金八トリオ 麻薬・自殺未遂 重いテーマに10代が体当たり
TBS「3年B組金八先生」(04年10月〜05年3月)に生徒役で出演した八乙女光(14)鮎川太陽(14)薮宏太(15)の「金八トリオ」が新人賞を受賞した。中学生と麻薬の問題に正面から取り組んだ重たいテーマに、デビュー間もない3人が体当たりで取り組んだ姿が高い支持を集めた。
床なめるシーン収録に15時間 〜八乙女〜
虐待、自殺未遂など、金八シリーズは今回も現代の重く、暗い題材に取り組んだ。中でも重かったのが、中学生にまで浸透した麻薬問題だった。
八乙女演じる少年、しゅうが禁断症状で錯乱する場面には、視聴者から「見ていられない」との反響が相次いだ。ドラマ初挑戦の八乙女は「自分にできるのかという不安で、後半は次の台本を見るのが怖かった。最終回の放送を家で1人で見て、やっと『終わったんだ』って実感が…」。
劇中の近寄りがたい雰囲気とは違い、穏やかな笑顔で振り返る。錯乱シーンでは焦点が定まらず怖いほどの迫力だった大きな瞳は、はにかんでいるように見える。ナイーブな声だけが劇中そのままの印象だ。遠くを見るような瞳とこの声があるから、しゅうの反社会的行動にも視聴者の同情が集まったのだろう。
教室で幻覚に襲われたしゅうが水を求めて床をなめる痛々しいシーンは、シリーズ25年の歴史の中でも十指に入る場面だろう。
「現場に行くとスタッフさんが床をものすごい磨いていて…。小さなほこりも目について『えーっ!?』ってイヤになっちゃいました」。冷静に思い出せるのはここまで。後はぽっかりと記憶が抜け落ちている。「本番のことは緊張で何も覚えていない。ドラマがうまくいくためなら床をなめるくらい大したことじゃなくて、もう必死でした」。収録は15時間続いた。演出家の「OK」の声を聞いても床から立ち上がれなかった。彼に寄り添う形で収録を終えた「金八先生」武田鉄矢も動くことができず、2人ともモニターで映像をチェックする気力もなかったという。「家でも『あれで良かったのかな』って不安ばかり残って、その日は寝られなかった」。
他局では、同時期にコメディー路線の学園ドラマ「ごくせん」が放送されていた。「あっちは楽しそうだなー、なんて思ったりもしたけど、僕は金八の方がいい。たくさんの人に勇気づけられ、支えてもらいながらひとつ階段を上れた。かけがえのない経験です」。
ラブシーンは苦手だ。質問が及ぶと「わぁーっ!!」と頭を抱えた。しゅうの身を案じて泣く同級生(黒川智花)の涙に指で触れ、抱きしめるというソフトな場面なのだが「あんなきれいな人抱いたことないんで、緊張しました」。「監督から『もっと強く抱け!』なんて怒られてアセりました。OKが出た直後は、恥ずかしいんでその場から逃げました。僕自身は全然積極的に行くタイプじゃないんで…」。最後になってようやく、14歳のシャイな素顔をのぞかせた。【梅田恵子】
ジャニーズ先輩に続いた 〜藪&鮎川〜
薮、鮎川、八乙女はジャニーズJr.の最年少ユニット「Ya−Ya−yah」のメンバー。薮と鮎川は難役に取り組む八乙女をガッチリとサポートした。薮は「本番前でピリピリしている時には静かな環境を作ってあげたり、光がやりやすいようにと考えましたね」。3Bではクラスをまとめる明るいムードメーカー役を演じた。「積極的に発言するところは自分と似てるけど、僕、あんなに説得力がある子じゃないんで」と笑う。
第1シリーズのたのきんトリオ(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)以来、ジャニーズ事務所の先輩も多く巣立っていった名物ドラマ。薮は「小学校のころから大好きで見ていた。3Bの30人の中に入れると知った時はうれしくて『よっしゃーっ!』って叫びました。伝統を汚さないように、いい経験をしたいと思いました」。昨夏に事務所関係者から最初に報告を受け、コンサートの本番中に八乙女と鮎川に伝えた。「一刻も早く伝えたくて、ステージの裏で。みんなで握手しました」。
鮎川は、しゅうを思ってしたことが裏切りと受け止められたショックで飛び降り自殺を図り、一命を取り留める優等生役を演じた。飛び降りる瞬間の、静かで切ない表情が「逆に絶望の深さを物語り、リアル」と評価された。鮎川は「今の10代はひとつの小さなイヤなことでも自分の中にため込んで、自分を追い込む方にいきがちなのかも」。自身も「余計なことを言って相手を怒らせて落ち込むことはある」と語り「一晩寝て、また会うと『きのうはごめんな』って。僕はすぐに言います」。
3人に「次に挑戦したい役柄」を聞くと、全員が「明るい役」と声をそろえた。「根性とか優しさとか仲間の大切さとか、人間としての基本のすべてを3Bの教室で学んだ。つらくなった時は3Bを思い出して、歌もお芝居も、いろんなことに挑戦していきたい」と話している。
◆日刊スポーツ・ドラマグランプリ新人賞◆ |
順 位 |
俳優 |
総合 得点 |
最終得点 |
持ち点 |
作品 |
電話 |
ネット |
1 |
金八トリオ |
15134 |
7152 |
609 |
7373 |
3年B組金八先生 |
2 |
村上 信五 |
10396 |
4442 |
590 |
5364 |
はぐれ刑事純情派 |
3 |
大泉 洋 |
4534 |
593 |
521 |
3420 |
救命病棟24時 |
4 |
中村 友也 |
3809 |
1187 |
383 |
2239 |
H2 君といた日々 |
5 |
小出 恵介 |
3807 |
650 |
333 |
2824 |
ごくせん |
|
|
※金八トリオは八乙女光、薮宏太、鮎川太陽 |
持ち点差は2位の村上信五と約2000点だったが、最終投票との合算結果で約5000点差をつけての圧勝となった。最終投票のわずか2週間前に最終回が放送されたタイミングも追い風になったとみられる。得票の75%が女性票という人気ぶり。年齢別にみると20代からの得票が最も多く(53%)、続いて10代(19%)30代(16%)となった。
◆金八トリオ 今回は「3年B組金八先生」に生徒役で出演したジャニーズ勢3人を「金八トリオ」としてノミネートした。八乙女光(やおとめ・ひかる)は1990年(平成2)12月2日、宮城県生まれ。血液型O。鮎川太陽(あゆかわ・たいよう)は1991年(平成3)1月18日、東京都生まれ。血液型B。薮宏太(やぶ・こうた)は1990年(平成2)1月31日、東京都生まれ。血液型A。ジャニーズJr.の最年少ユニット「Ya−Ya−yah」のメンバー。「サマリー・オブ・ジャニーズ・ワールド」のYa−Ya−yahバージョンを7月29〜31日まで東京・品川アクアスタジアムステラボールで開催。
◆「3年B組金八先生」ストーリー 番組誕生から25年の区切りに当たる第7シリーズ。教育委員会勤務の坂本金八(武田鉄矢)が2年ぶりに桜中学に赴任、再び3年B組の教壇に立つ。今作では、軽度の発達障害を持つ少女とのかかわりを通して「ともに生きる」ことを学び、生徒の自殺未遂や覚せい剤中毒などのショッキングな出来事を通して命の大切さを見つめる。
◆新人賞の最終読者投票得点◆ |
順 位 |
俳優 |
作品 |
局 |
最終得点 |
1 |
金八トリオ |
3年B組金八先生 |
T |
7761 |
2 |
村上 信五 |
はぐれ刑事純情派 |
朝 |
5032 |
3 |
松下 奈緒 |
仔犬のワルツ |
日 |
2300 |
4 |
中村 友也 |
H2 君といた日々 |
T |
1570 |
5 |
安藤 咲良 |
アットホーム・ダッド |
フ |
1186 |
6 |
サエコ |
天花 |
N |
1181 |
7 |
大泉 洋 |
救命病棟24時 |
フ |
1114 |
8 |
近野 成美 |
仔犬のワルツ |
日 |
1084 |
9 |
小出 恵介 |
ごくせん |
日 |
983 |
10 |
堤下 敦 |
ナースマンがゆく |
日 |
956 |
※各期上位を対象に4月12日付紙面行った年間投票の結果 |
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