サイエンス

世界初の「乳牛が鳥インフルエンザに感染した事例」がアメリカで報告される、殺菌前の牛乳サンプルでも陽性反応


2021年以降、鳥インフルエンザ(H5N1型インフルエンザ:高病原性鳥インフルエンザ)の世界的な感染拡大が問題となっており、鳥だけでなくヒトやホッキョクグマなどでも感染が確認されています。新たにアメリカ当局が、世界で初めて乳牛が高病原性鳥インフルエンザの陽性反応を示したことを報告しました。

USDA APHIS | Federal and State Veterinary, Public Health Agencies Share Update on HPAI Detection in Kansas, Texas Dairy Herds
https://www.aphis.usda.gov/aphis/newsroom/news/sa_by_date/sa-2024/hpai-cattle


Dairy cattle in Texas, Kansas test positive for bird flu | AP News
https://apnews.com/article/bird-flu-dairy-cattle-usda-kansas-texas-c3040bb31a9a8293717d47362f006902

In world 1st, dairy cows in Texas and Kansas test positive for H5N1 bird flu | Live Science
https://www.livescience.com/health/flu/in-world-1st-dairy-cows-in-texas-and-kansas-test-positive-for-h5n1-bird-flu

Bird Flu Spreads to Dairy Cows - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/03/25/science/bird-flu-cows-milk.html

アメリカ農務省や食品医薬品局、疾病管理予防センター、そして州の獣医および公衆衛生当局などは、カンザス州やテキサス州、ニューメキシコ州で主に高齢の乳牛が食欲減退・発熱・乳量の急減といった症状を示す病気について調査を行ってきました。


テキサス州農務省のシド・ミラー長官によると、約3週間前に「謎の乳牛病」というものが流行し始めたとのこと。乳牛は無気力で食欲不振になり、乳を出す量が急減したとのことで、ミラー氏は「こんな光景は見たことがありませんでした。まるで牛たちが風邪をひいたようでした」と述べています。

そしてアメリカ農務省は2024年3月25日、カンザス州の2つの酪農場とテキサス州の1つの酪農場で病気の牛から採取された低温殺菌前の牛乳サンプルと、テキサス州の別の乳牛から採取した口腔咽頭ぬぐい液サンプルが、高病原性鳥インフルエンザの陽性反応を示したことを報告しました。高病原性鳥インフルエンザが牛に感染した事例は、これが世界初とみられています。

3月22日には「農場の敷地内で野鳥の死骸が見つかった」という報告があり、追加の調査が行われました。テキサス州の調査によると、高病原性鳥インフルエンザは野鳥によって持ち込まれた可能性が高いとのことです。

なお、今回の事例が報告される5日前の3月20日には、ミネソタ州でヤギが高病原性鳥インフルエンザに感染した事例が報告されています。アメリカ初となるヤギの高病原性鳥インフルエンザ感染事例を受けて、ミネソタ州動物衛生委員会の事務局長であるブライアン・ホーフス氏は「複数種の動物を飼育している農場で、ウイルスが他の動物に感染する可能性を浮き彫りにしています」とコメントしていました。


高病原性鳥インフルエンザは群れの約10%に影響を及ぼしているそうですが、病気になった乳牛は7~10日程度で自然に回復し、死亡した乳牛の例はほとんどあるいはまったく報告されていないとのこと。

アメリカ農務省は、酪農場は健康な家畜から搾乳された牛乳のみを供給することを義務づけられており、影響を受けた牛乳は廃棄されていると指摘。また、出荷前の低温殺菌によって牛乳中の細菌やウイルスは不活性化されるため、高病原性鳥インフルエンザの乳牛への感染が牛乳供給の安全性や消費者の健康にリスクをもたらす懸念はないと説明しました。

国立獣医サービス研究所による初期検査でも、ウイルスのヒトへの感染力が高まるような変異は見つかっていません。セント・ジュード小児研究病院のインフルエンザ専門家であるステイシー・シュルツ・チェリー博士は、「パニックに陥る必要はまだありません。一連の症例は、どうやら病気にかかった野鳥との接触による波及現象のようです」とコメントしています。

しかし、鳥インフルエンザにかかりやすい種ではない牛にまで感染が広がったことは、憂慮すべきサインであるといえます。セント・ジュード小児研究病院のウイルス学者であるリチャード・ウェビー氏は、「この病気がどの程度牛に流行しているのかを、私たちはよりよく理解する必要があります」と述べました。

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in サイエンス,   生き物,   , Posted by log1h_ik

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