携帯業界に波紋 ソフトバンクがiPhoneを7月に投入

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携帯業界に波紋 ソフトバンクがiPhoneを7月に投入

ソフトバンクは10日、第三世代携帯電話の「iPhone 3G」を7月11日から発売すると発表した。米アップルが同日に全世界で発売することにともなうものだ。

成熟市場の起爆剤か

携帯音楽プレーヤー「iPod」を内蔵し、斬新なデザインを売りに、消費者だけでなく携帯電話業界に衝撃を与えたiPhone。昨年6月の米国での発売以後、世界各地で販売エリアを拡大している。携帯先進国の日本で取り扱うのはシェアトップのNTTドコモか、はたまた孫社長の交渉力でソフトバンクか、とつねに話題の的となってきた。下馬評ではドコモ有利との声も多かった。予想を覆す展開に、ソフトバンク端末を主体に取り扱う販売代理店社長も「まったく知らなかった。端末メーカーからも、ドコモに決まりそうだと聞いていたから」と驚きを隠さない。

「販売現場の起爆剤になる」「発売日に行列ができる商材だ」と販売代理店が期待する一方、国内の端末メーカーは「アップルのブランド力が怖い」と本音をのぞかせる。米国での発売からちょうど1年が経ち、発売当初の熱狂的な状況はだいぶ落ち着いた。業界では「コアなファンがいるので、ある程度は売れるだろう。ただ長く売れ続けるかどうか」「日本の携帯文化にどれだけなじむのか疑問」という声もある。

国内携帯市場は、成長頭打ちと買い替えサイクルの長期化を受け、端末メーカーや代理店の再編が進んでいる。国内3キャリアの間では値下げ競争もほぼ一巡。今後は先進的なサービスに加え、個性的な端末による顧客獲得が勝負所になってくる。

先頃、携帯各社が発表した夏モデルにも工夫が見て取れる。ロゴを変え「新ドコモ宣言」で既存顧客重視を表明しているNTTドコモは、「オールラウンド動画ケータイ」をコンセプトに、動画コンテンツやサービスの拡充を訴求。家の外では無線、家の中ではブロードバンド回線を使う携帯など、固定と移動の融合サービスも展開する。先進的というイメージが失われつつあったau(KDDI)は、アディダス社との提携を打ち出し、歩数や消費カロリーを計測できるスポーツ色が強い携帯を投入。最後の発表となったソフトバンクは、「女性」をテーマに防水機能やサイズ感にこだわったさまざまな端末を取りそろえた。

高機能端末が数多く開発され、独自の成長と発展を遂げてきた日本市場。iPhoneはどれほど受け入れられるのか。端末開発動向の今後を占ううえでも、業界の注目は高まる一方だ。

(撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済)

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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