賀来賢人、今日から俺は犬神家! スケキヨ役に「異物感をどれだけ出せるか」

スポーツ報知
来年30歳。「体が硬いので、柔らかくしたい」と語った賀来賢人(カメラ・矢口 亨)

 俳優の賀来賢人(29)が、24日放送のフジテレビ系スペシャルドラマ「犬神家の一族」(後9時半、主演・加藤シゲアキ)で、作品の象徴的なキャラクター・佐清(すけきよ)を演じる。数々の映画化、ドラマ化された横溝正史氏原作の金田一耕助シリーズ不朽の名作。主演した日本テレビ系ドラマ「今日から俺は!」が話題になったばかり。コミカルな演技から一転、サスペンスの名作に懸ける思いを語った。

 30代を目前にして、脂がのってきた。16日に最終回を迎えた「今日から俺は!」では、金髪パーマにイメチェンし、ツッパリ道を歩む高校生役を好演。若い世代を中心に話題を呼んだ。

 痛快学園コメディーから一転、今作で挑むのは日本を代表するミステリーの名作。それも、ゴム製の白いマスク姿で有名な佐清を演じる。「セリフがない分、ちょっとした動きで機微、感情を出せる。まだやったことのない芝居の仕方なので、考える脳が違う気がします。なかなか巡りあえる役ではないので、面白い」。動きのない「静」の芝居。ヤンキー高校生とは真逆の役作りを楽しんでいる。

 佐清は、犬神家当主・佐兵衛(里見浩太朗)の長女・松子(黒木瞳)の一人息子。美少年だったが、太平洋戦争のビルマ戦線で顔にけがを負い、松子が東京で作ったマスクをかぶり、遺産相続争いさなかの犬神家に戻ってくる―。

 映画にドラマに何度も映像化された名作だけに、出演が決まると、反響は大きかった。「ウチのじいちゃんが『主役だぞ、これは』って大興奮していた。主役は金田一耕助なんだけどね(笑い)。でも、それぐらい上の世代にも刺さっている役だと感じた」。実は閉所恐怖症。「マスクを作る段階から大変だった…」と苦笑する。「一生忘れない役じゃないか、というぐらいのスタート。歴代の佐清さんも大変な思いをされている。それを知れただけでも、うれしい気持ちになりました」

 少年時代に抱いた「犬神家」のイメージは「恐怖感」「悲しい話」だった。クランクイン前、市川崑監督、石坂浩二主演の映画版(1976、2006年)を見返した。「佐清(76年版・あおい輝彦、06年版・尾上菊之助)の存在感は強かった。いざやるってなると、なかなか…。目も出ているか、いないかぐらい。異物感をどれだけ出せるか。現場もピリッとしていて、身の引き締まるような空気感がある。妥協なくやれているので、でき上がりが楽しみです」

 役者を志したきっかけは、TBS系ドラマ「木更津キャッツアイ」(02年、岡田准一主演)。「こんなに楽しそうな雰囲気なら、俺もやってみたい」と夢を描いた。その後、スカウトされ、芸能界入り。「実際に入ってみたら(イメージと)違った…。全然楽しくないじゃん!って」と笑った。

 「同世代の役者が映像でバリバリとやっている時期に、僕は演劇をやっていた」。20代前半は「スマートモテリーマン講座」(11年)、「モンティ・パイソンのスパマロット」(12年)など舞台を主戦場に活動。みっちりと鍛えられ、基礎を築いた。「(役者同士の)戦い、駆け引きを味わえたのは、遠回りだったかもしれないけど、やって良かった。お客さんは素直。その前に立って、反応を取りながら芝居をしていた。その経験は、自信になった部分でもあります」

 その時に出会ったのが、「今日から俺は!」を手掛けた演出家の福田雄一氏(50)だった。「スマート―」「モンティ―」の脚本・演出も担当した福田氏に当時「僕はどういう役者になればいいですか?」と聞いた。返ってきた答えは「君はコメディーで1番になりなさい」だった。「自分なりに言葉の意味を考えました。突き詰めてやれるだけやってみよう。それで失敗したらダメでいい、なるようになれって。そういう考えにたどり着いた。(気持ちの部分で)楽に演じられるようになった」

 来年30歳になる。「年齢を重ねることで、やれる役も増えてくる。30代になれば、見られ方も変わると思う。『遠回り』という言葉を使ったけど、ただ、無駄なことは何一つなかった。いい20代でした」。私生活では16年8月に女優・榮倉奈々(30)と結婚し、17年6月に第1子が誕生した。「全ての出会いが良かった。まさか、20代で(結婚して)子供もできるとは思っていなかった」

 役者の仕事について「好きかどうかを聞かれると、分からない。つらいことの方が多いから」という。「年齢的にできて当たり前になってくる。毎回ハードルだって上がる。今でも、(撮影の)初日前はゲロを吐きそうになりますよ」

 それでも続けるのは理由がある。「『今日から俺は!』の時は、初めて子供たちから反響があったんです。放送後の反応、声を聞くと、力になる。最終的には『役者をやっていて良かった』と思えるから、続けられているのかな」(ペン・加茂 伸太郎)

 ◆賀来 賢人(かく・けんと)1989年7月3日、東京都出身。29歳。2007年映画「神童」で俳優デビュー。09年「銀色の雨」で映画初主演。12年「クローバー」でドラマ初主演。舞台「スマートモテリーマン講座」、ミュージカル「モンティ・パイソンのスパマロット」に出演し、腕を磨く。出演作に連続テレビ小説「花子とアン」、大河ドラマ「花燃ゆ」、映画「ちはやふる―結び―」など。身長178センチ。叔母は女優の賀来千香子。

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