シークヮーサー使った洗濯再現 芭蕉布「ぱりっと」 体験談を基に手作業


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シークヮーサーの搾り汁で芭蕉布を洗濯する喜如嘉芭蕉布事業協同組合の宮城涼子さん=17日、大宜味村(大城直也撮影)

 沖縄県大宜味村教育委員会は17日、旧大宜味小学校跡地でシークヮーサーを使った、昔ながらの芭蕉布の洗濯を再現した。かつて市販の洗剤がなかった時代、シークヮーサーで洗ったという体験談が聞かれるが、文章や写真の記録はほとんど確認されていない。同村の喜如嘉芭蕉布事業協同組合が協力し、丁寧な手作業を経て約60年前の芭蕉布がぱりっと洗い上がった。

 琉球弧全域で動植物を使った昔の暮らしについて聞き取り調査をする当山昌直さん(沖縄生物学会副会長)によると、シークヮーサーでの洗濯は大宜味村のほか国頭村、恩納村、那覇市、南城市などで聞かれた。汚れを落とすというより「くたびれた布を再生させるため、数年に一度やっていたようだ」と語った。

 一方、喜如嘉芭蕉布事業協同組合の平良美恵子理事長によると、芭蕉布の先進的な生産地である喜如嘉では「シークワーサーを使った話はほとんどない」という。戦前はカタバミやイモ、戦後は米を発酵させて酢にした「ユナジ」を使う。ユナジは芭蕉布を漂白し、滑らかな手触りにする。新しい芭蕉布の制作時や芭蕉布衣装を着た後の洗濯時に現在も続く方法だ。

シークヮーサーの搾り汁で洗濯した芭蕉布を干す喜如嘉芭蕉布事業協同組合の平良美恵子さん(左)と宮城涼子さん

 この日の再現では、喜如嘉で唯一聞かれたという体験談を基に、シークヮーサーの実12キロの搾り汁をユナジに置き代えて、約60年前に織られた着物用の反物を洗った。洗濯液の中で丁寧に押し洗いし、すすいで半乾きにした状態で手で布を引っ張って伸ばした後、湯飲みのへりで何度も表面をこすってしわを伸ばす。芭蕉布は破れやすいため力加減に注意し、1日がかりでこの作業を繰り返すという。

 当山さんと聞き取り調査を続ける沖縄大学の盛口満学長は「実際に見るとどれだけ手間がかかるかもよく分かる」と写真やメモで記録していた。再現工程は大宜味村史に収録される。本紙連載「うとぅすいぬ宝箱」でも12月10日付で詳報する。