謎の多い古代人類「デニソワ人」の骨格を再構築することに研究者が初めて成功、9月19日付けの科学誌『セル』に発表された。
デニソワ人は数万年にわたりアジアに暮らしていたと考えられているが、その化石は、小指の骨と頭蓋骨の破片、割れた顎骨、数本の歯しか見つかっていない。
この謎の人類の骨格を浮かび上がらせるため、今回の論文を執筆したデビッド・ゴクマン氏は最も説得力ある証拠を利用した。DNAだ。
イスラエル、エルサレム・ヘブライ大学の博士課程学生だったゴクマン氏らは、デニソワ人の小指の骨から抽出したDNAを調べて骨格に関する32の特徴を抽出、デニソワ人の骨格を提案するという快挙を成し遂げた。
「科学が夢の国を見せてくれた」
この研究は、デニソワ人のプロポーションについて具体的な数値を与えるものではないものの、現生人類(ホモ・サピエンス)やネアンデルタール人と比較したときにデニソワ人がどのように見えるかを示している。(参考記事:「人類3種が数万年も共存、デニソワ人研究で判明」)
「このような手法で過去を再現できるのはすばらしいことです。科学が夢の国を見せてくれました」と、スペイン国立人類進化研究センターのマリア・マルティノン=トレス所長は喜ぶ。
ナショナル ジオグラフィック協会も助成している今回の研究は、新たなデニソワ人化石発見につながるヒントも与えてくれる。科学者たちはここ数年、ヒト族の系統樹にうまく当てはまらない化石をアジア全域で多数発見している。しかし、比較に使えるデニソワ人の骨がほとんどなく、温暖なアジアの化石からDNAを抽出できる可能性も低いため、こうした化石の多くが「旧人」という曖昧な分類の中でくすぶっている。(参考記事:「デニソワ人に別グループ、アジアでまた驚きの発見」)
新たに提案された特徴は、こうした化石を同定するのに役立つかもしれない。今回の研究はすでに、中国河南省の許昌市近郊で発見された2点の頭蓋骨の破片がデニソワ人のものである可能性を示唆している。
この研究は「人間とは何か」という大きな問いにも関わると、研究チームを率いたエルサレム・ヘブライ大学のリラン・カーメル氏は説明する。かつて地球上には多様な種類のヒト族がいたのに、生き残ったのはホモ・サピエンスだけだった。その理由は誰も知らない。(参考記事:「ヒトはなぜ人間に進化した? 12の仮説とその変遷」)
「今回の研究は、この疑問に答えるための大きな一歩です」とカーメル氏は言う。
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