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[朴露子の韓国、内と外]韓国法務長官の移民哲学を憂慮すべき理由

登録:2023-08-31 20:28 修正:2023-09-01 09:12
この言葉を裏返して考えてみよう。家族を同伴できる熟練人材ビザ(E-7-4)を得るチャンスを獲得するまでは、外国人労働者は身近に家族もいない中で「10年間誠実に働き奉仕する」暮らしをしなければならないということではないか。(…)ハン長官に、「本人は配偶者や未成年の子どもと離れて外国で10年間一人で過ごしながら働けるのか」と問いたい。
先月15日、大韓商工会議所主催で開かれた済州フォーラムに参加したハン・ドンフン法務部長官が政策講演をしている。ハン長官は「外国の優秀な人材が韓国に入って来られる方策を出さなければならない」とし、「それを優先的に考慮する」と明らかにした=大韓商議所提供//ハンギョレ新聞社

 私は一種の二重移民だ。韓国では帰化人でありながら、ノルウェーでは移民労働者だ。そのためか、移民政策に関する日刊紙の記事は欠かさず読んでいる。

 その一環として、7月15日「第46回大韓商工会議所済州フォーラム」でハン・ドンフン法務部長官が現政権の移民政策について講演した内容も丁寧に読んでみた。この講演で私が同意できた唯一の内容は、移民なしでは韓国の未来がないという話だった。世界最低の出生率を記録するこの国では、この主張に異議を唱える人は誰もいないだろう。問題は、この講演でハン長官が明らかにした移民問題に対する無理解・常識のなさが韓国移民政策の基調として残っている限り、私たちの未来を担保する移民者の社会統合は永遠に成し遂げられないという点だ。

 ハン長官は「外国人が入ってきた時、自分たちだけで文化を維持しながら生きていけば結局統合はなされない」として「韓国語の上手な人が入ってくる方が、溶接の上手な人が入ってくるより良い」と主張した。しかし、果たして移民に来て新しい国の言語が上手な人はそんなに多いだろうか。一時、米コロンビア大学で学んだハン長官は、おそらくニューヨークのコリアンタウンなど在米韓国人の集住地を直接見ただろう。韓国人が移民初期にそのような集住地を探して居場所を決めた理由は、在中国同胞がソウルに来れば大林洞にまず行って定着する理由と同じだ。少しでも慣れた言語や文化環境の中で他国での生活に適応していく過程を経た方が良いからだ。この程度なら多くの国で移民者が普遍的に経験する過程に過ぎない。

 問題は、移民者にとって数年後に集住地を離れられるくらいの韓国語学習がなぜ行われないのかという部分だ。この質問の答えを探すために、私はここ数年、光州市月谷洞(ウォルゴクドン)の高麗人マウル(村)と仁川市の咸朴マウル(ハンバクマウル)の高麗人タウンなど、高麗人同胞の集住地を訪ねてきた。

 私がそこで聞いた答えは一つだけだった。韓国に移住した高麗人のほぼ70%が、極度に大変な長時間単純労働に従事している。多くは高い家賃に窮しており、残業や特別勤務も毎日のようにしなければならない。毎日くたくたになって遅く帰宅し、週末に働く日もしょっちゅうあるため、韓国語を学ぶ時間が絶対的に足りない。もし韓国政府がこの移民者たちに、例えば安い賃貸料で永久賃貸住宅を提供してくれるならば、彼らは仕事を減らして韓国語を学ぶのにより多くの時間を割くことができるだろう。ところが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の発足以後、公共賃貸住宅のための予算は22.7%に減り、一次的に移民者を住居福祉の対象にすることもない。その一方で、「韓国語学習」を彼らに求めるのは矛盾ではないか。

 ハン長官はさらに「現在、E-9ビザで入国した非熟練外国人労働者は10年後には出ていかなければならないので不法滞在で留まろうとする」が、「韓国で10年間誠実に仕事をして奉仕した労働者には、定住権を持ち家族を呼ぶことができる熟練人材ビザE-7-4を得るチャンスを与える」と述べ、講演場に集まった企業家たちに約束した。ところが、この言葉を裏返して考えてみよう。家族を同伴できる熟練人材ビザ(E-7-4)を得るチャンスを獲得するまでは、外国人労働者は身近に家族もいない中で「10年間誠実に働き奉仕する」暮らしをしなければならないということではないか。ハン長官が言及したE-9ビザでは家族を招請できず、実際に一部の「非熟練外国人労働者」は家族を同伴しているが、これは不法や便法の領域に属する。

 私はハン長官に「本人は配偶者や未成年の子どもと離れて外国で10年間一人で過ごしながら働けるのか」と問いたい。本人にそうする自信がないのなら、他人にこのように簡単に家族と別れる苦痛を強要してはならない。実際、外国人労働者の自由を大きく制限する雇用許可制を廃止し、外国人労働者に定住権と家族同伴の権利を与える労働ビザを発給すれば良いことだ。ところがハン長官を含む保守官僚たちは、人権団体が「現代版奴隷制」と批判する雇用許可制を継続的に固守している。彼らにとっては「我が国で誠実に仕事をし奉仕する労働者」の人権より、その労働者に対する「統制」の権限の方がはるかに重要だ。

 ハン長官の発想では、外国人労働者は統制の対象である反面、彼らを雇用する企業家は統制網の一部だ。ハン長官は「済州フォーラム」に集まった企業家たちに「企業家の皆さんが現場で10年間見守って『熟練人材ビザに転換できるような』方々を推薦してほしい」と述べた。もし外国人労働者のビザ転換が雇い主の推薦にかかっているとしたら、これは果たして職場での力学関係にどのような影響を与えるだろうか。

 外国人労働者の大半は労組に加入しておらず、必要な時に労組の支援を受けられない。事業場の移動も、勤労契約期間満了や勤労契約の解約以外には、きわめて特別な状況が発生した時しかできない。すなわち、企業主に強力に隷属された立場だ。ここにビザ転換候補者を推薦する権限まで企業主に与えるとすれば、果たして外国人労働者に対する企業主のパワハラはどこまで激しくなるだろうか。ハン長官は海外で繰り広げられる「人材争奪戦」にまで言及したが、果たして無限にパワハラが可能な韓国の職場に残りたがる外国人材がどれほどいるだろうか。

 人材誘致と移民者の社会統合を望むならば、まず移民統制の緩和、雇用許可制の撤廃と労働権、家族同伴、職場移動の権利などを保障する労働ビザの導入、移民者に対する住居など福祉恩恵の適用が必要だ。そして何よりまず、外国人を単純に「人材」と見るハン長官とは異なり、韓国に来る移民者を彼らの出身国家・宗教・血統と関係なく、私たちと同等な人間であり、すべての社会的権利を備えた隣人とみなければならない。

先月15日、大韓商工会議所主催で開かれた済州フォーラムに参加したハン・ドンフン法務部長官は、「すでに出産奨励だけで人口の壁を克服するには遅すぎる」とし、「韓国語の上手な人が入ってくる方が溶接の上手な人より良いと思う」と述べた=大韓商工会議所提供//ハンギョレ新聞社
//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) |オスロ国立大教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1106292.html韓国語原文入力:2023-08-30 02:35
訳J.S

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