21歳の吉田知加はこれです!
吉田知加



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 吉田知加から『吉田知加 〜12の花〜』と題された1stアルバムが届けられた。これまでの4枚のマキシシングルでいろんな面を見せてきただけに、アルバムには情念的なものや幸福感に満ちたもの、女性ならではの心の揺れなど12個の表情が描かれている。そこでそんな楽曲の細部に触れ、より深く吉田知加像に迫ってみたわけだが、彼女自身も「21歳の吉田知加はこれです!」と語っているように、ここには現在21歳の彼女の恋愛感が切り取られていて、彼女自身も「あっ、私、終わっちゃう!」と心配したほどに自分を出し尽くした手応えがあるようだ。

 

花は恋をしている女の人の
気持ちの揺れに似ている

●初めてのアルバム『吉田知加 〜12の花〜』が完成しましたが、どんなものを作ろうと意識していましたか。

吉田知加(以下吉田):特にテーマとかも全然持ってなくて…それこそ聴いてほしいものから順にどんどん入れていった感じなんで、この12曲をアルバムに入れると決まったときに「あっ、私、終わっちゃう!」って思ったんですよ(笑)。

●もう自分のすべてを出し尽くしたと思った?(笑)

吉田:はい(笑)。でも、その1分後ぐらいには「もっと聴いてほしい!」という感じで「これも聴いてほしい。あれも聴いてほしい」というものが出てきたから、そこで終わらずにすんだんですけどね(笑)。

●“12の花”というタイトルはどんな意味を込めて付けたのですか。

吉田:もともとすごく花が好きなんですよ。花っていろんな面があるじゃないですか。咲く瞬間とか、つぼみとか、枯れるときとか、人に踏まれるときとか、雨に打たれているときとか…そういうところが恋をしている女の人の気持ちの揺れにすごく似ていると思うんですね。花って今まで咲いていたのにちょっと踏まれるだけでペシャンってなっちゃうじゃないですか。女の人も好きな人のちょっとしたひと言でペシャンってなってしまうから、花のそういうところが女性らしくて好きなんです。で、「『12の花』っていいな」と思っていたら、これを逆から読むと“花の21”になるんですよ。私、21歳じゃないですか。だから「21歳の吉田知加はこれです!」みたいな思いを込めて、「これしかない!」という感じで付けました(笑)。

●なるほど(笑)。収録曲を見ても「倦怠犬−マンネリズム撲滅集より−」のタイトルがすごいインパクトだなと思ったのですが。

吉田:そうですか(笑)。いつも曲を作るときは、特にイメージとかを持って、そこに向かって作っていくという感じではなくて、勝手に出てくるというか…「結果がこれです」みたいな感じなんですね。だから、タイトルは最後に付けるんですけど、きっとこの曲を作ったときって「安心しやがって」というモードだったんですよ。気の弱い犬が大きな利口な犬にキャンキャンと吠えているだけというか。

●でも、さんざんキャンキャンと文句を言っても、結局は“もう 大好きなのにっ!”となるんですよね。そこが知加さんらしいというか。

吉田:ポロっと出ちゃったみたいな(笑)。別に実体験を歌っているわけではないんですけど、私の中から出てきたものだから、この歌の中の“あたし”は私なんですよね。

●歌詞的には「解放」が興味深いものだったりするのですが。

吉田:これは前向きの歌詞で、悲しくもなんともないんですよ。っていうか、女の人ってこうだと思うんです。別れるときはもう相手のことはどうでもよくなってしまう。これは女の人ならではだと思うんですね。男の人って、相手のことを好きじゃなくなってもつなぎ止めようとする…私の知っている男の人だけがそうなのかもしれないけど(笑)。そういう意味で、この歌詞はすごく女性らしさが出ていると思いますね。

●「RAIN is blind」は曲調的に70年代の歌謡曲みたいな感じで、この曲はそういうところに知加さんらしさが出ていますよね。

吉田:この曲は最初にメロディーだけが出てきたんですよ。ほんとに鼻歌みたいな感じで歌ってて…この曲を作ったときってホロ酔い気分だったんです(笑)。別にこの曲を世に出そうとかは考えてなくて、一人で楽しく歌っていただけなんですね。で、歌詞も全然考えていない段階で「昔っぽい感じにお願いします」って言ってアレンジをお願いして、出来上がったものを聴いて、その雰囲気に自分が入り込んで歌詞を一気に書き上げて…これは私の趣味の世界の歌詞なんですよ(笑)。外人が見ている日本の昔の映画のような気がしていて…もうね、すべてが私のツボなんです。相手の人との間に身分の差があって、こういう「本気になってはいけないのに本気になってしまう」みたいな恋愛が好きなんですよ。ある意味、あこがれているというか(笑)。

●そんな歌詞が、サウンドから引き出されたのですか。

吉田:そうですね。あと、この作品ができるちょっと前に『愛のコリーダ』を観てドキドキしていたときだったから、それの影響もあるかもしれない(笑)。

●サウンド的には「愛の巣」がロック調だったので印象的でした。

吉田:このころ私の中でプレスリー・ブームが巻き起こっていて…今も好きなんですけど、聴き狂っていた時期があったんですよ(笑)。で、プレスリーの曲の中で日本語のタイトルが「本命はお前だ」という曲があって、すごくキュンってなったというか…だって、“本命はお前だ”ってすごいじゃないですか。私もそう言われたい(笑)。だから、それぐらいインパクトのある歌詞が書きたかったんですよ。

●この曲は歌声もはじけていますよね。

吉田:恋の病初期症状ですね。そのときって、周りなんて全然見えていないし、実は全然カッコ良くないかもしれないんだけど、「誰よりもカッコいい〜」って思っちゃうぐらい舞い上がっているんで、そういう歌い方になりました(笑)。

 

来年の私にはどんな曲が
作れるのだろう?

 

●最後の「日向ぼっこ」の主人公は“貴方のために〜”と献身的で、“貴方に愛される私”を求めていた「愛シニ来テ欲シイ」の主人公とは正反対ですよね。この矛盾なところも女性らしいところでもある?

吉田:そうだと思いますね。女の人って「さっきまでこう言ってたのに、今は全然違うことを言っている!」ってところがあるじゃないですか。女の人の恋心なんて特にそうだと思うんですよ。「会いたい」と言ってても、実際に会うと「もう帰る」とか言い出したり(笑)。

●この「日向ぼっこ」の歌詞も自然に自分の中から出たものなのですか。

吉田:スラ〜って出てきましたね。これは昼間に書いたんですよ。

●やはり書いたときの時間帯によって、歌詞の内容は変わります?

吉田:関係すると思いますね。そのモードになりやすいというか。夜のすごくしんどいときに「あっ、やばい! おかしくなりそう!」ってなったりすると、曲を作ると落ち着くんですよ。だから、そのときに作ったメロディーや詞はほんとにつらいときにしか作れないものだったりするんですよね。

●また、この曲の歌声も幸福感に満ちあふれていて、情念的な「残骸−のこりもの−」とは印象が違いますよね。

吉田:すごく幸せだったんですよ。ずっとニヤニヤしっぱなしで…この最後の3行を歌っていると泣きそうになってしまうんです。今までも「刹那系」とかで「どうしたらいいの?」って感じで泣きそうになることはあったんですけど、これは幸せっていうか、愛しい気持ちが込み上げてきて泣きそうになっちゃうんですよ。聴いていても泣きそうになる。それぐらい自分の中にある何かを愛しいと思う気持ちが凝縮されていると思います。だから、私にも「刹那系」や「残骸」だけじゃなくて、こういう一面もあるんだぞと(笑)。

●確かに最後の3行で“愛してます”と言い切ってますよね。だから、その3行を最後に言うために、この曲がアルバムの最後の曲になったのかなと思ったのですが。

吉田:それを言いたかったんですよ。っていうか、この曲で終わりたかったんです。この曲が一番最後にできた曲なんですね。さっき「21歳の吉田知加はこれです!」って言ったじゃないですか。なので、最近できた曲を最後にしようと思って。

●曲順はこだわりました? 1曲1曲にカラーがあるから、曲順を考えるのも苦労したと思うのですが。

吉田:すごく悩みましたね。「痴人」は私の中で大きい曲なんで、この曲の位置をどこにするかが一番悩みました。とりあえず最初に「こうぶつ」を聴いてもらいたいってのがあって…1曲目は「こうぶつ」というのは決まってたんですよ。だから、この順番で聴いてもらいたいと思っているんで、「日向ぼっこ」が1曲目とかに来たらダメなんですよ。「残骸」の私を知ってもらって、「刹那系」の私も知ってもらって、私の全部を知ってもらってから、「日向ぼっこ」を聴いてもらいたい。

●また、曲によってアレンジャーが違っているだけに、サウンド的にも1曲1曲が色を持っていますよね。

吉田:これは助けられたというか、よりいろんな世界を引き出してもらったと思うんですよ。例えば「RAIN is blind」は歌詞を最後に書いたって言ったじゃないですか。この曲のアレンジを別の方にしてもらっていたら、この歌詞じゃないものができていた気がするんですね。それを思うと、私は「この音をここに入れて〜」って細かいところまで言えるほどではないので、すごい支えられていると思うんですよ。「旦那さん 〜日頃の感謝を込めて〜」のアレンジをお願いしたときなんて、私は「温かい感じでお願いします」としか言えなかったんですけど、「古井さん(古井弘人、ガーネットクロウのキーボード&アレンジメント)、ありがとう!」という感じですからね。このアレンジが出来上がってきて、それを聴いたときに「古井さんって温かい人なんだろうな」って思いましたよ(笑)。

●確かに古井さんらしいアレンジですよね。ガーネットクロウとかの楽曲のように温かい空気を持っているというか。

吉田:そう、空気があるんですよ。冒頭の2行がすごく言いたい歌でもあるんで、もう泣きそうになってしまう。この古井さんのアレンジもそうだし…もうすべての曲に於いて「このアレンジしかないだろう!」って思えるんです。それってすごいことだと思んですよね。ほんと大好きなアルバムになりました。

●このアルバムを作った後の達成感はどんなものでしたか。

吉田:作り終わったときは、最初に言ったみたいに「あっ、もう終わっちゃう」っていう感じで…アルバムを作り始めたときから「私、もう終わっちゃうかもしれない。もう曲が作れないかもしれない」って言ってましたからね(笑)。それぐらい自分が出せたと思うんで、ほんと「21歳の吉田知加はこれです!」という感じです。

●そう思えるぐらい今の自分を吐き出せたから、次のステップに心置きなくいける?

吉田:そうですね。例えば「こうぶつ」って1年以上前にできた曲なんですね。で、今の私にもこういう心境はあるんですけど、絶対に今の私に「こうぶつ」は作れないと思うんです。だから、「来年の私にはどんな曲が作れるのだろう?」というのがすごく楽しみなんですよ。こうやって取材を受けた雑誌とかに“今後に期待”って書かれたりするんですけど、世の中で一番吉田知加の今後に期待しているのは自分自身だと思います。

●そうやってまた新しい自分を発見していくという感じですか。

吉田:そうですね。「あっ、こんな面もあったのか!?」とか…それこそ今は恋愛の曲が多いけれど、恋愛じゃない曲も歌っていくと思うし…もうね、すべてが花なんですよ。1曲1曲に花があると思うんですよね。



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new album

『吉田知加 〜12の花〜』

GZCA-1077
GIZA studio
¥3,059
5月23日発売

 

 

 

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