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2002.04.13

【日本感染症学会速報】 インフルエンザの迅速診断キット、検体は咽頭より鼻腔から採取を

 インフルエンザウイルスの感染拡大抑制薬や迅速診断キットの登場で、まさに「コペルニクス的転回」を迎えたインフルエンザ診療。なかでも迅速診断キットは、現在7種類が販売されており、今シーズン(2001/2002年)は昨シーズン(2000/2001年)の2倍となる200万テスト、約40億円分が販売されたという。4月11日のシンポジウム2「起炎菌検出法の進歩と応用」では、各種の迅速診断キットの評価を行った日本鋼管病院小児科の三田村敬子氏が、キットの特性や差異などを具体的なデータを示しつつ紹介した。

 三田村氏は冒頭に、発熱と咳という臨床症状だけで、インフルエンザの8割は診断できることを指摘。ただし、これは基礎疾患のない成人で発症48時間以内、しかも地域の流行状況が明らかである場合に限られており、「小児や高齢者、特にケア施設などでは、迅速診断キットの有用性が高くなる」(三田村氏)と強調した。

 わが国で市販されているインフルエンザウイルスの迅速診断キットには、大きく分けて1.A型ウイルスのみを検出するもの(商品名:ディレクティジェンFluA)、2.A型およびB型ウイルスを検出するが、鑑別はできないもの(同:インフルエンザOIA、ラピッドビューインフルエンザA/B、ジースタットフルーA&Bキット)、3.A型・B型ウイルスを鑑別診断できるもの(同:キャピリアFluA、B、インフルA・B−クイック「生研」、ディレクティジェンFluA+B)−−の3種類がある。

 検出原理も3種類あり、「ジースタットフルーA&Bキット」がノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルス感染拡大の鍵酵素)と特異的に反応する合成基質を利用、「キャピリアFluA、B」と「ラピッドビューインフルエンザA/B」がイムノクロマト法で、残りの5品目は酵素免疫法(EIA法)を採用している。検査時間はいずれも短く、最短の「ラピッドビューインフルエンザA/B」で10分、その他も15〜25分で検査結果が得られるという。

検査感度はウイルス量に依存、第4病日以降は咽頭ぬぐい液で半数は見落とし

 このようなキットごとの特徴を提示した後、三田村氏は、迅速診断を行う上で留意すべき点について解説した。

 第1の留意点は、検体中にウイルスがある程度含まれていないと、迅速診断キットでは検出できないことだ。三田村氏は各キットのウイルス量ごとの判定結果を提示し、「どのキットでも、ウイルス量が104〜107程度はなければウイルスの検出はできない」と述べた。

 二番目の留意点は、検体の採取部位によって検査の感度が異なってくることだ。三田村氏は、鼻腔吸引液、鼻腔ぬぐい液と咽頭ぬぐい液の3種類の検体について、迅速診断キットの感度や特異度などがどう変化するかを調査。感度や正診率は大半のキットで鼻腔吸引液が最も高く、次いで鼻腔ぬぐい液で、咽頭ぬぐい液を使った場合は「3分の1は(ウイルス感染があっても陽性とは)出ない」(三田村氏)とのデータが得られたことを紹介した。

 また、検体の採取時期も、検査精度に大きな影響を与える。一般に第1病日が最も感度が高く、日を追うにつれて感度は落ちるが、特に咽頭ぬぐい液を検体とした場合は第4病日以降は感度が50%を切るため、「成人では第4病日以降は咽頭ぬぐい液を検体とはしない方がいい」と三田村氏は注意を促した。

 こうした留意点はあるものの、迅速診断キットの登場は、インフルエンザ感染症の診療を大きく変えたと三田村氏は言う。キットの登場で、これまで漠然と「インフルエンザ様疾患」ととらえられていたものが、はっきり「ウイルス感染症」として認識されるようになったためだ。ただし、これまでは行われてこなかった「検査→抗ウイルス薬投与」というルートが加わったことで、医療費は確実に上昇しており、三田村氏は「今後はコスト面も含めた検討が必要になるだろう」と結んだ。


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