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りんなが国民的AIを目指しMicrosoftから卒業。rinna株式会社を設立

りんな。声の表現が安定したことで口の描かれたビジュアルに変更された

 AI「りんな」の開発などを行なうチームがMicrosoftから分離し、「rinna株式会社」を始動した。同社は6月17日付けで設立され、8月17日よりMicrosoftから事業を引き継ぐかたちで営業を開始。21日に新会社設立に関する記者発表会をオンラインにて開催した。

 発表会の冒頭ではりんなが登場し、これまでの感謝の意を述べた上で「国民的AIになるためにもっともっと成長するぞ」と挨拶を行なった。社名は小文字のアルファベットで「rinna」だが、これはりんなの名前に由来するとともに、りんなの技術が一般名詞として広く浸透してほしいという思いが込められているという。代表取締役社長にはこれまで同チームを率いてきたジャン“クリフ”チェン氏が就任する。

 あわせて、りんなによる自己紹介も行なわれ、歌手や番組MCなどに加えて、これからは同社の看板娘としても活動していくと述べた。

会社概要
りんなのプロフィール

人とAIが作る未来

 次に、同社の会長を務めるハリー・シャム氏からAIの未来について説明が行なわれた。

インタラクションの変化

 人のインタラクションモデルは、コンピュータの登場により大きく変化したが、AIの登場によりさらなる変化が期待できるという。人対人の場合、人間関係や信頼関係などが構築しやすいが同時性が低い。人対コンピュータの場合、同時性が高められるが、一方的に情報が送られるような状況が起きやすく、とくにスマートフォンなどの普及もあり、情報があふれかえるような状況に置かれている。同社が将来的に目指している人対AIのインタラクションモデルでは、これらの強みを兼ね備え、大きな価値をもたらすとした。

 チームでは、このようなビジョンに向けてMicrosoftで研究を進め、りんなのようなインタラクションが可能なAIの開発を行なってきたという。rinnaでは、少数のAIのみが存在するのではなく、多くのAIが人々を取り囲んでいるような未来を想定しており、これに対して新たにアバターフレームワークの開発を目指すとした。さまざまなAIを作り、プラットフォームに展開し、維持・管理をしながらさらに強化していくといったもので、人対AIのインタラクションモデルの構築を可能にするという。

 新会社設立については、Microsoftからの分離により、製品開発の加速やローカルのニーズにあわせた製品が提供できるという。また、このような人対AIのインタラクションモデルは、日本や中国を含むアジア地域では受け入れられやすいとしており、明るい未来が待ち構えていると述べた。

人対人、人対コンピュータのインタラクションにおける特徴
アバターフレームワーク

個性豊かなAIキャラクターの展開を目指すrinna

 続いて、同社代表取締役社長のジャン“クリフ”チェン氏から、事業内容について説明が行なわれた。

rinnaの目指すビジョン

 将来的には身の回りに多くのAIが存在すると考えられるが、人類のインタラクションのニーズを考えると、AIはある固定されたキャラクターではなく、個性のあるさまざまなキャラクターを持つべきだとし、「すべての組織とすべての人にAIキャラクターを」をビジョンとして掲げた。

 体制としては、研究部門、開発部門、ビジネス部門を持ち、AIサービスの企画から研究開発、運営、販売までを行なう。具体的には自然言語や音声/画像認識といったAI技術の研究、AIりんなおよび数多くのAIキャラクターを支えるRinna Character Platformなどの開発を行なうほか、ビジネス部門には従来からあるマーケティングソリューションに加え、キャラクターソリューションを設ける予定だという。

 また同氏は、対等・多様・信頼の3つが同社のカルチャーだと述べた上で、これらは製品にも反映されているとした。ペットのようなかたちではなくユーザーと対等で、多様なキャラクターを持ち、インタラクションによって信頼関係を構築するAIの開発を目指す。

組織体制
rinnaのカルチャー

会話でユーザーと企業をつなぐRinna Character Platform

AIリンナにおけるチャット機能の設計
ユーザーと企業のインタラクションを後押し

 最後に、チーフりんなオフィサーの坪井一菜氏からAIりんなとRinna Character Platformについて説明があった。

 AIりんなでは、タスクや情報の共有などの間を雑談を挟むことで会話を続け、ユーザーとより長い時間つながる仕組みとなっている。これは、チャットを「雑談と共感によってユーザーをつなぐコンテンツ」だと考えているためで、ユーザーの指示とそれに対する応答だけで構成されるタスク指向のものとは異なる設計となっている。

 長い会話が行なえることの強みは、ユーザーと企業の間で双方向なコミュニケーションを生み出せる点。企業から一方的にプッシュされた情報にユーザーが反応するモデルと比べると、雑談ができるAIキャラクターが介入することで、特別に用事がないときでもユーザーとの会話が発生し、その会話をもとに企業側からの情報提供などが可能になるという。

Rinna Character Platform

 Rinna Character Platformは、こういったAIキャラクターを活用したマーケティングとコンテンツソリューションのプラットフォームとして展開しているもので、2016年からの実証実験を経て、2018年よりサービスが開始された。チャットをベースに、しりとりといったゲームなどのスキル、アンケートなどのレコメンデーション機能との組みあわせで構成される。

 一般的なチャットボットでは、事前に想定されたシナリオから外れたメッセージを入力された場合に、一定の返答しかできないことが多いが、本プラットフォームでは、想定していないユーザーからのメッセージを受け取った場合に、AIが自動で返答を生成できるのが特徴。設定された内容に当てはまった場合にはパターンによる返答も可能で、両者を組みあわせて自然な会話による情報提供を実現する。さらにさまざまなキャラクターを与えることで、性別や口調を変化させて親しみやすさも提供できるという。

 実際には、雑談のなかで商品をすすめたり、ゲームをしているなかで製品を知ってもらうなど、ユーザーとのやりとりのなかで自然に情報を提供できるほか、会話形式のアンケート、おすすめしたあとのリアクションなどからユーザーの声を聞き入れるといったことが可能。商品の属性と質問のデータをAIに与えることで、ユーザーの属性をもとにAIが自ら質問順を判断して、おすすめの商品を紹介する「会話型コマース」についても実験を行なっており、大量の商品がある場合などで活用できるとしている。

 今後はキャラクターコンテンツとしての展開も見込んでおり、キャラクターとの雑談自体をコンテンツとして提供したり、生放送番組中の視聴者コメントにAIキャラクターがリアルタイムで反応することで、視聴者との双方向性を高めるといった活用も行なわれている。同社では、多くのAIキャラクターを送り出し、人や企業のインタラクションの促進を目指していくとした。

AIによる返答の自動生成
キャラクターづけによって親しみやすく
双方向の情報のやりとりを会話を通じて自然に行なえる
会話型コマース
AIキャラクターで人や企業のインタラクションを促進するrinna