"1219(17)恒安国際集団 衛生用品、海外勢と勝負 内陸部で強み 高級品の新ブランド"

恒安国際集団は紙おむつや女性用生理用品、ティッシュペーパーなど衛生用品の最大手。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やユニ・チャームといった海外勢と並ぶ、中国での有力ブランドに育っている。



恒安国際集団は、紙おむつ市場で米P&Gと張り合う(上海市内のスーパー)

上海の中心部にある英系大手スーパー、テスコの店内。P&Gの乳幼児用紙おむつの世界ブランド「パンパース」とともに、恒安の主力ブランドである「安児楽」を陳列した棚もそれと張り合うように並んでいる。

中国の経済発展に伴う生活水準の向上と、都市化の進展による生活様式の変化を背景に、日米欧アジアの消費財メーカーはこぞって中国市場に進出し、存在感を高めている。規制の少ない業種では、ブランド力や品質で見劣りする中国企業が苦戦を強いられることが多いが、衛生用品では恒安の健闘が目立っている。



大手調査会社シノベイトによると、紙おむつの中国でのブランド浸透度は「安児楽」が80.8%。「パンパース」の90.2%には及ばないが、ユニ・チャームの「マミーポコ」の81.7%との差は1ポイント未満だ。上海などの大都市では日米二大ブランドと差があるが、地方では恒安が強みを発揮。雲南省大理など内陸を含む中小都市では「安児楽」の92.1%に対し「パンパース」は81.6%、「マミーポコ」は81.7%と認知度は逆転する。

香港で上場する株価も上昇傾向にある。1998年の新規上場時の公開価格2.8香港ドル(約28円)に対し、今月1日に付けた年初来高値は75香港ドル。直近の2011年1~6月期の純利益は紙パルプなどの原材料高が響き増収減益だったが、アナリスト予想を集計すると強気派が主流だ。



ドイツ銀行の黄美宝氏は「原材料価格は下落を続けている。恒安の粗利益の増加にはいい兆候」と減益は一時的とみる。クレディ・スイスのアジア新興市場株式ストラテジストのサクティ・シバ氏は、中国の消費拡大を取り込む恒安のような企業を「構造的に成長する企業」と評する。

6月の銘柄見直しでは香港市場の「ブルーチップ(優良銘柄)」の証しともいえるハンセン指数の構成銘柄に採用された。許連捷・最高経営責任者(CEO)は「基準が高かったので、将来外されたくない。良い業績を維持するためのエネルギーに変えたい」という。

もっとも、成長シナリオに影響しかねないのが原料高と中国経済の成長鈍化だ。原料高は落ちつきつつあるものの、中国経済の成長鈍化は「所得増→衛生用品の需要増」と連なる構図を崩しかねない。JPモルガンの洪千涵氏は「経済減速のリスクを反映し、最も保守的なシナリオを織り込んだ」とし、目標株価の引き下げとともに投資判断も「中立」から「弱気」に引き下げた。

今後は日米大手2社が恒安の得意とする地方都市にさらに攻め込んでくる一方、同業の衛生紙大手、維達国際控股は8月に「貝愛多」のブランドで中低級の紙おむつ市場に参入した。双方から挟み撃ちに遭う形となった恒安は新ブランドの「動睡装」や「拉拉●(ころもへんに庫)」を年後半から順次投入。高級市場を開拓する考えだが、それにはブランドや品質、販売力を一段と磨く必要がありそうだ。

〈記者の目〉国外販売の拡大カギ

恒安国際集団の2010年12月期の売上高営業利益率は22%。商品構成が異なるため単純な比較はできないが、米P&G(11年6月期)の19%、ユニ・チャーム(11年3月期)の12%を上回る。原料高が響いた11年1~6月期も16%を確保。中国の低コストと高成長がこれを支えてきたが、日米の二大メーカーが内陸にも攻勢をかける中、優位性をいつまで維持できるか。高級イメージの開拓とともに5%にとどまる海外売上高の伸長も重要となりそうだ。(香港=川瀬憲司)

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