櫻井孝宏が『ジョジョ』と露伴を語り尽くすッ! 酸欠になっても演じる“奇妙な”愛情

「すげえ嫌なやつ」「こいつ本当にやべえ」

少年時代の櫻井孝宏が抱いた、岸辺露伴への第一印象だ。

『ジョジョの奇妙な冒険』第4部(ダイヤモンドは砕けない)に登場する天才マンガ家・岸辺露伴は、いい作品作りのためなら命すら危険に晒す変人。それでいてスピンオフ『岸辺露伴は動かない』では主人公として活躍するなど、シリーズ屈指の人気キャラである。

2016年のTVアニメから現在まで、約5年間にわたって露伴を演じてきた櫻井。最悪の第一印象から長い長い時を経て、今の櫻井には露伴はどんな人物に映っているのだろうか。1987年の連載当初から『ジョジョ』を追い続けてきた櫻井に、『ジョジョ』愛と岸辺露伴への想いをたっぷりと語ってもらった。

撮影/西村康 取材・文/岡本大介

第1部のラストとその翌週の展開には、心底ビックリした

櫻井さんと『ジョジョの奇妙な冒険』(以下、『ジョジョ』)の出会いについて教えてください。
子どものころから『週刊少年ジャンプ』(以下、『ジャンプ』)を愛読していたので、『ジョジョ』は連載開始当時からリアルタイムでずっと読んでいました。荒木(飛呂彦)先生の過去作品も読んでいたので、「荒木先生の新作かあ」と思った記憶があります。
ジョジョ以前からすでに荒木作品の読者だったんですね。
そうですね。『魔少年ビーティー』や『バオー来訪者』は『ジャンプ』で連載されていましたし、『ゴージャス☆アイリン』もチェックしていました。当時の『ジャンプ』は「陽」なイメージの作品が多くて、荒木作品のような「陰」な作品は珍しかったですし、連載陣のなかでもちょっと浮いた存在だったと思います。
当時の『ジャンプ』の人気作品といえば『ドラゴンボール』や『キン肉マン』、『キャプテン翼』などでしたから、異色ですよね。
そう。ちょっと古めな劇画タッチなのも珍しかったし、あの特有のパンチのあるセリフも異彩を放っていました。
櫻井さんは、当時から『ジョジョ』にハマったタイプですか?
いえ。毎週欠かさずにチェックはしていたんですけど、正直に言えばお目当ての作品ではなかったです。

ただ第1部のラストで主人公のジョナサン・ジョースターが死んで、その翌週にはいきなり舞台が50年後に飛び、孫のジョセフが新たな主人公として登場するという展開に心底ビックリしたのは覚えています。僕の知っているマンガのセオリーやトレンドからは大きく逸脱していて、「なるほど、『ジョジョ』ってそういう作品なんだ」ということをだんだんと学んでいったんです。

その結果、第3部で空条承太郎が登場したときには「うおおっ」と思って、ちょっとやられました(笑)。
世間的にも、第3部で一気にメジャーにのし上がった感じがあります。
ですよね。そのころになってようやく荒木作品のマナーというか、読み方を読者側が心得てきたのかなと思います。僕の周囲の友人たちも、そこでグッと前のめりになってハマっていった感じがありましたね。
それまでの波紋バトルからスタンドバトルとなったことも大きかったですか?
そうですね。波紋のときはやっぱりどこか難解なイメージもあったんですけど、スタンドはそれまで目に見えなかった超能力が可視化されたので、バトルは一気にわかりやすくなりましたよね。

当時はあの『ドラゴンボール』でさえ「気」を溜めて「ハアッ」って撃ち出していた時代ですから、このブッ飛んだ発想にはビックリしました。

第4部で好きなキャラクターは、トニオ・トラサルディー

『ジョジョ』は現在のところ第8部が連載中ですが、個人的にもっとも好きな部はありますか?
第4部ですね。第5部もかなり好きなんですけど、いちばんとなるとやっぱり第4部。

その前の第3部が世間的にすごく盛り上がったあとに、今度はリーゼントの主人公(東方仗助)が出てきて「何で?」ってなって(笑)。リーゼントなんて『ビー・バップ・ハイスクール』くらいでしか見たことがなかったので、時代的にも本来ならトゥーマッチなんですよね(※第4部は1992〜1995年に連載)。
でも、その外した感じが逆によかった?
それもありますが、何より「杜王町」という架空の街がとにかく怖くて、それに惹かれたのが大きいですね。もともとクローズド・サークルな雰囲気が好きなんですけど、この箱庭感のある世界が僕にはしっくり来たんです。
第3部が世界中を旅する展開だっただけに、かなりギャップを感じた記憶があります。
おっしゃる通りで、僕の友達の多くは第3部の広大なスケール感が好きだったので、第4部になって離れていった人も多かったんですよ。でも僕は逆に、その閉ざされた世界で起こる怪奇な事件やミステリー的な演出が好みで、どんどん好奇心が駆り立てられていったんです。

僕自身も田舎育ちで、杜王町に漂っているどことなく閉鎖的な雰囲気はすごくよくわかるし、親近感を覚えたんでしょうね。大人になった今ではこうやって言葉で表現できていますけど、学生だった当時はおそらく肌感覚でそれを感じ取っていたのではないかと思います。
なるほど。第4部でとくに好きなキャラクターというと誰ですか?
トニオですね、トニオ・トラサルディー。
スタンド「パール・ジャム」を操るイタリア人のシェフですね。かなりマニアックな人選ですね。
だって最高のスタンドじゃないですか? 仗助のクレイジー・ダイヤモンドとかもヒロイックでカッコいいなとは思うんですけど、突き詰めて考えてみると、料理を食べたら病気が治るのってすごく便利ですよね。
たしかに、現実世界に当てはめればかなり価値が高そうです。
いい年齢になった今では、とくにあの能力は欲しいですよ。それにトニオの登場エピソードも、『注文の多い料理店』みたいな演出ですごく面白いんですよね。

『ジョジョ』って基本的にはサスペンスやホラーなんですが、なかでも第4部はエピソードごとに演出や趣向がガラリと変わったりして、そのオムニバスっぽい雰囲気も好きなんですよね。

荒木作品には、読者に解釈を委ねる「余地」がある

櫻井さんは荒木作品や『ジョジョ』の魅力って、どこにあると思いますか?
(考え込みながら)う〜ん、何て言うんでしょう? これは最近思うことなんですけど、近年の娯楽作品というのは、とくにわかりやすく説明を求められるケースが多くなっている気がするんですよ。逆に言えば、ユーザー側に解釈を委ねるような作品は嫌われる傾向があるというか。

そういう意味では、荒木先生の作品は後者だと思うんです。独特のセリフまわしや絵のタッチはもちろん、「ズキュウウウン」とか「メメタァ」といった擬音、構図やコマ割りに至るまで「これってどんな状況?」とか「どう読めばいいの?」っていうことも多くて、そこには説明を省いた「余地」があるんですよね。
先ほど言っていた、荒木作品のマナーや読み方の部分ですね。
そう。独自のルールや難解な演出も、読み方がわかってくるとそれがある種の快感に変わっていくじゃないですか(笑)。『ジョジョ』は深く付き合うほどに味わいが深まってくる作品なんですよね。
一見すると取っつきにくいですが、そこが魅力でもあるんですね。
そうです。それに僕自身、あんまり性急に答えを出さなくてもいいじゃんって思うタイプなんです。演技でもそうなんですけど、セリフで丁寧に答えを出しちゃうのって野暮ですし、そこには何かしらの「汚す余地」があったほうがいいと思ってやっていますから。
その感覚は荒木作品と通じるものがありますね。「よくわからないけど面白い」だったり「どういうわけか引っかかる」と感じて好きになっていった人は多いと思います。
そうそう! 僕は子ども時代、父親に連れられてよく映画を観に行っていたんですけど、小学校低学年くらいのときに『ガンジー』を観たときの感覚と似ていますね。
小学校低学年で『ガンジー』ですか?
超キツかったですよ(笑)。田舎だし今ほど娯楽もない時代なので、父親から「映画行くぞ!」って言われたら、いつも喜んで付いていっていたんですよ。もちろん『スター・ウォーズ』のようなスペクタクルなハリウッド映画も観ていたんですけど、なかには難解で大人向けの作品も混じっていて。
それにしても『ガンジー』は厳しいです。かなりシリアスで複雑な歴史映画ですから、子どもにとってはハードですよね……。
しかもこれが3時間以上もある大長編なんですよ。ガンジーのこともまったく知らなかったし、ましてやインドが独立に至るまでの歴史的背景なんて理解できるわけもなく、僕はずっと「これってお坊さんの映画?」って思いながら観ていました(笑)。
ただ、超キツかったんですけど、不思議と「自分なりに理解しよう。なんとか食らいついていこう」という気持ちはあったんですよ。当時は思いっきり意訳してましたが、のちに「あれはこういう意味だったんだ」とか、折に触れては思い出すんです。

これはうまく言葉にはできないんですけど、自分と作品との距離感のようなものは、あのときの『ガンジー』と荒木作品は通じる部分があるような気がします。
むしろそうした体験があったからこそ、『ジョジョ』にハマることができたのかもしれませんね。
それはあるかもしれません。読解力は拙くても拾えるものはあるし、「理解できないけど気になる」という感情を大事にして、それをポジティブに捉えて受け入れていく感じ。それはのちに触れるマンガやアニメに対してもそうですし、子ども時代の映画体験のおかげなのかなとも思います。
そもそも荒木先生自身も大の映画好きですからね。ホラーやサスペンスの演出にもその影響は随所に見受けられます。
荒木先生の演出って本当に怖いですよね。なかでも子どもながらに『魔少年ビーティー』は本当に怖かったのを覚えています。子どもが当たり屋になり、ターゲットの家に寄生していくエピソード(『そばかすの不気味少年事件の巻』)なんて、もうトラウマです。しかも怖くて怖くて仕方がないのに、何度も読んじゃうんですよ。怖さを忘れそうになると、なぜかまた読んでしまう。
そういうこと、ありますね。
怖いなら読まなきゃいいのにねえ。あれはいったい何の確認だったんでしょうか(笑)。そういう不思議な感覚も、荒木作品で初めて味わったかもしれません。
ちなみに櫻井さんは荒木先生とお会いしたことはありますか?
ないんですよ。でも荒木先生には、そう簡単に会えないほうがいいかもしれませんよね。このまま想いを募らせておいて、僕が死ぬまでにどこかでお会いできたら嬉しいなくらいに思っています。
櫻井さんよりも荒木先生のほうが年上ですが?
いやいや、荒木先生は石仮面をかぶって不老不死になったとされていますから(笑)。

「露伴は櫻井さんにピッタリ」と言われ、複雑な気持ちに

TVアニメシリーズが始まる10年前、『ジョジョ』は一度OVAとしてアニメーション化されています。当時OVAはご覧になりましたか?
観ました。錚々たるキャストのみなさんが集結していましたし、僕自身も「あの独特なセリフをどうやって表現するんだろう?」とか「あのスタンドバトルって映像化できるの?」と、興味津々でした。
初のアニメーション化ですから、すべてが手探りであり挑戦だったと思います。
ですよね。僕はスタープラチナのラッシュを「(緩急を付けながら)オラッ オラッ オラッ オラッ!!!」っていう感じで脳内再生していたんですが、OVAを観たら「(超早口で)オラオラオラオラオラオラ!」って表現されてて、あれには強烈なワンパンをもらいました(笑)。何が良い悪いという話ではなくて、マンガがアニメになる過程では、いろいろと読者の予想を上回ることもあるんだなと改めて知りましたね。

あのOVAがあっての現在のTVシリーズの表現なので、『ジョジョ』の歴史においてとても重要な作品だと思いますし、僕にとっても起点のひとつになっています。
2016年から岸辺露伴を演じていらっしゃいますが、もともと露伴にはどんな印象を持っていましたか?
最初に登場したときは単純に「すげえ嫌なやつだな」って(笑)。クモを舐め出したあたりで「こいつ、本当にやべえ」と(笑)。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
では出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?
周りの人から「ピッタリだね」と言われて、それはちょっと複雑な気持ちでした(笑)。ただ登場時こそ印象が最悪だった露伴ですけど、そのあと、何度も本編で活躍して、さらには『岸辺露伴は動かない』が展開されたり、印象はかなりアップデートされていました。下品な言い方ですけど、彼は「成り上がった」キャラクターですよね。
登場するたびに、どんどんと主人公感が増してきた印象があります。
だからこそとてもチャレンジしがいのあるキャラクターだなと思いましたし、実際に味わってみてもその通りでした。
今の櫻井さんは、露伴のことはどんな人物だと考えていますか?
(少しのあいだ考えて)う〜ん。基本的には本誌を読んでいたころから大きくは変わっていないですね。高慢ちきで、王様で、偏屈で。人を説明するにはふさわしくないワードばかりが並びますが(笑)。ただ一方で、『岸辺露伴は動かない』シリーズを通じてまた理解を深めた部分もありました。
それはどんなところですか?
彼は「覚悟をしている人」なんですよね。よい作品を生み出すという一点にかける覚悟は本当にスゴいなと思うし、最初こそ「クモを味見する」っていう変人的な描かれ方をされましたけど、でもそこにも根本には覚悟がある。
過剰な好奇心が災いして、危ない目に遭っている印象が強いですが、ちゃんと覚悟を持って飛び込んでいるんですね。
まあ、(『岸辺露伴は動かない』の)最新エピソードの『ザ・ラン』では猛反省してますけどね(笑)。でも首を突っ込むときはいつも大真面目で本気ですよね。露伴自身は頭脳派っぽく振る舞っていますけど、じつは本能の人なんだと思いますね。最近ではむしろ、「もしかしたらちょっとおバカなのかも?」ってなってます(笑)。

『ジョジョ』のアフレコ前は、みんな入念に体をほぐす

『ジョジョ』のアフレコはキツいと聞きますが、実際に参加してみていかがでしたか?
僕もアフレコ前から、いろいろな方に噂だけは聞いていたんですよ。「とにかくとんでもないよ」と(笑)。だから覚悟して臨んだんですけど、本当に酸欠でぶっ倒れるかと思いました。
どのキャラクターもセリフの圧がスゴいですよね。
そうなんです。収録前の雰囲気もほかの現場とはちょっと違っていて、「え? これからみんなで走るの?」って思うくらい、みなさん入念に体をほぐしているんです。実際になかなかの肉体労働ですし、毎回ここまで汗だくになる現場は珍しいと思います。
露伴も初登場からかなり飛ばしていますよね。「この岸辺露伴が金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァ!!」とブチ切れるシーンは完全にトップギアです。
小さく収めてしまうのは『ジョジョ』には似合わないですからね。僕としては苦みや苦しさなど、息の上がり具合も含めて、何がしかのパワーが滲むようにしたいなとは思って演じました。あのシーンは、あれよりちょっとでもはみ出すと破綻するという、まさにギリギリのところだったと思います。
最初にあそこまでの振り幅を見せつけられると、自然とそのあとのハードルも上がってしまうような気がします。
それはまさにその通りで、かなりリスキーなんですけど、でもだからといって少しでも加減をするとバレるんですよ(笑)。それは僕だけでなくみなさんそうなので、収録はいつも濃密でした。
ちなみに露伴には名言も多いですが、櫻井さんが個人的に好きなセリフはどれですか?
「だが断る」は外せないですね。ここまで短くてインパクトのある名言ってあまりないですし、ここで彼に対する印象がガラッと変わった人も多いと思うんですよ。「あれ? このキャラ好きかも」ってなるキッカケのセリフでもあるので、やっぱり「だが断る」ですかね、うん。

「ヘブンズ・ドアー」を持つ露伴は、すごく孤独なのかも

ちなみに露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー」は人の体験や記憶を読んだり書き込めたりするものですが、使えるとしたら何をしますか?
う〜ん、悪いことはすぐに思い浮かぶので、きっと悪いことに使うでしょうね(笑)。むしろ「ヘブンズ・ドアー」のいい使い方って何があります?
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
記憶を読んだり命令したりして、当人の悩みを解決するとか?
なるほど。じゃあ身近な人にはいいことに使いましょう(笑)。でも自分が能力を持っていることは絶対に誰にも言えないですし、たぶん孤独ですよね。自分だけが相手のことをなんでも知れて、でもそのことは誰にも言えない。そう考えると露伴ってすごく孤独な人生のような気がします。
櫻井さんも露伴も、分野は違えど表現を追求するという意味では共通していると思います。露伴にシンパシーを感じるところはありますか?
「リアル」ではなく「リアリティ」を追求する姿勢、というところは共感できる気がします。両者は似て非なるものだと思っているので。
もう少しくわしく教えてください。
たとえば、剣と魔法の世界を描いた作品はたくさんありますよね? でもそれって現実には絶対に存在しない世界じゃないですか。それでも作品内では魔法が実在していると思ってもらう必要があるわけで、それは「リアル」ではなくて「リアリティ」。

僕らが演技でアプローチできるのって、そのための肉付けや奥行きを見せていくことかなと思っているんです。ん?(ここでしばらく悩む)……すみません、なんかわかりにくい例ですよね。う〜ん、何て表現すればいいんだろう。
でもなんとなくわかりますよ。露伴は徹底して「リアリティ」を重視していますから、そこは同じですよね。
そうそう、露伴が求めてやまない体験はまさにそれで、決して「リアル」を表現しようとしているわけではないですからね。

ああ、それで言うと『ジョジョ』の演技もそうですね。露伴がバスに乗っていて、トンネル内で不思議な光景を見たときに「なにぃ!」って大声をあげるじゃないですか。現実のバスでそんな大声をあげようものなら、車内中の注目を一気に集めちゃいますから、リアルとしては不自然なんです。

リアルなら「ん? 何だ?」くらいのリアクションにとどめると思うんですけど、そこは『ジョジョ』ですから。どれだけ異常なことが目の前で起こっているのかを、視聴者に訴えかけるためには「なにぃ!」でいいんです。

内山昂輝との掛け合いは想像を上回るものに

ここからは『岸辺露伴は動かない』シリーズについて伺います。2017年に『富豪村』、2018年に『六壁坂』がOVA化されましたが、アニメ企画を知ったのはいつごろですか?
話自体は第4部を収録している途中でいただきました。『岸辺露伴は動かない』と謳いながら、『富豪村』ではいきなり動いていたので、思わず「動いてるじゃん!」とツッコんじゃいました(笑)。
本編とは違った雰囲気を持つシリーズですが、露伴の演技に関してはどのように臨みましたか?
僕としてはとくに本編と違いを出そうとは考えておらず、むしろ本編とのつながりを感じてもらい、ザッピング感覚でこちらのほうも見てもらえたら嬉しいなと。その代わり、絵のニュアンスが本編とは少し違うので、ビジュアル面で微妙な変化が出たら面白いなと思っていました。
今回新たに制作された2エピソードですが、まず『ザ・ラン』では、これまでになく追い詰められた露伴が描かれていますね。
おっしゃる通り、露伴的には過去最大のピンチだったと思います。このエピソードって、ざっくり言うと、ただふたりがランニングマシンで走っているだけなんです。とてもシンプルなんですけど、走るスピードとともにトルクもどんどんと上がっていって、最後には息ができないくらいの緊張感になるんです。

負けず嫌いな露伴が素直に負けを認めたり、勝負後も「この場はただ逃げるしかない」と言って立ち去るなど、読後感が悪くてちょっと文学的な終わり方なのも魅力ですね。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
アニメでもそれがしっかりと再現されていますね。アフレコでは再び酸欠状態になったとか。
なりましたね。これはリアルに走ったときに生じる息の乱れではなくて、追い詰められることによって息が浅く、速くなっていくという演技です。また走っているときの掛け合いだけではなくて、モノローグだったり、勝負後のセリフも含めてその息の荒さを乗せないと臨場感や恐怖につながらないので、そこは出し惜しみせず「ぶっ倒れてもいいや」くらいの気持ちでやりました。
勝負の相手、橋本陽馬を演じた内山昂輝さんとの掛け合いはいかがでしたか?
内山くんは集中力がスゴいですし、とても鋭いお芝居をするので、鬼気迫る雰囲気を感じました。ヤバい陽馬を見事に表現してくれていて僕も本当に怖かったですし、結果的に想像を上回るシーンになったと感じましたね。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
加藤敏幸監督いわく、おふたりの芝居が素晴らしかったため、芝居優先に作画を味付けしたらしいです。
そうなんですね。内山くんの演技のおかげもあって、最後の「クソッ、やばいっ、まずいぞ」っていうセリフのニュアンスは、もはや演技と演技じゃないところの中間くらいのものになりました。僕も生々しさが出たらいいなと思っていたので、そこは嬉しいです。
もう1本の『懺悔室』は露伴がとある男の告白を聴くという構成で、またテイストがガラリと違いますね。
叙述トリックが使われていて、最後のオチで全容がわかり、そこで改めてゾッとするタイプのエピソードです。最初に読んだときには「オシャレだな」とさえ思いました(笑)。
「オシャレ」とはどういうことですか?
よくできたホラーやサスペンス作品って、オシャレじゃないですか? 緻密に練り上げられていて、怖いんですけど感心してしまう感じ。
なるほど。一周まわって。
そう。しかも最後の露伴のモノローグで「彼は悪人だと思うが、そこのところは尊敬できる」って締めるじゃないですか。前半はパブリックな説明で、でも後半はプライベートな感想で終わっている。露伴は一般常識も持っているんだけど、でも自分なりの価値観もあって、そのふたつを綺麗に提示して終わっているのがまた見事だなと思います。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
完全に露伴の本質を見抜いていますね。本編を含めると5年近い付き合いですが、櫻井さんのなかで露伴はどんな存在になりましたか?
すぐ近く、いつでも手の届くところにいる存在ですね。それこそ、(と、すぐ目の前を手でまさぐりながら)この辺に(笑)。でも徐々にそうなったわけではなく、露伴に関しては最初からそうですね。強烈すぎて、一発で刻まれちゃったというか。
なるほど。これまで計4エピソードが映像化されましたが、まだ映像化されていないエピソードも残っています。それこそ櫻井さんが好きなトニオが登場する『密漁海岸』などもありますよね。
殺人アワビ! 殺人アワビですよ。普通は思いついても描かないですよね(笑)。それがあんなに説得力のある面白いエピソードになるなんて、荒木先生はスゴいですよね。これはぜひともいつか映像化してほしいです。

きっとみなさんの応援の声がアニメ化のトリガーになると思うので、ぜひこれからも岸辺露伴のことを応援してください。いっしょに全エピソードのアニメ化を目指しましょう!
櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)
6月13日生まれ。愛知県出身。A型。1996年に声優デビュー。主な出演作品に『ダイヤのA』(御幸一也)、『<物語>シリーズ』(忍野メメ)、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ(槙島聖護、雛河翔)、『おそ松さん』(松野おそ松)、『鬼滅の刃』(冨岡義勇)、『フルーツバスケット』(草摩綾女)、『啄木鳥探偵處』(金田一京助)、『デジモンアドベンチャー:』(テントモン)、『天晴爛漫!』(ディラン・G・オルディン)など。

    作品情報

    ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けないBlu-ray BOX1<初回仕様版>
    ¥19,800(税込)
    収録:1〜20話
    映像特典(BOX1、2共通):ノンテロップOP&ED(再録)、各種PV、CM(再録)
    仕様(BOX1、2共通):特製ケース仕様、ブックレット予定

    ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けないBlu-ray BOX2<初回仕様版>
    ¥19,800(税込)
    収録:21〜39話
    映像特典(BOX1、2共通):ノンテロップOP&ED(再録)、各種PV、CM(再録)
    仕様(BOX1、2共通):特製ケース仕様、ブックレット予定

    「岸辺露伴は動かない」OVA <コレクターズエディション> Blu-ray
    ¥9,800(税込)
    収録:「六壁坂」「富豪村」「ザ・ラン」「懺悔室」
    新作OVA「ザ・ラン」「懺悔室」に加え、Blu-ray初となる「六壁坂」「富豪村」を含む4話収録
    特典:特製パッケージ、ブックレット封入など

    「岸辺露伴は動かない」OVA 「ザ・ラン/懺悔室」 Blu-ray&DVD
    ¥7,800(税込)
    収録:「ザ・ラン」「懺悔室」
    特典:ブックレット封入
    ▲「岸辺露伴は動かない」OVA 「ザ・ラン/懺悔室」 Blu-ray
    ▲「岸辺露伴は動かない」OVA 「ザ・ラン/懺悔室」 DVD


    ○『岸辺露伴は動かない』OVA公式サイト
    http://jojo-animation.com/ova/rohan/
    ◯TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』公式サイト
    http://jojo-animation.com/
    ○TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』公式Twitter(@anime_jojo)
    https://twitter.com/anime_jojo

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