総務省は5月5日のこどもの日にあわせ、4月1日現在の15歳未満の子どもの数が1465万人で前年より25万人減ったという推計を公表しました。
1982年から41年連続の減少で、記録がある50年以降の最少を更新しました。全人口に占める子どもの割合は、前年比0.1ポイント減の11.7%と、48年連続で下がりました。政府が少子化対策を以前から打ち出しているのに、効果は上がっていないようです。
子どもの割合が低い日本
もちろん子どもを産むか産まないか、どの間隔で何人持つかは、産む女性、カップルの判断ですが、持ちたい子どもを持てないという状況は解消することが必要だと言い続けています。政府の対策の変遷を振り返りながら、課題を見ていきたいと思います。
総務省が公表した子どもの数をみると、男女別では男子が751万人、女子が715万人となっています。年齢階層別では、12~14歳が323万人に対して、0~2歳は251万人で、若くなるほど人数も全人口に占める割合も小さくなっています。
都道府県別(昨年10月1日現在)の子どもの数は99年以来、22年ぶりに全都道府県で減少しました。人口に占める子どもの割合では、低い方から、秋田県の9.5%、青森県の10.4%、北海道の10.5%。高いのは、沖縄県が16.5%、滋賀県が13.4%、佐賀県が13.3%となっています。
日本は、人口に占める子どもの割合が11.7%と世界で最も少なく、調査時点は異なりますが、韓国の11.9%(2021年7月現在)、イタリアの12.9%(21年1月)、ドイツの13.8%(20年12月)を下回っています。
持ちたい人が持てるように
持ちたい人が、持ちたい子どもを持てて、生まれてきた子どもがいきいきと育てる、そういう社会にしたいと、NHK解説委員として、また国会議員としてできることをしてきました。今は、第三の人生をすごす軽井沢で、子どものためにボランティア活動をしています。政府も対策をし続けているのですが、どんどん子どもの数が減っているのは、それが不十分だということだと思います。
国立社会保障・人口問題研究所の調査(15年)によれば、夫婦に尋ねた理想的な子どもの数の平均は2.32人、夫婦が実際に持つつもりの子どもの数は2.01人と、こちらも低下傾向にあります。それでも、実際の合計特殊出生率の1.34(21年6月)とは、大きな差があります。
政治の世界では出生率の目標値を決めようという話がしばしば出てきますが、それでは、戦前の産めよ殖やせよと同じになってしまう、持ちたい人が持てるようにすれば、結果として出生率は、先進各国を見ても上がっている、と常に言ってきました。
次々に新しい政策
では、国の少子化対策の変遷を見てみましょう。89年に合計特殊出生率が1.57になり、子どもを産むことを避ける迷信があったことで出生率が下がったとされる丙午(ひのえうま)の年の出生率を下回り、「1.57ショック」といわれたことから、少子化が注目されるようになりました。
94年に「エンゼルプラン」が、文部、厚生、労働、建設(いずれも当時)の4大臣合意で作られ、緊急保育対策等5カ年事業が実施されました。99年に「新エンゼルプラン」が大蔵、自治(同)の2大臣も加え6大臣で合意されました。
03年に「少子化対策基本法」が施行され、04年には、第1次大綱の「少子化社会対策大綱」が決定され、少子化社会対策会議が作られました。同じ年に「子ども・子育て応援プラン」が作られ、地方公共団体、企業等における行動計画の策定・実施となりました。
06年に「新しい少子化対策について」が決定され、07年には「子どもと家族を応援する日本重点戦略」が作られて、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章、仕事と生活の調和推進のための行動指針が定められました。08年には「新待機児童ゼロ作戦」について、が決定されています。
政府は、一貫して「少子化対策」としてきましたが、これは社会のためによくないから対策を打つ、ともとれ、民主党政権では「子ども・子育て支援政策」としました。10年には第2次大綱の「子ども・子育てビジョン」を策定。「子ども・子育て新システム検討会議」を内閣府に作り、当時副厚生労働相だった私は、三つのワーキングチームの約30回の会合に、ほとんど出席しました。
12年には、「子ども・子育て関連…
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