キプロスの銀行は営業再開初日大きな混乱なく、資本規制1カ月継続

キプロスの銀行は営業再開初日大きな混乱なく、資本規制1カ月継続
3月28日、キプロスの銀行が約2週間ぶりに営業を再開した。厳しい資本規制が敷かれる中、銀行の前に列を成す市民の姿は冷静で、懸念されたような預金取り付け騒ぎは起こっていない。ニコシアで撮影(2013年 ロイター/Yorgos Karahalis)
[ニコシア 28日 ロイター] キプロスの銀行が28日、約2週間ぶりに営業を再開した。小切手の換金禁止や1日の預金引き出し限度額を300ユーロに制限するなど厳しい資本規制が敷かれる中、銀行の前に列を成す市民の姿は冷静で、懸念されたような預金取り付け騒ぎは起こっていない。
キプロス政府は当初、資本規制の実施期間について1週間程度と説明していたが、カスリーディス外相は同日、「中銀の見通しによると、多くの規制は1カ月の期間をかけて徐々に解除される」と述べ、想定よりも解除時期が後ずれすることを認めた。
ただエコノミストは、経済が危機を脱却できない限り、資本規制の解除は困難との見方を示している。
資本規制では、5000ユーロ以上の商取引をすべて中銀が精査するほか、国外への現金持ち出しも1000ユーロに制限されている。
資本規制の実施を受け、キプロス証券取引所は、この日も取引を停止した。
預金課税観測の高まりを背景に、キプロスの銀行預金の多くが電子取引を通じてすでに流出していることも分かった。
キプロス中銀のデータによると、他のユーロ圏諸国がキプロスの銀行に預けている預金は、2月に18%減少。欧州中央銀行(ECB)のデータからは、キプロス民間部門による2月の国内預金残高が2.2%減の464億ユーロとなったことが判明した。
こうした中、ドイツの経済紙ハンデルスブラットは、キプロス銀の営業再開に備え、ECBが50億ユーロ(63億9000万ドル)を空輸していたと伝えた。
キプロス政府は銀行セクター危機の原因を追究するため、委員会を設置したことを明らかにし、刑事、民事の双方から調査する意向を示した。
金融市場では、キプロス危機が他の重債務国にも波及するとの懸念から、独10年債利回りが一時1.25%まで低下し、前年8月3日以来の水準を付けた。
一方、スロベニア2年債の利回りは7%近くまで上昇。市場がデフォルト(債務不履行)リスクの増大を織り込んでいることを示唆した。
またムーディーズは、キプロス支援が一段のリスクになるとして、アイルランドとポルトガルの格付け見通しを「ネガティブ」で据え置くと発表した。
資本規制の導入を受け、エコノミストの間では「キプロスユーロ」が誕生するとの指摘も出ている。自由に取引されるユーロに対し、キプロス国内に滞留するユーロの価値が下がると考えられている。

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