ヤマハは、ステージキーボード「YC」シリーズの新モデルとして、「YC88」「YC73」の2機種を発表した。2021年1月23日発売予定で価格はオープン。いずれも細部の設計にこだわり、徹底的に「本物のサウンド」を追求して開発されたのが特徴となる。
ヤマハのYCシリーズは、1969年の初代モデル登場から実に50年以上の歴史を持つステージキーボード。今回発表された2機種とも、ハンマーアクション鍵盤を搭載し演奏感を高めたことと、ヤマハ独自技術による高クオリティなサウンド設計がポイントとなる。「ライブ」「配信」「音楽制作」といったさまざまな音楽シーンで、生演奏の表現にこだわるキーボーディストのニーズに応えるモデルとしてラインアップされる。
2020年4月に発売された「YC61」とあわせ、YCシリーズは合計3機種のラインアップに
ヤマハのステージピアノとしてラインアップされるCPシリーズと同じく、本格的な演奏感でライブ、配信、音楽制作まで幅広くサポートするキーボードとして開発された
YC88はフルサイズとなる88鍵モデルで、木製の「トリプルセンサー付き88鍵ナチュラルウッドグレードハンマー3鍵盤(NW-GH3鍵盤)」を採用している。白鍵に無垢材を使用しており、低音部は重く、高音部は軽くなるグランドピアノの鍵盤タッチを忠実に再現。表面には適度な吸湿性を備え、指先に伝わる感覚や押しこむ感触、跳ね返りまで、全体的な弾き心地を生ピアノに近づけた。本体重量は18.6kgで、ツアーユースにも耐えられる堅牢性を確保しながら持ち運びもしやすい作りになっている。
グランドピアノ同様の、音切れのない高速の同音打鍵も可能とするトリプルセンサーを搭載
いっぽうYC73は、YC88より1オクターブ少ない73鍵モデルで、「73鍵バランスドハンマースタンダード鍵盤(BHS鍵盤)」を採用している。こちらは低音部から高音部まですべての鍵盤の重さが同じで、エレクトリックピアノなど多彩な音色を弾きこなすのに適した仕様だ。また、エレピと同じように最高音、最低音の鍵盤がそれぞれEの「E to E」レイアウトの73鍵としている。本体重量は13.4kg。
ピアノ曲にも対応できる広い音域と、均一でクセのないハンマーアクション
なおYC88とYC73の違いは、基本的には鍵盤の数・種類と、それにともなう本体サイズのみと考えてよい。いずれも、YCシリーズ初の88鍵/73鍵モデルでもある。
2機種とも、接続端子はラインアウト(標準フォーン端子、バランスXLR端子)、ヘッドホン(ステレオ標準フォーン端子)、フットコントローラー、MIDI IN/OUT、AUX IN(標準フォーン端子)を装備(写真はYC88のリアパネル)
上述の通り、YC88とYC73の最大のポイントは「本物の音」を徹底的に追求したサウンド設計。内蔵音源方式は、ヤマハのPCM音源である「AWM2」のほか、「VCMオルガン音源」や「FM音源」などを採用している。2機種の発売と同時に公開されるYCシリーズ最新ファームウェア「YC OS v1.1」で、VCMオルガンとAWM2を合計した最大発音数合計音色数128音、FMも128音に対応。ライブサウンドセット数は160(プリセットライブセットサウンドは88)で、ボイス数は145となる。
最新ファームウェアで、新しい4種類のボイスと8種類のライブセットサウンドが追加される
なかでもオルガンサウンドは、アナログ機器の飽和した音や非連続の特性まで忠実に再現する独自の「VCM(Virtual Circuitry Modeling)技術」を元に開発。アナログ回路を高精度にモデリングすることで、トーンホイール方式のビンテージオルガンを忠実に再現した「VCMオルガン」と、往年のトランジスタ方式のオルガンサウンドを再現した「FMオルガン」の計6種類のサウンドを搭載する。
ピアノサウンドは、ヤマハのプレミアムコンサートグランドピアノ「CFX」「S700」を含むアコースティックピアノに加え、「ビンテージエレピ」「FMエレピ」といったエレクトリックピアノの計30種類を内蔵。
そのほか、ステージキーボードに欠かせないシンセサウンドや、レイヤー・スプリット演奏に対応するストリング、ブラス、ベースサウンドなど合計100種類以上の音色を搭載する高い汎用性で、ステージでの演奏や楽曲制作・配信を強力にサポートする。
また2機種とも、シンプルなインターフェイスを搭載することで、ステージ演奏に求められる操作をシームレスに実現できるようにしているのもポイント。ひとつのコントローラーにひとつの機能を割り当てる「One-to-One」スタイルを基本とし、ボイス・エフェクトなどの各専用セクションにノブやボタンを配置した設計で、どのようなシチュエーションでも直感的にコントロールできるように配慮している。
オルガン特有のスライド式音量コントローラーであるドローバーを搭載。音色設定(ライブセット)を切り替えた際にLEDインジケーターで現在の値をすぐに確認できるなど、物理ドローバーとして高い操作性と視認性を両立
ここまでで実際の音が気になる人も多いと思うので、最後に新しいYCシリーズのサウンドデモ動画で本記事を締めくくりたい。以下はヤマハの公式動画だが、多彩で高クオリティなサウンドが伝わってくる。