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「シニア化するオタク」問題、生前見積りは定着するか? 河崎実監督に聞く

マニアである限り、本家をこえることはできない

河崎実監督作品のヒーローや怪獣をモチーフにしたフィギュア。ファンが自作して寄贈したという (イベントスペース「ルナベース」にてマグミクス編集部撮影)
河崎実監督作品のヒーローや怪獣をモチーフにしたフィギュア。ファンが自作して寄贈したという (イベントスペース「ルナベース」にてマグミクス編集部撮影)

——『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のディレクターだった実相寺昭雄監督は、クラシック音楽の造詣の深さからオペラの演出も手掛ける一方、「けろけろけろっぴ」やピンクチラシなど、ユニークな収集家でもあったそうですね。

河崎 実相寺監督の遺品の多くは、奥さんである女優の原佐知子さんが川崎市民ミュージアムに寄贈しました。ピンクチラシは市には寄贈できないということで、僕が譲り受けましたが(笑)。

 実相寺監督は、いわば「天才おたく」でした。フランス語やドイツ語もペラペラで、東京藝術大学の名誉教授も務めていました。大変なインテリなんですが、僕や加藤礼次朗らとおたく話でも盛り上がる人でもあったんです。長嶋茂雄さんやイチローと同じです。長嶋さんやイチローは天才アスリートだけど、同時に大変な野球オタクでもある。

 怪獣オタクも突き詰めれば、みんな円谷英二や成田亨に憧れるわけですが、マニアやコレクターである限りは、そこを超えることはできません。それで僕の場合は、映画監督として怪獣映画を撮る側に回ったんです。

——おたく世代は独身者も多いので、これからさらに高齢化が進むと、介護問題などもクローズアップされることになりそうです。

河崎 おたく専門の老人ホームができるんじゃないかとか耳にするけど、どうでしょうね。おたくは基本的に性格は優しいけど、我も強いから共同生活には向かないんじゃないかな。

 僕は中野で「ルナベース」というイベントスペースをやっているんですが、ここは日替わりで地下アイドルやお笑い芸人たちがファンを集めてイベントを開いています。一種のコミュニティビジネスだけど、こういうゆるい関係は今後もニーズがあると思います。僕が敬愛する“若大将”こと加山雄三が言っています、「過去を悔やみ、将来のことを不安に思うより、今を全力で楽しもう」と。そこに尽きるんじゃないでしょうか(笑)。

(長野辰次)

●河崎実(かわさき・みのる)
1958年東京都生まれ。明治大学在学中から自主映画を撮り、オリジナルビデオ作品『地球防衛少女イコちゃん』(87年)で商業デビュー。劇場公開された『日本以外全部沈没』(06年)はスマッシュヒットを記録し、東京スポーツ映画大賞特別賞を受賞。他にも『いかレスラー』(04年)、『ヅラ刑事』(06年)、『地球防衛未亡人』(14年)、『干支天使チアラット』(17年)など爆笑特撮映画を撮り続けている。現在、初めての書き下ろし本『バカ映画一直線! 河崎実監督のすばらしき世界』(徳間書店)が発売中。

【画像】ゆる~いオタクの社交場「ルナベース」 河崎実監督が運営

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