創立。ベルリン・オリンピック代表竹内悌三、種田孝一、 戦前慶応監督として黄金時代を築いた松丸貞一など有力選手を輩出している。表紙題字は落合寅平。

    所感 所感(落合寅平) 五中蹴球部の礎石(吉木利光) 蹴球戦五句(田辺草人) 蹴球十題(鈴木幹哉)  十周年を迎へて(永地良正)
    寄稿 思ひ出すまま(伊藤国男) Good Old Days!(島田晋) 英国選手権決勝戦の記(浜田諭吉)
    翻訳 Otto Nerz's “Fussball”- Training(岩崎玄) David Jack's “Soccer”- Goalkeeper(川島三四治)  “Minuten, die man nie vergisst”(ドイツ選手権大会記事)(沖朗)
    小論 不具の子供(大内弘) 九年度コーチを終わって(松浦武男) 紫楽会とは?(吉木利光) 紫楽会ショウ(松丸貞一)
    想出 回顧(橋本亮)、ほか34編
    部史 戦績一覧表(大正十三年〜昭和九年度)
    編集後記
     
  10. 神戸一中蹴球史
    神戸:神中蹴球倶楽部,昭和12
    274p;22cm

    神戸一中は、本書刊行時点で全国中等学校選手権大会(昭和12年で第20回だが1回中止があるので実質19回)に4回優勝している。ちなみに御影師範は優勝11回で、 多くの場合兵庫県の両雄の勝者が全国大会を制覇した。1951年第1回アジア大会日本代表17名のうち10名は神戸一中卒。
    蹴球部歌、運動即宗教(池田多助)、蹴球史編纂に就いて(河本春男)、蹴球の沿革(河本春男)、本校蹴球史概略、戦績一覧表、各年度首将一覧表、戦績(大正5年〜昭和11年)、 座談会、追憶(岩田久吉)、創生期の蹴球(関口進次)、おしる粉と涙(範多龍平)、当時の蹴球部(一藤敏男)、隆盛の源泉(沢野定長)、回顧雑感(加藤正信)、苦闘より勝利へ(山本卓美)、 昭和四年度の一中蹴球生活(奥山豊)、オリンピック便り(右近徳太郎)、昭和六年度蹴球部を回顧して(吉田三郎)、昭和七年度蹴球部を回顧して(大屋宏)、神中蹴球生活の歓喜(大山政行)、 伝統の力(河本春男)、神中OB関東軍関西遠往に到るまでの経過(大山政行)、神中クラブ第一回東西対抗戦(河本春男)、会員名簿。
    同校監督で本書の実質上の編者河本春男は後に転職して神戸を代表する洋菓子店ユーハイムの社長になった。 ベルリン・オリンピック日本代表右近徳太郎は慶応大学卒、 オールラウンド・プレーヤーで日本が生んだ最初の国際級選手といわれたが、戦没した。 大正9年度主将は白洲次郎、その一年先輩に緒方富雄、千野正人がいる。野球部から独立したそうで、初期の部員は全員御影師範附属小学校OB。座談会では一日だけディンの指導を受け、 ショート・パス戦法を会得してから強くなったことが記されている。港町の学校らしく、神戸港に寄港した外国の軍艦チームとも試合を行っている。


  11. 3rd Back Systemに就いて 関西学院蹴球部/著
    西宮:関西学院蹴球部,昭和12.9
    17p

    未見。『日本サッカーのあゆみ』による。それまでは2・3・5システムであったが、オフサイド規則の緩和により手薄になったFBを補強するために、CHを敵CFにつける形で「3番目のFB」とし、 フォワードをW形、バックスをM形に配置した。アーセナルが最初に採用し、ヨーロッパ各国のナショナル・チームにも採用され、日本は出版の前年昭和11年ベルリン・オリンピックで初めて接した。戦争がなければ昭和10年代に少なからずとりあげられたであろうが、 図書として本格的に紹介されるのは、ベルリン・オリンピックを選手、コーチとして経験した堀江、加茂、竹腰の戦後の著作まで待たなければならない。

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