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70年ぶりの王位継承、共和制移行論議はどうなるの?

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オーストラリア人の大統領を元首とする憲法改正の行方

オーストラリア国旗(Photo: Wikipedia)

 歴史的背景から英国王を国家元首とするオーストラリア。だが、20世紀後半には地理的に離れた英国など欧州との関係が相対的に薄まり、アジアとの経済関係を強化する「脱欧入亜」を進めた。移民を欧州系の白人に限定した「白豪主義」も1970年代に廃止し、世界各地から多様な民族が流入。もともと主流だった英国系住民の割合は相対的に低下した。

 このため、90年代になると「独立した主権国家なのに、外国人の国王を国家元首とするのはおかしい」との声が高まった。英国王を元首とする立憲君主制を廃止し、オーストラリア人を元首とする共和制を目指す勢力が、「共和制移行運動」を推進した。

 99年には、「連邦議員の3分の2以上の多数で選ばれる、任期5年の大統領を元首とする共和制に移行する憲法改正」の是非を問う国民投票が実施された。ところが、国民投票では共和制移行案が反対約55%、賛成約45%で否決された。これを機に、共和制移行の機運は下火になっていった。

薄れたダイアナ元妃の記憶

 この頃、オーストラリアでは、王位継承権1位だったチャールズ皇太子(当時)の人気が凋落していた。後に再婚するカミラさん(現王妃)との不倫、96年のダイアナ妃(当時)との離婚、97年のダイアナ妃の交通事故死など、一連の英国王室をめぐる混乱がその背景にあった。

 そのため、「エリザベス女王がいずれ死去すれば、オーストラリアで人気の低いチャールズ国王は支持されない。共和制移行の論議は再燃するだろう」といった声も聞かれた。

 しかし、それからおよそ四半世紀の年月を経て、スキャンダルの記憶は薄れ、共和制移行論議そのものを知らない若い世代も増えた。オーストラリア国民に愛され、人気の高かったエリザベス女王は96年間の長寿をまっとうした。

最新の世論調査で「賛成」は36%

 長年の経済的繁栄を背景に、「特に問題もないのに、国家形態をわざわざ変える必要がない」という意識も浸透しているようだ。今年1月に地方紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」が掲載した共和制移行に関する世論調査によると、「賛成」が36%、「分からない/どちらでもない」が38%、「反対」が27%だった。

 90年代に共和制移行を主導した労働党の現政権も、優先課題には掲げていない。アンソニー・アルバニージー首相は、共和制移行よりも、「先住民の声」を明記する憲法改正に取り組む姿勢を明確にしている。

 エリザベス女王の死去とチャールズ国王の即位をきっかけに、オーストラリアで共和制移行論議は再燃するのか。「答はノーだ」(公共放送ABCテレビ)との見方が有力となっている。

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