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青森・五所川原から リンゴ 果肉まで赤〜い

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果実の断面を見ながら、「御所川原」の出来具合を確認する前田栄司さん(右)と長内義彦さん。搾りたてのジュースの鮮やかな色彩が、目にまぶしい

 全国の生産量の半分強を占めるリンゴ王国・青森に、地元でも食べた人が少ない珍しいリンゴがあると聞いた。通称「赤〜いりんご」。皮だけでなく果肉も、花も、枝までもが赤いという。

 「むいても、むいても赤いんです。でも、酸味と渋みが強くて、生食には向かないんですけど……」。電話の向こうで市役所の担当者が熱心に語る言葉に興味をそそられ、冬の奥津軽を目指した。

 津軽平野の中央に位置する五所川原市は、米とリンゴの産地。雪化粧をした水田を走り抜ける津軽鉄道に乗ると、ダルマストーブ(!)に石炭をくべる音がし、あぶられたスルメのにおいが漂う。いやが上にも旅情がかき立てられた。

 お目当ての赤いリンゴは、同市出身の前田顕三(1881〜1966)が育成した。病害虫に強いリンゴの研究などに取り組んでいた顕三が、育種を思いついたのは39年ごろ。「町に出た時、赤カブを見てヒントを得たそうです。料理にツマとして添えれば、祝いの席が華やかになるなって」。孫の栄司さん(64)が教えてくれた。

 交配を繰り返し、二十数年の歳月を費やして赤いリンゴは誕生した。しかし、命名することなく顕三は他界。血と汗の結晶は、忘れ去られようとしていた。

 光が当たったのは74年。国体で来県する選手を迎える街路樹にしようと、市が栄司さんから穂木(ほぎ)を譲り受け、長さ約1キロの「赤〜いりんごの並木道」を設けた。

 96年には、「御所川原」の名で品種登録。栽培は市内でしか許可されず、ジュースなどに加工している。「含まれるポリフェノールは、普通のリンゴの3倍以上。健康志向にもぴったりです」と、市農政係長の長内義彦さん(43)。

 生食に向け品種改良も進む。顕三と同様、気の遠くなるような交配に取り組む畜産林務係長の原田久典さん(52)は「ようやく有力な候補が現れてきた」と目を輝かせる。

 2007年の生産量は15トン。需要に生産が追いつかない。昨年、市に増産体制の要望書を出した「赤〜いりんご応援隊」の隊長で、ビジネスホテル支配人の中山佳子(かい)さん(37)は「酸っぱ渋くて食べられなかったリンゴが、おいしい加工品になるなんてウソみたい。松山のミカンジュースみたいに、市内のどこでも口にできるようにして」と期待を込める。

 小玉の果実に、長内さんがナイフを入れた。皮に沿って赤く色づいた断面は、雪の結晶のよう。かじると、強い渋みが舌に残る。

 次に差し出されたのは、栄司さんが所属する「梅沢りんごジュース生産組合」のジュース。ピンク色をした果汁を口に含むと、さわやかな酸味が広がる。アセロラジュースのような、キレのあるのどごし。不思議と渋みは消えていた。

 増産が進み、さらなる品種改良で遠からず生食も可能に――。後世に引き継がれた「赤〜いりんご」への深い思い入れを前に、泉下の顕三も、さぞ留飲を下げているだろう。

 (来週は「リンゴ」の後編)

(保井隆之、写真も)

トラベル 五所川原


 夏祭りで運行される立佞武多(たちねぷた)=写真=の巨大さを体感したければ、「立佞武多の館」へ。高さ22メートル、重さ17トンにも達する大型立佞武多が3台展示され、新作の製作風景も見学できる。太宰治記念館「斜陽館」は、大地主だった父親が建てた明治時代の豪邸。津軽三味線発祥の地だけに、生演奏が堪能できる津軽三味線会館も必見だ。五所川原市商工観光課((電)0173・35・2111)。

リンゴとジャガイモのサラダ


材料(4人分)

 リンゴ1個、ジャガイモ200グラム、タマネギ40グラム、ベーコンスライス3枚、サニーレタス3枚、【a】(オリーブ油大さじ4、ワインビネガー大さじ1、塩小さじ1/2、コショウ少々)、【b】(マヨネーズ1/4カップ、牛乳大さじ1、マスタード小さじ1)

作り方

【a】【b】それぞれを別々に合わせておく。

タマネギは横の薄切りにし、【a】を合わせたものに入れてなじませる。

ジャガイモは丸ゆでにして皮をむき、冷まして5ミリ厚さの輪切りにして〈2〉のドレッシングであえる。

リンゴは半分に切って皮と芯を取る。小口切りにし、【b】のソースであえる。

ベーコンは5ミリ幅に切り、フライパンでカリッとなるまでからいりし、油を捨てる。

食べやすくちぎったサニーレタスの上に〈3〉を広げ、その上に〈4〉をのせてベーコンを散らす。
オリーブ油でなくサラダ油でもよい。(江上料理学院指導)

2008年1月20日  読売新聞)
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