コラム:インドネシアIT大手が大合併、東南アジアに巨大企業
Una Galani Sharon Lam
[ムンバイ 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 東南アジアの巨大ハイテク企業が、栄華の時を迎えている。インドネシアの配車・決済サービス大手のゴジェックと電子商取引大手・トコペディアが合併し、インドネシアでハイテク業界の巨人が生まれる。
1カ月前にはシンガポールに本拠を置くライバルの配車サービス大手グラブが特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場すると発表し、時価総額は400億ドルと評価された。グラブの上場計画は、ゴジェックとトコペディアの合併後の企業価値を見極める手掛かりとなる。
合併後の新会社は、プライベートエクイティ(PE)業界からゴジェックの共同最高経営責任者(CEO)に転じたアンドレ・スリスツヨ氏が率い、社名は「ゴートゥー(GoTo)」となる。
米国の2倍の人口を擁する地域で事業展開し、月間アクティブユーザー数は1億人を超える。決定的な強みは、世界第4位の人口を誇り、インターネット経済が急速に成長する一方、銀行口座を持つ人が少ないインドネシア市場で圧倒的な優位を得ている点だ。ゴジェックとトコペディアの合計取引額は、インドネシアの国内総生産(GDP、1兆ドル)の約2%に相当する。
両社が公表している財務関連の数字は、この合計取引額だけだ。しかし、グラブの評価額を手掛かりにゴートゥーの潜在的な企業価値を推しはかることができる。グラブは2020年2月から、SPACのアルティメーター・グロースとの合併を発表した先月までの間に、評価額が約2.4倍に膨らんだ。
これと同じ軌道をたどったとすると、ゴジェックの企業価値は約250億ドルとなりそうだ。トコペディアの直近の評価額75億ドルと合わせると、新会社の企業価値はグラブの少なくとも80%相当となる。一方、時価総額が1130億ドルのゲーム・ネット通販大手、シーは株価が過去1年間に250%上昇している。
ゴジェックの出前サービスの配送車両はより効率的に運用され、トコペディアの配送業務を後押しするだろう。この点や決済を除けば両社の事業には重なる部分が少ないため、かつて浮上したゴジェックとグラブの合併計画よりも、容易に規制当局の承認を得られるはずだ。
グラブが2018年に米配車大手・ウーバーから東南アジア事業を手に入れた際には、競争が減り運転手への補助金を削減できたが、今回はわけが違う。また、ゴジェックとトコペディアは、両社のアプリを連動させるだろう。
心配なのは、ゴジェックがオンライン販売など金食い虫の事業を背負うことだ。シーは2020年に電子商取引などのサービスの販売コストが売上高とほぼ同じ水準だった。ゴートゥーの地元密着型事業はユニットエコノミクス(顧客1人当たりの採算)に優れているかもしれないが、より広い地域へと拡大を続けながら、新たな帝国の一部となったこの分野に資金を回すのは容易ではない。
ゴジェックとトコペディアは事業統合後、年内にも新会社をニューヨークとインドネシアの両市場で上場する計画だ。上場を成功させるには、新会社が「大きいことは良いことだ」と証明する必要がある。
●背景となるニュース
*インドネシアの配車・決済サービス会社、ゴジェックと電子商取引大手・トコペディアは17日、合併に合意したと発表した。事業統合後の新会社は電子商取引、配車、食品宅配、決済などのサービスを展開する、インドネシア最大のハイテク企業となる。
*統合会社の社名は「ゴートゥ(GoTo)」で、ゴジェックのアンドレ・スリスツヨ共同最高経営責任者(CEO)がCEOに就く。トコペディアのパトリック・カオ社長は社長に就任する。
*ゴジェックとトコペディアの発表によると、両社の2020年の合計取引額は約220億ドル。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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