橘家文蔵、二十三回忌の先代文蔵さんへの思い語る 鈴本演芸場9月下席で追善興行 24日には追善落語会も

2代目橘家文蔵の追善興行で主任を務める当代の橘家文蔵は、先代の写真パネルとツーショットで笑みをみせる
2代目橘家文蔵の追善興行で主任を務める当代の橘家文蔵は、先代の写真パネルとツーショットで笑みをみせる

 2001年9月に死去した落語家の二代目橘家文蔵さん(享年62)をしのぶ「二代目橘家文蔵二十三回忌追善落語会」が東京・上野の鈴本演芸場の9月下席(21~30日)の昼の部で行われることとなり、二代目のまな弟子で、主任(トリ)を務める三代目の橘家文蔵(61)がこのほどスポーツ報知の取材に応じた。

 先代の文蔵さんは穏やかな人柄で、持ちネタは400席以上とも。流派やキャリア、東西にこだわらず、幅広く稽古をつけたことでも知られ、「昭和の名人」と呼ばれた六代目三遊亭圓生さんが二ツ目時代の文蔵さんに稽古を願い出たという逸話も持っている。節目の二十三回忌にあたり、春風亭小朝(68)から当代の文蔵に助言があったといい、鈴本演芸場での追善興行の運びとなった。

 文蔵は「真打ちになる年に師匠が心不全で亡くなって、披露目のときにはもういなかった。ひとりで寂しかったな、という思いはありましたね」とここまでの歩みを振り返る。「(春風亭)一朝師匠は何かと後押ししてくれて『あんちゃんは好きにやんな』と言ってくれていた。今回(追善を)やるにあたってまず最初に一朝師匠に声をかけた。それから一門の(林家)正雀師匠、よく稽古に来ていた(柳家)さん喬師匠、そして(林家)正楽師匠。あとは僕と同じぐらいのキャリアの仲間に声をかけて…」。今回の追善興行では、特段ゲストを招いたり座談などの特別な演出はせずに、噺(はなし)で先代をしのぶという。

 客席にもわかりやすい軽快な語り口が愛された二代目。文蔵は「普段は何も言わない人でしたが『言葉をあやつる商売なんだから、正しい言葉を使いなさい』と教わった。『こそあど言葉』を落語の中でどう使うか、鼻濁音の使い方。今でも役に立っています」と感慨深げに話す。「僕は前座ではずいぶん好き勝手にやっていましたけど『失敗しても許される時期なんだから、とことん失敗して、経験しろ』って」。懐の広さが自分自身を成長させてくれたという。

 鈴本演芸場の鈴木敦席亭も「協会で活躍されている師匠方はだいたい文蔵師匠に噺を教わっている。寄席文化を支えてくれた方の姿を、寄席で思い出してもらえたら」。文蔵は「ご出演の方も先代の噺をやってくださることもあるだろうし、僕もトリネタをもう一度鍛えたい」と思いを込めた。

 寄席興行中の24日夜には東京・渋谷のユーロライブで「二代目橘家文蔵 二十三回忌追善落語会~文蔵組大落語会番外編~」も開催予定。映画館の機構を活用し、開演前には先代の秘蔵映像を上映するほか、座談会で先代のほほえましいエピソードを語り合う予定だ。「ありし日の映像を見てもらえるだけでもうれしいですね」とスクリーンでよみがえる師匠の姿に思いをはせていた。

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