「NEU」〜「ENO」〜「FOR YOUNG ELECTRIC POP」

ギターウルフより爆音なアルバムを作りたかった

「A・D・S・R・M!」のあとメジャーに行くのは自然でしたね。パン投げるのやめてから特にお客さんが減るということもなく、レコード会社の人も続けて興味持ってくれて。

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NEU
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でもね、「A・D・S・R・M!」であれだけロックしたのに、やっぱしまだレビューとかで、ニュー・ウェイヴ、ピコピコって書かれたりするんですよ。それがほんっとにイヤで。で、今やりたいことはロックだ!だったらほんとにロックアルバムを作ろう!と思って、「NEU」の制作に入ったんです。「POLYSICSってこういうバンドでしょ?」ってヘンな先入観持ってるヤツらを驚かせたいっていう思いで。だから「A・D・S・R・M!」とマインドは同じ。怒って作った感じですね。とにかくギターウルフより爆音なアルバムを作りたいって。曲も、5日間で全部作った。もう、衝動のみ。ドラムは爆音、ギターも爆音。歌ちっちゃめ、みたいな。とにかく音で、聴いてる人を圧倒したかったんです。でも、今聴くとあれ、けっこう電子音バンバン入ってるんだよね(笑)。でも気持ちとしては、そう。かたまりでぶつける、鉄球みたいな感じで。

だからあの頃はライブでもお客さんを見てなかったですね。自分を100%出し切るライブをすればそれでいいと思ってたから、お客さんの反応とか、そういうのはまったく関心なかった。MCもほとんどしなかったし。ライブやるたんびに、今日も自分を超えてやろうみたいなモードでやるんですよね。それが自分のなかでのロックの表現方法だったのかもしれない。だから、お客さんと一枚壁を作ってたと思いますよ、当時は。

で、スタッフから次は岡野(ハジメ)さんとやるのどう?って言われて。岡野さんはリアル・ニューウェイヴァーじゃないですか。でもL'Arc-en-Cielのプロデューサーでもある。ポリのロックを、ちゃんとポップにできるんじゃないかって。で、岡野さんち遊びに行って、いろんなニューウェイヴのビデオを見たんですよ。それが異様に楽しくて、「あぁ、やっぱニューウェイヴだな」とか思ったんですよ(笑)。「NEU」でロック、ロックて言ってたけど、じゃあお前はいったい何者なんだ、みたいな。いくらロックだって言っても革ジャン着ようとは思わない。やっぱ自分にとって大事なのはニューウェイヴだっていうのを再認識したんですよね。

なんか上手くいかねえなって感じていた

で、キューンと事務所側から「代表曲欲しいよね」って言われてたんですよ。ポップでキャッチーな、レピッシュで言う「パヤパヤ」みたいなの。「ポリといえばこれ」みたいな曲。それで「NEW WAVE JACKET」ができたんですよ。お客さんのことなんてぜんぜん意識してなかったから、自分のなかでキャッチーだと思うものを作っただけなんだけど、すごく手応えがあった。日本語使い出したのもここからですね。その流れで「ENO」も作った。

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ENO
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でもそしたら、またお客さんとギャップができちゃって。「NEU」のとき、ガッと来てくれたロックファンが戸惑って、離れちゃった。やってる内容はまったく変わってないんですよ。インタビューとかでニューウェイヴって言葉を使ったのと、ツナギじゃなくて「NEW WAVE JACKET」に合わせて緑のジャケット着てライブやっただけ。そしたらなんか、ポリがロックじゃなくなっちゃった、みたいな印象を与えたみたいで。「NEU」のあの爆発感が好きだったファンは、尖ったものがなくなっちゃったって言って、離れちゃった。そんな状況になって、また怒りまくり。ライブでも、ずっと怒ってましたね。やってることはぜんぜん変わってないのに、しかもあん時のライブって、すごい凝ったことやってて。ちゃんと「ENO」の世界観をバッチリ表現してたと思うんですよね。そんなライブをやってんのに、なんか、ファンはあまり興味なかったみたいですね(笑)。うん。セットリストは、今思うと、めちゃくちゃハードなのやってるんですけどね。なんか上手くいかねえなって思って。

思いがあんまり伝わらなくて、セールスもどんどん落ちてきましたね

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FOR YOUNG
ELECTRIC POP
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で、ちょうどその頃テクノをいろんなバンドが取り入れるようになったんですよ。普通のギターバンドが、ポリよりぜんぜんライブがテクノになっちゃって。俺ら未だMDとか使ってるのに、みんなハードディスクとかターンテーブルとかシンセとかいっぱい並べて、お金いっぱい使って。なんかそれが、自分にとっては面白い現象じゃなかったんですよね。彼らはただアレンジのひとつとしてテクノを取り入れてるだけで、すごく浅いと思った。こんなの、若い、バンドとかパンクとか好きな若い子には物足りないだろうと思って、そういうロックキッズのためのエレクトロポップを作ろうって思って、「FOR YOUNG ELECTRIC POP」を作ったんですよ。今までポリが作ってた音楽も、全部が「FOR YOUNG ELECTRIC POP」って言ってもいいぐらいで。それぐらいの意志っていうか、思いがあって付けたタイトルでしたけどね。

でも、あんまり伝わらなくて。リードトラックをスタッフの説得に負けて「BLACK OUT FALL OUT」にしたら、案の定「ドラムが生ドラムですら、なくなってしまいましたね、ポリは」みたいに書かれて。オレの嫌いな「にわかテクノポップ」の仲間みたいに言われて。フザけんなよ、とか思って。

ライブの衣装とかもね、前までは、自分たちの着たい物を着るってやってたんだけど、スタッフの提案もあって衣装も女子の髪型もすごい作り込んだものにしたら、余計に敷居を高くしちゃった感があって。パンクが好きなキッズたちが、手を出しづらい存在になっちゃってたのかな、今思えば。で、セールス的にも落ちてきましたね、どんどん。

POLYSICSニューアルバム「We ate the machine」

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初回生産限定盤 [CD+DVD]
2008年4月23日発売 / 3360円(税込)
KSCL 1240〜1241 / Ki/oon Records

通常盤 [CD]
2008年4月23日発売 / 3059円(税込)
KSCL 1242 / Ki/oon Records

CD収録曲
  1. Moog is Love
  2. Pretty Good
  3. Rocket
  4. 機械食べちゃいました
  5. DNA Junction
  6. Kagayake
  7. ポニーとライオン
  8. ありがとう
  9. イロトカゲ
  10. Mind Your Head
  11. Digital Coffee
  12. Boys & Girls
  13. Blue Noise
  14. Dry or Wet
DVD収録内容(初回盤のみ)

POLYSICS WORLD TOUR OR DIE 2008!!!! 〜KARATE HOUSE!!!!〜FINAL JUNE.2 日比谷野外大音楽堂

  1. ワトソン
  2. PLUS CHICKER
  3. サイボーグ彼女
  4. Tei! Tei! Tei!
  5. ハードロックサンダー
  6. AT-AT
  7. COMMODOLL
  8. PEACH PIE ON THE BEACH
  9. BUGGIE TECHINICA
プロフィール

POLYSICS(ポリシックス)

2007年で結成10周年を迎えた、日本が世界に誇るニューウェイブロックバンド。そのユニークなキャラクターと、ニューウェイブの神髄を自身のスタイルに昇華させたサウンドは海外からも熱烈な支持を受け、過去にも数回にわたるツアーを大成功させている。ボーカル・ギターのハヤシは飛び道具的魅力を持ったDJとしても引っ張りだこ。

関連リンク