長編アニメ映画「BLAME!」が劇場とNetflixで同時公開 ポリゴン・ピクチュアズとNetflixのキーマンがタッグの意義語る

5月20日公開

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ポリゴン・ピクチュアズがテレビアニメーションの「シドニアの騎士」に続いて、弐瓶勉さんのコミック作品を長編アニメーション映画化した「BLAME!」。立体的で迫力たっぷりの音響で5月20日に劇場公開される一方で、映像配信サービスのNetflixからも、公開と同時にオンラインストリーミング配信される。映画館で稼ぎ、それからBlu-rayなどのパッケージ販売、そしてテレビ放送といった段階を踏んで展開されることが多かった映画が、劇場とネットで同時展開されることにどのような意義があるのか。Netflixでコンテンツディレクターを務めるジュリアン・ライハンさんと、ポリゴン・ピクチュアズ取締役の守屋秀樹さんが、「BLAME!」という作品でタッグを組んだ理由などを語った。

ポリゴン・ピクチュアズ取締役の守屋秀樹さん(左)とNetflixのジュリアン・ライハンさん

「Netflixのサポートがなければ作れなかった映画です」。5月12日に開かれた【劇場∞Netflix】トークイベントに登壇したポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹さんによれば、「BLAME!」という映画は、企画の成り立ちからNetflixの存在が大きな意味を持っていたという。「ポリゴン・ピクチュアズで作った『シドニアの騎士』を展開する時、当時は世界50カ国くらいでやっていて、アメリカでも頭角を現していたNetflixにダメ元で行ったら、ポリゴンなら良いと担当者が買ってくれました」。続く「亜人」でも組んだNetflixに「BLAME!」の話を持っていったところ、「二つ返事でOKを頂けました」と守屋秀樹さんは振り返る。

1997年から2003年にかけ、講談社の「アフタヌーン」で連載された弐瓶勉さんの「BLAME!」は、都市を管理するシステムが人類を違法居住者と見なし、抹殺するようになった未来が舞台のハードSFコミック。増殖を続ける都市の中を旅する霧亥(キリイ)を主人公に、残された人類との交流、襲ってくるセーフガードとの戦い、都市の秘密に迫るストーリーで多くのファンを得た。

劇場アニメーション映画「BLAME!」場面 (C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

その「BLAME!」を、弐瓶さん自身の企画協力・全面監修を得て再構成し、新作ストーリーとして作り上げたのが長編アニメーション映画「BLAME!」。ポリゴン・ピクチュアズで「亜人」「シドニアの騎士」を手掛けた瀬下寛之さんが監督した映像は、3DCGでありながらピクサー的な表現とは一線を画し、2Dのようなルックでキャラクターも表情もスムーズに動き、バトルシーンもスピード感のある日本ならではのアニメーションとなっている。

「トップクリエーターと手を組んで、企画の段階からご一緒することがNetflixのひとつのモデルです」とジュリアン・ライハンさん。「このストーリーなら全世界に通用すると考えました。世界にサイファイ(SF)のファンは多くいて、アニメのファンも多くいます。弐瓶先生も全世界で知られています」。すでに「シドニアの騎士」で手を組んで、実績もあったことら、「BLAME!」ではNetflixオリジナル映画として組むことになった。

ポリゴン・ピクチュアズ取締役の守屋秀樹さん

「制作力が高く、グローバルなビジョンを持っている会社」とポリゴン・ピクチュアズを評価するジュリアン・ライハンさん。「セルルックの3DCGアニメーションに実績がない時からケアをしてくれて、評価も頂きました。クリエイターが作った作品を世界に流せるのも光栄なことです」と、新しいクリエイティブな試みをいち早く取り上げ、世界規模で展開できるNetflixの力に感謝する守屋秀樹さん。良い作品を遍く世界に届けたいという意識を共に持っていたからこそ、何作も続けて組んでこられた。

イベント上映という形で、劇場での上映とネットでの配信、パッケージの販売が同時にスタートするアニメーション作品は過去にもあったが、本格的な日本の長編アニメーション映画がネットで、それも全世界に向けて多言語対応の上で、公開と同時に配信される例はあまりない。Netflixがストリーミング配信の会社という理由も大きいが、「ひとりでも多くの人に見てもらいたい」といった意識もあるとジュリアン・ライハンさんは話す。

「劇場なら大画面で、ドルビーアトモスの技術によって素晴らしい経験ができますが、映画館まで足を運べない人でもNetflix上で見られます。ファンに対してオプションを増やすことができます」とジュリアン・ライハンさん。根強いファンはいても、決して誰もが知っているタイトルとは言えない「BLAME!」という作品を、ポリゴン・ピクチュアズが交通広告を使って宣伝し、Netflixがネットで配信をPRすることで、より広い範囲に存在を知ってもらえる。

Netflixのジュリアン・ライハンさん

配信されるなら映画館には行かないといった想像もあって、上映に二の足を踏む映画館もありそうだが、「ていねいに話をしたところ、賛同してくれて50館近くで上映して頂けるようになりました」と守屋秀樹さん。映画館の方では、音響監督の岩浪美和さんが中心となって最高の音響で見られるような環境作りを進めている。日本のアニメーションとしては初めてドルビーアトモスで音響を作り、自分が映画のシーンに入り込んだような感覚を味わえる作品に仕立て上げた。「東亜重音」という用語で、劇場ごとに調整を加えた音響も展開。映画館だからこそ体験可能な要素の多い作品となっている。

一方、ネットはネットで何度も繰り返し見てストーリーを理解し、キャラクターの関係性を把握することが容易。HDRの高画質で配信されるため、ダークな空間でストーリーが流れていく「BLAME!」という作品でも、「くっきりと色の違いが見えます」とジュリアン・ライハンさんは説明する。映画館ならではの体験と、ネットならではの利便性を享受しようと、映画館からネットへ、ネットから映画館へといった具合に観客の移動も起こりそうだ。

ジャーナリストの数土直志さん(左)司会で5月12日に行われた守屋秀樹さん、ジュリアン・ライハンさんのトーク

「われわれのミッションは、全世界でひとりでも多く、アニメを見たことがない人にアニメのファンを増やしていくことです。このアニメは凄いといった発見を得られるようにしたい」とジュリアン・ライハンさん。「世界が驚くような作品を意識し、映像的にも進化していきたい」と守屋秀樹さん。共に語る将来への展望からは、ポリゴン・ピクチュアズとNetflixのタッグが、これからも高品質で面白い作品を生み出してくれる可能性がうかがえる。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

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BLAME!

2017年5月20日
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