歴史文化の発信拠点や観光拠点としての広島城の魅力向上に取り組む広島市は、広島城の三の丸エリアに公募設置管理制度(Park-PFI)を活用して、にぎわい施設や多目的広場を整備する。このほど施設の整備と、整備後に広島城区域を一体的に管理運営する事業者に、中国放送を代表とする企業グループの広島城アソシエイツを選定した。

事業者による提案概要(出所:広島市)
事業者による提案概要(出所:広島市)
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 事業の名称は広島城三の丸整備等事業で、内容は公募で選ばれた事業者が公募対象公園施設として飲食・物販などの収益施設と、特定公園施設として多目的広場などの公園施設を整備し、広島城区域の用地(本丸、二の丸、三の丸、旧中央バレーボール場など)と建物(天守閣、二の丸復元建物、広島城三の丸歴史館など)を含めた全体の指定管理者業務を行うというもの。広島城三の丸歴史館は、三の丸エリアに市が新たに整備する博物館で、2026年度の開業を予定する。同館の学芸業務は別途、事業者を選定する。

水色の枠内が公募対象公園施設の整備可能範囲(出所:広島市)
水色の枠内が公募対象公園施設の整備可能範囲(出所:広島市)
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 広島城アソシエイツは温故知新をテーマに、広島城を歴史と文化に触れる場所として見つめ直し、観光拠点としてのポテンシャルを最大限に引き出すと提案。広島の歴史・文化の発信拠点として通過型から滞在型の観光地に変えるとともに、市民公園として生まれ変わる予定の旧広島市民球場跡地や平和公園や紙屋町といった周辺エリアと連携した回遊スタイルを定着させることを目指す。

 このコンセプトに沿って、具体的には、ご当地グルメを楽しめる飲食店や地元の物産品がそろう土産店からなる商業施設ゾーン、広島城の景観を楽しめ、広島県の伝統芸能や番組の公開放送などにも使う常設のステージを備えた多目的広場、天守閣や歴史館と視線がつながる景観ゾーン、観光バス乗降場、最大69台が駐車可能な平面駐車場を整備する。

 商業施設ゾーンは、広島城の景観を最大限に生かした建築デザインとし、広島県で生まれた茶道の上田宗箇流が監修したカフェを誘致。カキやお好み焼きなど広島の味としてなじみの深い食を楽しみ、着付けや半弓道などの歴史を感じる体験もできる「広島城の価値を伝え、残す」取り組みを実施する。建物は人々が集う中庭を中心にコの字型に配置し、外壁は塗り壁、屋根は黒のガルバリウム鋼板立てハゼ葺にして和風の雰囲気を出すなど、広島城の眺望や水堀を意識したデザインと施設配置とする。

 商業施設ゾーンの隣には、天守閣を眺望できる多目的広場を整備する。広場ではキッチンカーでグルメを楽しむことができ、広場に設置する常設のステージでは、神楽などを上演する。イベントがないときはデッキスペースとしても活用する。

 ソフト面では、神楽、盆踊り、七夕まつり、餅つきなど季節のイベントを実施するほか、グループのコンテンツ制作力を活用してテレビ、ラジオ、新聞、デジタルメディア、SNSを駆使して施設の魅力を発信する。歴史館の中には広島城区域で唯一の観光案内所が設置される。ホスピタリティに富んだ対面のコミュニケーションを大事にしながら、必要な観光情報を発信していく。

 観光バスの乗降所は、広島観光のネットワーク拠点として、ほかのエリアとも連携した情報発信機能を充実させるほか、次世代モビリティのポート設置なども検討し、街全体の回遊性を高める。平面駐車場でも一部を活用して、マルシェやキッチンカーなどの小規模イベントを随時開催する予定だ。

 これらのハード、ソフトの取り組みでエリアの魅力を高め、歴史館に年間40万人の入館者を呼び込むことを目指す。指定管理期間は、観光バス駐車場(中央公園バス駐車場)の供用開始日である2023年4月1日から公募設置等計画の認定の有効期間の終期である2043年12月末までの20年9カ月。商業施設ゾーンなどは2025年3月ごろ、多目的広場は2026年9月ごろの開業を予定する。公募時(関連発表)に市が示した指定管理料の上限は33億2920万円(税込み)。

 広島城アソシエイツは代表の中国放送のほかRCC文化センター、TBSホールディングス、フジタ広島支店、合人社計画研究所、エヌ・ティ・ティ都市開発、中国新聞社、中国四国博報堂の計8社で構成する。公募は2022年7~10月に実施し、応募は同グループだけだった。