有望なシナリオライターの発掘を目的として設立され、今年で5回目を迎える「日本テレビシナリオ登龍門」の受賞者が決定し、その表彰が行われた。 日本テレビのプロデューサー・ディレクターを始めプロの脚本家を加えた選考委員が審査に当たり、その方法も一部変更して、より本格的でプロを目指した脚本家が選ばれた。 第一次審査は「LOVE」をテーマに脚本を募集、3351作品が集まった。 その後「連続ドラマの企画と第一話のシナリオ」という二次課題作成及び面接を重ね、本年度の受賞者が決定。 選考にあたったシナリオ登龍門事務局の角田プロデューサーは 「今年は選考方法も変え、作品ではなく人を選びました。『脚本コンテスト』から『プロの発掘』に変わったといえるでしょう。技術的には年々レベルが上がってきていますが、その分個性が見えなくなった。今回イメージが広がるように「LOVE」をテーマにしましたが、かえってイメージを狭めてしまった気がします。ラブコメディーなどが少なかったですね」 |
今年は、大賞受賞はなし。 優秀賞には伊藤直子さん(33)の「ラブライフ」(写真右)と 藤井清美さん(28)の「The Last 10 Months」(写真左)の 二作品が選ばれた。 準優秀賞には新野高司さん(25)の「キスの封印」・島津由佳子さん(27)の「灰の庭」・山崎岳さん(24)「水色」の三作品が受賞した。 ( 応募総数:3351作品 ) |
受 賞 者 紹 介 |
【 優秀賞受賞 】 ★ 伊藤 直子 (いとうなおこ) |
1966年生まれ。早稲田大学教育学部中退。 出版社で「popteen」「ペントハウス スペシャル」「日経ウーマン」等の編集に携わり、98年よりフリーの編集・ライターとなる。青山シナリオセンターの本科に所属。 ●作品名「ラブライフ」 不倫関係の恋人の事故死以来、過去にとらわれているカメラマンの千草は生と呼ばれる克美と出会い、最初は互いに反発するが次第に愛し合うようかし、克美が事故死した恋人の子供だと分かり、千草は克美の元を去る。本へ帰国した千草の個展に、カメラマンのアシスタントとして働く克美が現れる。 ●受賞の言葉 「日本テレビのドラマ『世紀末の詩』に感動し、自分も人を感動させる側になりたいと思ってシナリオセンターに通い始めました。そして、1年。初めての作品で選ばれ、すごく幸せです。でも、これはゴールではなく、プロの脚本家への第一歩。今後の励みとしてがんばりたいです!」 「将来は、女性が女性を内部告発するような重めのドラマを書きたいですね。ようなものを表現したいですね」 |
【 優秀賞受賞 】 ★ 藤井 清美 (ふじいきよみ) |
1971年生まれ。徳島県で育つ。 筑波大学第一学群人文学類卒。 93年より劇団青年座文学部に所属。劇作・演出・翻訳・演出助手として幕を開けた舞台は、ここ6年だけで40本にのぼる。 ●作品名「The Last 10 Months〜10ヶ月〜」 シナリオライターの響子の元へ大学時代からの友人、島沢から手紙が届く。彼は病院で余命10ヶ月を宣告されたのだ。彼は自分が生まれた病院で残された時を響子と過ごすことを望む。今日子は受け入れスケッチブックにあらゆる問いを書き、答えを積み上げながら自分たちが生きている意味と、お互いの関係を問うていく。響子は島沢の死により愛することの裏側にある失う恐怖を受け入れる。 ●受賞の言葉 「舞台での実績はあったけれど、テレビドラマの脚本を書いたのは始めてだったので嬉しかった。今後の自信になります。これからは、舞台の仕事とテレビの脚本の仕事を両立させていきたい」 「将来はフィクションの中で生きる人々を描きたい。セリフで笑わせるのではなく舞台で時間をかけて作り込む笑いのようなものをテレビで表現したい。コメディーなどもやりたいですね」 |
【 準優秀賞受賞 】 ★ 新野 高司 (あらのたかし) |
1974年生まれ。青山シナリオセンターで学ぶ。 現在は会社員として働きながら書いている。 ●作品名「キスの封印」 幼なじみの勝沼に恋人出来た宣言をされ、はじめて自分の気持ちに気付く祥子。勝沼を奪おうと思ったものの紹介された恵は感じのいい子。諦めるしかないと思ったが、実は恵はしたたかな女だった。祥子は自分の気持ちを伝えることを決心するが、勝沼に「今の関係を壊したくない」といわれ、自分の気持ちを封印する。 |
【 準優秀賞受賞 】 ★ 島津 由佳子 (しまづゆかこ) |
1972年滋賀県出身。滋賀文教短期大学国文科卒 食品会社に勤める傍ら友人の劇団の手伝いをしていたが、そこで脚本と出会い、退職。アルバイトをしながらシナリオ登龍門に応募し続け、今回は4回目。 ●作品名「灰の庭」 両親のいない透は祖母に育てられ、近所に住む咲とは母子同然の暮らしをしていた。咲の夫で作家の暁良の破天荒な性格にはいつも悩まされていたが妻を失った身を案じ、自分の咲への思いにけじめをつける為に暁良の元を訪ねる。そこで幼馴染の美雪を巻き込んで奇妙なひと夏の生活を送る。そこで透は残された咲の手紙によりある事実を知る。 |
【 準優秀賞受賞 】 ★ 山崎 岳 (やまさきたかし) |
1975年1月18日生まれ、25歳。 高校卒業後、22歳の時、日本大学芸術学部映画学科脚本コース入学。現在同学科同コース4年生在籍中。将来の予定は未定。脚本家志望。 ●作品名「水色」 伸一と夏美は幼馴染。二人は仲のよかった友人・拓を亡くした。伸一と拓は夏美を賭けて素潜りの競争をし、拓は溺死したのだ。夏美は父がリストラされ父の上司と寝ることで父の再就職を約束する。荒んだ夏美の心を癒す術を知らない伸一は焦燥するが、二人は互いに強い愛情を持ちながらも傍で生きていけないことを知り、別れを決意する。 |