京都市営地下鉄烏丸線の40年ぶりとなる新型車両20系が8月に報道公開され、10月に一般向けの車両見学会が開催される。「京都らしさ」を盛り込んだ車内設備などが話題になる中、烏丸線と相互直通運転を行う近鉄沿線からも期待の声が上がりそうだ。

  • 京都市営地下鉄烏丸線の新型車両20系。2022年春のデビューを予定している

■新型車両20系を9編成導入、10系の前期車を置換え

最初に京都市営地下鉄烏丸線と、新型車両20系の概要を確認しておきたい。烏丸線は国際会館駅から竹田駅まで、京都市内を南北に結ぶ全長13.7kmの地下鉄路線である。京都市内の中心部を貫くことから、他線との接続駅が多く、烏丸御池駅で京都市営地下鉄東西線、四条駅で阪急京都本線、京都駅でJR線や東海道新幹線と接続し、竹田駅から近鉄京都線・奈良線へ乗り入れる。

烏丸線は京都市電の全廃から3年後の1981(昭和56)年に北大路~京都間が開業。1988(昭和63)年に京都~竹田間が開業し、近鉄京都線との相互直通運転を開始した。1990(平成2)年に北大路駅から北山駅まで延伸、1997(平成9)年には国際会館駅まで延伸され、現在の区間に。京都市内における主要公共交通機関のひとつとして、平日日中におおむね7~8分間隔で列車が運行されている。

  • 烏丸線の開業当時から活躍する10系(前期車)。急行として近鉄奈良駅まで乗り入れることも

  • 烏丸線の10系は前期車・後期車で外観が異なる

開業当初から今日まで、烏丸線で活躍を続ける車両が10系だ。アルミ車体にロングシートを基本としつつも、製造時期により前期車(1・2次車)と後期車(3次車以降)に大別でき、外観も異なる。このうち前期車はデビューから40年が過ぎ、コロナ禍の前から車両更新が課題となっていた。

2022年春にデビュー予定の新型車両20系は、2025年度までに計9編成を導入し、10系の前期車を置き換える。新型車両のデザインは市民および利用者を対象とした投票も考慮され、丸みを帯びた近未来的な外観となった。車内外の各所に京都の伝統産業素材・技法を活用したほか、両先頭車に多目的スペース「おもいやりエリア」を設置している。

  • 烏丸線の新型車両20系の車内

  • 新型車両20系の多目的スペース「おもいやりエリア」

京都市営地下鉄は東西線の建設費が膨らんだことから巨額の借金を抱えており、2015(平成27)年度に開業以来初の黒字決算を達成したものの、決して楽観視できる経営状態ではなかった。そこへ新型コロナウイルス感染症が経営を直撃。2020年度の赤字額は地下鉄だけでも61億円にのぼり、運賃値上げや列車の減便もささやかれている。このタイミングで新型車両を導入することに対し、さまざまな意見も聞かれるが、京都市営地下鉄にとって明るい話題であることは間違いない。

■相互直通運転で京都・奈良の中心部を結ぶ急行も

烏丸線は現在、近鉄京都線・奈良線と相互直通運転を行っており、烏丸線の車両が近鉄奈良駅まで乗り入れ、近鉄の車両も国際会館駅まで乗り入れてくる。烏丸線の新型車両20系も、デビュー後は近鉄京都線・奈良線へ直通する運用に就くだろう。

烏丸線と近鉄線の相互直通運転は1988(昭和63)年から始まったが、当初は近鉄京都線の新田辺駅までで、普通のみの乗入れだった。新田辺駅は京都府京田辺市(1997年の市制施行前は京都府田辺町)にあり、人口増加の著しかった京都府南部から京都市中心部への足を確保することが目的だった。

この相互直通運転の重要性が増したのは、2000(平成12)年に行われたダイヤ改正からだった。国際会館~近鉄奈良間を直通する急行が設定され、烏丸線の10系が近鉄奈良駅まで乗り入れるようになった。直通急行は烏丸線の各駅に停車し、竹田~近鉄奈良間の停車駅は従来の急行と同じ。国際会館~近鉄奈良間の所要時間は約75分(日中時間帯)となり、2つの古都の中心部をダイレクトに結ぶことから大いに注目された。

現在、国際会館~近鉄奈良間を直通する急行は朝ラッシュ時から日中時間帯にかけて、おおむね1時間間隔で運行されている。さらに、国際会館~新田辺間を直通する普通が早朝から深夜まで運行され、日中時間帯は1時間に2本程度となっている。

  • 国際会館行の普通として近鉄京都線を走る3200系

つまり、烏丸線の車両事情は京都市民だけでなく、乗入れ先である近鉄京都線・奈良線の沿線利用者にとっても無視できないニュースといえるのだ。

■近鉄の通勤車両は10年以上も新造されていないが…

烏丸線の新型車両に対し、近鉄沿線からも期待の声が聞かれる背景には、近鉄ならではの事情が隠されている。近鉄は特急車両を新造する一方、通勤車両の新造は10年以上にわたって行われていない。その間に「しまかぜ」や「ひのとり」が華々しくデビューし、強いインパクトを与えただけに、少し意外な印象を受ける。

最後に新造された通勤車両は、次世代の一般車両として開発された「シリーズ21」系列の9020系と9820系。最終製造年は2008(平成20)年であり、どちらも前面貫通式の片側4扉・ロングシート車両となっている。9020系は2両編成、9820系は6両編成で、おもに奈良線や京都線、橿原線などで活躍している。

烏丸線へ乗り入れる近鉄の車両は、1986(昭和61)年デビューの3200系と、2000(平成12)年デビューの3220系。2021年9月現在、烏丸線を走る車両の中で最新の形式である3220系も「シリーズ21」系列に属するが、3編成しか存在しない。

  • 近鉄の「シリーズ21」系列の車両3220系。烏丸線にも乗り入れる

近鉄も新型コロナウイルス感染症の影響で旅客収入が減少している。一方、夢洲と近鉄沿線の観光地を結ぶ直通列車(新型車両の開発)については検討を継続するとしており、いまは本格的な通勤車両の新造・増備が難しい環境にあるといえるだろう。とはいえ、古い車両をそのまま走らせているわけではなく、2015(平成27)年から車内壁面や床面のカラーリング変更、座席モケットの更新などを盛り込んだ更新工事を実施している。

烏丸線に直通する3200系も更新工事を受け、3220系とともに最新車両と比較しても決して見劣りのする車両ではない。ただし、烏丸線の新型車両20系がデビューし、近鉄京都線・奈良線を走ることで、沿線利用者から近鉄の新しい通勤車両を望む声が高まる可能性もある。20系登場後の近鉄京都線・奈良線の変化にも注目したい。