婦人科女医の盲点？

専門外の私のクリニックに、婦人科の患者さんが来られます。
今回来院されたご婦人は、35歳の方です。1月に渋谷区にある某レディスクリニックで膣内に無数の尖圭コンジローマを認め、手術を行いましたが、直ぐに再発したとのこと。ついこの間も診察を受けたのですが、「膣壁にビッシリです。」と診断されたそうです。尖圭コンジローマと診断されながら、治療しないことに納得が得られないので、専門外ではありますが、ブログで尖圭コンジローマについて詳細に述べている私のクリニックに来られました。

以前にも同じような病歴を聞いた覚えがあるので、「もしや？」と思いながら診察をしました。

【写真】は、このご婦人の左膣壁の所見です。写真の中央に凸凹の粘膜を確認できます。それを拡大したのが【下の写真】です。凸凹の部分の粘膜は表面平滑で色調もきれいな肌色の粘膜色をしています。これは、尖圭コンジローマではなく、正常の粘膜所見です。
この状態は、俗に云う「数の子天井」「イソギンチャク」「タコの吸盤」と称される女性性器の名器と呼ばれる膣所見です。

患者さんは私の言葉を聴き、今までの心痛を思い出しながら、始めは目をウルウルさせていました。出来るなら私がご相伴にあずかりたい名器というお話に、笑いを取ることが出来ました。そして元気に帰宅されました。

問題は、某婦人科医によって、このご婦人の名器が過去において一部ではあるにしろ失われたことです。この婦人科医は40歳代の女医だそうです。きっと、知識として名器と称される膣の概念がなく、イボイボ＝尖圭コンジローマと誤診する短絡的な思考回路なのでしょう。

過去にこの患者さんと全く同じケースを2005年だけで、すでに3例経験しています。

【＃1】
4月に来院した患者さんです。3月に婦人科の女医さんに、膣内に尖圭コンジローマがたくさん認められると診断されました。診察してみると、確かに膣内はイボイボですが、正常の粘膜で、やはり名器の持ちｔ主です。

【＃2】
5月に来院した患者さんです。婦人科の女医さんを4月に受診、子宮筋腫（白い矢印）と診断されましたが、その時に膣の中に尖圭コンジローマがたくさんあると診断されました。診察すると、やはり名器のイボイボでした。この女医さんは、何と！一番最初の渋谷区の某レディスクリニックの女医さんなのです。この女医さんは、膣内の尖圭コンジローマの患者さんをたくさん作っている（誤診）ことになります。困ったものです。

【＃3】
6月に来院した患者さんです。地方の婦人科を受診、膣内に尖圭コンジローマをたくさん認めると診断されました。診察すると、やはり正常のイボイボです。

【膣内の尖圭コンジローマ】
実際に膣内にできた尖圭コンジローマの所見です。膣の一番奥の子宮口から尖圭コンジローマの複雑な表面をしたイボイボが確認できます。今までの尖圭コンジローマと誤診をされた所見とは、明確に鑑別できます。

【膣内の尖圭コンジローマ②】
上記の症例をご覧になって、ご自分も誤診されたかもしれないと来院された32歳のご婦人の所見です。膣奥の子宮天蓋部にツブツブの集団を観察できます。残念ながら、これは明らかに尖圭コンジローマです。主治医の婦人科医の診断は正確でした。直ぐに治療を受けるように指示しました。

女性性器の名器という概念は婦人科の女医の盲点なのかも知れません。
婦人科の女医に「膣の中に尖圭コンジローマが出来ている」と診断されたら、一度、他の婦人科男性医師の診察を受けてみて下さい。つまらない誤診で、不幸な目に合わないためのご婦人方のチョッとした知恵です。

※もちろん、写真と内容は、患者さんの快諾を得ています。