『シェンムーI&II』が海外で発売!移植の質はどうなのか!?

現時点は残念ながらバグが目立つ

※購入先へのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、そちらの購入先での販売や会員の成約などからの収益化を行う場合はあります。 詳しくはプライバシーポリシーを確認してください">詳しくはプライバシーポリシーを確認してください

本日8月21日、『シェンムーI&II』は海外でPS4/Xbox One/PC向けに発売された。本作は、オープンワールドゲームの元祖とも呼ばれるアドベンチャーゲームシリーズを現行機向けに再リリースしたタイトルであり、『シェンムー 一章 横須賀』(1999年)および『シェンムーII』(2001年)が収録されている。『シェンムーI&II』は国内で11月22日にPS4のみで発売予定とまだ先のことだが、本日は国内版の最新トレーラーも公開されているので確認してほしい。


筆者は『シェンムーI&II』海外PS4版をリリースの約1週間前からプレイしている。ゲーム自体に関する評価は以前に「『シェンムー』の魅力を語る」という記事で紹介しており、作品全体のレビューは『シェンムーI&II』の国内発売と合わせて行う予定なので、本稿ではあくまで移植の質について語っていきたい。

『シェンムーI&II』の位置づけについて

移植の質は端的に言って、あまり良くはない。だが、その理由について詳しく書く前に、そもそも『シェンムーI&II』はリマスターなのか、リメイクなのか、単純な移植なのか、その位置づけによって評価の仕方が大きく異なるだろう。 そして『シェンムーI&II』の位置づけは極めて曖昧だ。少なくともリメイクではないことは確かだが、リマスターというのにも「そのまま」すぎる内容だ。セガも公式でリメイクやリマスターといった言い方は使っておらず、HDという言葉も見かけない。では、ただの移植なのか? 実際のことろ、『シェンムーI&II』は90%以上、原作をそのまま移植していると言って良さそうだ。しかし、いくつかの変更点も確かにある。

1番目ぼしい変化はゲーム画面の鮮明度やアスペクト比のアップグレードだ。カットシーン以外のゲーム内映像は16:9でプレイできるようになっており、1080pの高解像度で楽しめる。原作のファンとして、『シェンムー』の世界をフルスクリーンで見られるのが今回の1番大きな喜びと感じている。

他の変更点としてはUIの一新、ロード時間の大幅な短縮、『シェンムーI』における「どこでもセーブ機能」の追加だ。

海外のレビュー集積サイトMetacriticで『シェンムーI&II』は現在、16件のレビューが届いており、77点とう決して低くない平均スコアとなっている。90点をつけているメディアも2つある。もちろん、これは大いに喜ばしいことだが……。

しかし、『シェンムー』を人生のオールタイムベストゲームとしている僕は、さまざまな意味で驚いており、動揺している。心から愛しているゲームであればこそ、現時点で本移植の質を認めることはどうしてもできないのだ。

まだバグでいっぱい

『シェンムーI&II』がIGN JAPANのオフィスに届いたのは今から約1週間前のことだ。レビューガイドラインにはまだ残っているバグについての記述があった。これらはゲームの初日に当てられるパッチで修正されると書かれていた。最近、発売前のゲームではよくあることだ。しかし、いざプレイしてみると想像以上にたくさんのバグがあり、レビューガイドラインに書かれていないものもたくさん発見したので、少し心配になった。これらは本当に初日のパッチで修正されるだろうか? 数日後、ゲームを発売日前に販売してしまったフランスの取扱店よりゲームを入手し、パッチが施される前にゲームをプレイしたり、映像を投稿したりするユーザーが現れた。セガのせいではないとはいえ、バグの多いパッケージ版を販売するとどうしてもこういうリスクはどうしても付きまとい、可能であれば避けるべきだった。

それからというもの、セガは1.01というパッチを配信した。僕はすぐにこれが初日に配信予定のパッチなのかどうか、セガヨーロッパの担当者に確認した。「その通りだ」という返答がすぐに来た。これを聞いて、僕は冷や汗をかくことになった。バグがまだたくさん残っていたからだ。恐れていたことが現実となった。

幸い、セガヨーロッパは発売後も積極的にバグを直していくとしており、公式Twitterでも次のようにつぶやいてる。

『シェンムーI&II』早期購入者にとりいそぎお知らせします。すべてのゲームリリースがそうであるように、本作はバグが発生する可能性があります。もし、バグに遭遇した場合、ぜひその詳細についてあなたのフィードバックがほしいです。 http://www.sega.co.uk/supportまで、できるだけ詳しく教えてください。

しかし、できればもっと完成度を上げてから発売してほしかった。現時点でははっきり言って商品として大きな不満が残る内容だ。日本側のセガが国内における発売を3カ月も遅らせていることもこれを見込んでいるのかもしれない。

具体的にどういうバグがあるのか、少しだけ紹介しよう。ゲームを進めて、カットシーンが発生すると、その前に見た違う景色がランダムに写り、カットシーンのサウンドだけが聞こえるというバグが頻発する。結果、筆者は重要なシーンの音を聴きながら、荒いテクスチャの草むらにズームインした映像や、芭月家の表札と睨めっこすることになってしまった。これだけでも、致命的なバグと言えるのではないか。

サウンド周りのバグもかなり多い。例えば、パッチが適応される前は同じ音が引っかかったようにずっと鳴り続けるバグが頻発していたが、パッチ適応後はそれを防ぐためか、いろいろな音が省かれてミュートになった。緊急処置のような印象が否めず、場合によってはこれも致命的な問題だ。例えば、骨董屋で涼が時計の鳴る音を聞いて驚くシーンがあるが、その音が省略されていると涼は無言の時計に対して驚いているように見えてしまう。

他にもたくさんのバグがあるが、パッチ適応後にどれが残っており、どれが修正されたのかについては確証が持てないので、詳しく紹介するのはやめておこう。だが、セガヨーロッパのTweetに返信した複数のユーザーが言っているように、バグは本当にたくさんある。

『シェンムーII』の微調整が『シェンムーI』に反省されていない


あくまで再リリースであることを思えば、『シェンムーII』の改善点が『シェンムーI』に反映されていないことは仕方ないだろう。例えば、発売前から明らかにされていたのは、『シェンムーII』から導入されたタイムスキップ機能が『シェンムーI』に追加されていない点だ。原作通りに、次の約束の時間までは街を探索したり、人と会話したり、技の練習をしたり、ゲームセンターでアーケードゲームを遊んだりしていく必要がある。これ自体は『シェンムー』らしさの一部であり、そのままでもいいという意見にも一理はある。ただし、それでは気軽にストーリーだけを楽しみたい新規プレイヤーにとってハードルが高くなる。また、僕のようにゲームを20回以上クリアして、すべての寄り道を知り尽くしているプレイヤーにとっても、タイムスキップという選択肢があることに越したことはない。

他にも、『シェンムーII』は複数の便利な改善点が施され、その1つである「どこでもセーブ」機能は今回、『シェンムーI』にも適応された。しかし、探索をはるかにスムーズにしたという、ズーム中にオブジェクトの自動注目を解除できる仕様は残念ながら反映されていない。かなり地味なところをついているように聞こえるのかもしれないが、『シェンムー』におけるインタラクションの大半はズームインしてからの注目(画面がオブジェクトに固定される)で行う。『シェンムーI』でインタラクションしたいのと違うオブジェクトに注目してしまったときはズームインを中止してやりなおすしかないので、かなり探索の流れが悪くなっているし、ただ景色を眺めたいときにも不便だ。ちょっとした仕様変更で、『シェンムーII』は一気に遊びやすくなったのだ。

それから、『シェンムー』シリーズのバトルシステムは『バーチャファイター』をベースとした3D格闘ゲームのようなものだが、涼はゲームの途中で新しい技を覚えていく。『シェンムーI』では新しい技を覚えると、同じコマンドの古い技と置き換えられてしまう。しかし、『シェンムーII』では同じコマンドの技は残り、設定したい技をいつでも変更できるようになった。この選択肢が『シェンムーI』に適応されていないのは致命的な問題ではないが、こうした微調整があれば『シェンムーI』のゲームプレイの幅もさらに広がったのではないか。

新しいUIに魅力を感じない

『シェンムー』シリーズ(原作)のUIは決して派手ではなかったが、まるで古い日本家屋のように品があった。ところが、それを模倣しようとしている新しいUIに同様の魅力を感じない。これは単純に筆者が古いUIに対する愛着が強すぎるからではないはずだ。『シェンムーI&II』の移植を担当しているのはイギリスの開発スタジオだが、原作のUIは極めてワビサビ感のあるものであり、日本文化に対する理解がないとそもそも再現が難しいのだろう。例えば、技の一覧表は原作でまるで縦書きの巻物のような画面になっていたのに対して、『シェンムーI&II』では『シェンムーII』のデザインをベースとした、よりわかりやすいムーブリストに変更されている。しかし、涼のライティングは紺色の背景と相性が悪く、少し不自然に見える。また、原作は英語版でも書道から影響を受けたフォントが印象的だったのに対して、『シェンムーI&II』は極めてベーシックなものとなっている。


選択肢やQTEのUIは表示が小さく、特にQTEでは少し見づらい。アイテムや設定などを確認できるメニューはレイアウトが変わり、ひと目で全体が把握できた原作と違ってそれぞれ別のウィンドウを開く形式をとっている。『シェンムー』のメニューではアップグレードや武器装備といった複雑な操作はないので、ウィンドウにする上でのメリットはなく、少し使い勝手が悪い印象だ。

総じて決して悪いUIではないが、原作の上品で無駄のないUIを知っている人であれば少し残念に思うだろう。

クリエイティビティに欠けるトロフィー


原作に忠実な移植なので、新しい遊び方を生み出せるのはゲーム外の仕様であるトロフィー機能くらいとなる。しかし、『シェンムーI&II』のトロフィーはストーリーを追うだけで大半が集まり、探索好きであれば初見プレイで――目指さなくても――トロフィーコンプリートできてしまうだろう。

それはそれでいわゆる「トロフィーハンター」が喜ぶものなのかもしれないが、シリーズファンにとっては新しい発見がない。『シェンムー』は膨大な隠し要素を持つゲームなので、もう少しクリエイティブなトロフィーに期待したかった。例えば、負けてもゲームが進む最強ボスを倒すといったものや、ゲーム内時間を桜が咲くところまで進めるなど、ファンも新鮮な気持ちになるトロフィーはいくらでも思いつく。トロフィーのハードルを下げているのにはそれだけの狙いがあるとは思うが、物足りないのが本音だ。

PS4版の輸入を推奨できないもう1つの理由

これはゲームの問題ではないが、PS4版の輸入を検討している人は要注意だ。日本のPS4でプレイするとボタンコンフィグは自動的に変化され、Xボタンと○ボタンの割り振りが逆になる。探索パートでは問題にならないが、QTEやバトルでは少し大変だ。一部のUIは海外のPS4を想定しているので、QTEで「☓」の表示があると押さなければならないのは○、「○」の表示があると☓を押さなければならない場合がある。また、バトル中では○が蹴り技、□がパンチという割り振りになってしまい、蹴りとパンチの同時押しが必要な技は入力が困難である。

 


セガヨーロッパに確認したところ、これは確かに日本のPS4でプレイしていることが原因で、『シェンムーI&II』国内版でこの問題は発生しない。なお、Xbox OneやPCのバージョンでも同様の問題が発生しているかどうかについては未確認だ。

本稿で紹介してきた問題点が修正されても、『シェンムー』がただの移植では少し時代遅れのゲームであるという事実も残る。『シェンムーI&II』ではモダンな操作系を選択できると謳われていたが、そのような事実はない。コントローラーに右アナログがあるのでより操作しやすくなっているが、操作系自体は原作と変わっていない。フレームレートが30fpsであるのは仕方がないが、ときどき激しく落ちるのも残念だ。さらに、ゲームプレイ中のアスペクト比が16:9でも、『シェンムーI』のカットシーンでは4:3、『シェンムーII』のカットシーンではさらに小さくなっている。これも移植の事情を考えれば仕方のないことなのかもしれないが、没入感を阻害しているという事実は変わらない。

他にも細かい点を挙げるとキリがないが、要するに移植として現時点で『シェンムーI&II』には相当の不満がある。本移植でも『シェンムー』の魅力を体験できないわけではないし、ロード短縮や映像の鮮明度やアスペクト比のアップなど、一部原作より優れている点もある。魅力の劣るUIや改善点の少なさも『シェンムー』の魅力を損ねるほどではない。しかし、バグだけはどうしても受け入れられない。バグの多さにより、『シェンムーI&II』は総じて評価すれば「原作に劣るもの」という結論に落ち着く。そういう意味で、国内版が3カ月遅れて発売することは不幸中の幸いと言えるのかもしれない。日本版が原作と同等、あるいはそれ以上のクオリティになっていると信じたい。

※購入先へのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、そちらの購入先での販売や会員の成約などからの収益化を行う場合はあります。 詳しくはプライバシーポリシーを確認してください">詳しくはプライバシーポリシーを確認してください
In This Article
  • Platform / Topic
  • PS4
More Like This
コメント